フレデリック・ショパンが作曲した独奏ピアノ曲「練習曲作品10第3番ホ長調」は、日本では「別れの曲」の名で親しまれています。
これは、1934年のショパンの生涯を描いたドイツ映画「別れの曲」でこの曲が使われていたためです。
映画のタイトルが曲名になったというわけです。

冒頭の旋律は特に有名で、誰もが一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。

ここではショパン「別れの曲(練習曲作品10-3)」の解説と名盤の紹介をしたいと思います。

ショパン「別れの曲(練習曲作品10-3)」の演奏

ヴァレンティーナ・リシッツァ(Valentina Lisitsa、1973年 - )
ウクライナ生まれのピアニスト

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その3曲目が「別れの曲」です。(22ページ目、楽譜表記の第12ページ)

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ショパン「別れの曲(練習曲作品10-3)」の解説

「別れの曲」が作曲されたのは1832年でショパンが22歳の時だとされています。
この頃ショパンは故郷ポーランドを離れ、パリへと拠点を移しています。

「パリでの成功を夢見る心情」と「田舎を懐かしむ心情」が重なり合っていたであろう当時のショパンの様子を思い浮かべてこの曲を聴くと、また新しい聴き方が出来るかもしれません。

練習曲であり芸術作品

この「別れの曲」は練習曲(エチュード)というタイトルが付けられています。
ショパンは芸術作品としてではなく、練習曲としてこの曲を作曲したのです。
ピアニストとしてのテクニックを習得するために作曲されたのであって、音楽観賞専用の曲ではないのです。
ただショパンの練習曲はプロの演奏家のための練習曲でもありますので、ある程度公の場での演奏は考慮していると思われます。

ハノン・バイエル・ツェルニーなどは「ザ・練習曲」と言ったテイストですが、ショパンの練習曲は一線を画します。
「革命のエチュード」「黒鍵のエチュード」「エオリアンハープ」「木枯らし」など「別れの曲」の他にもショパンの練習曲は魅力的な作品で溢れています。

ショパン

ショパン

ショパンは練習曲をただのテクニックの習得の曲ではなく、美しく芸術的な作品へと価値を高めているのです。
ピアニストとして必要な身体的なテクニックだけではなく、もっと奥深くにある音楽的な感覚・感情・旋律の美しさまでもエチュードの要素として含まれていたのかもしれませんね。

ショパン自身も「これ以上美しい旋律を作ったことはない」と語っているほどですので、ショパンもこの作品をただの練習曲とは捉えていないと推測できます。

手の小さかったショパン

ピアニストでもあったショパンでしたが手が小さかったため、「音が小さい」と批判を受けることもありました。
そこでショパンは美しい響きをもった情感あふれる旋律を大切にしたと言われています。
そして使う指によって変わる音色の違いを音楽の表現に加えていくのです。

手首の柔らかさと指の強さの違いによる演奏方法を確立したショパンは、オリジナルの世界観を築いていきました。

オーケストラ版「別れの曲」も美しい

「別れの曲」はムラヴィンスキーによって管弦楽用に編曲されています。
ムラヴィンスキーは1900年代を生きたロシア生まれの指揮者で、若い頃は作曲家を志したこともあったそうです。
オーケストラで演奏される「別れの曲」は弦楽器独特の流れる音楽や管楽器の豊かさが印象的で、ピアノ演奏とはまた違った味わいがあります。

ロシアの英雄的指揮者

ムラヴィンスキーは世界的な指揮者で、レニングラード・フィルの常任指揮者として活躍し、1937年にショスタコーヴィチの第5交響曲を初演したことでも知られています。
また長身のすらっとしたイケメンで、人民芸術家(芸術家に与えられた栄誉称号)、レーニン賞、スターリン国家賞、社会主義労働英雄を与えられたソ連(ロシア)の英雄的存在でもあります。

ショパン「別れの曲(練習曲作品10-3)」の名盤

ショパン弾きのスペシャリストとしても評価の高いアシュケナージの演奏による名盤です。
別れの曲だけではなく、ショパンの名曲はほとんど収録されています。

良い意味で個性が溢れていない、世界を代表するピアニスト・アシュケナージによるスタンダードな演奏ですので、クラシック初心者の方にもオススメしたい1枚です。
ピアニストの魅力だけでなく、曲そのものの魅力も十分に味わうことが出来ます。

ウラディーミル・アシュケナージ(Vladimir Ashkenazy、1937年7月6日 - )
ソヴィエト連邦出身のピアニスト・指揮者で、20世紀後半を代表するピアニストの一人。
168センチの小柄な体格で、卓越したテクニックと洗練された音楽で聴き手を魅了している。
とても幅広いレパートリーを誇り、その音楽は万人に愛されている。

1955年:ショパン国際ピアノコンクールに出場2位。アシュケナージが優勝を逃したことで、審査員が降板する騒動になる。
1956年:エリザベート王妃国際音楽コンクール優勝
1962年:チャイコフスキー国際コンクール優勝
1963年:ソ連から亡命のためにロンドンへ移住
1970年:指揮活動も開始
1972年:アイスランド国籍取得
1987年:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団音楽監督に就任
1989年:26年振りにソ連に帰郷

その他の録音

有名な作品ですので、その他にも多くの素晴らしい録音がされています。
それらもいくつか紹介したいと思います。

マウリツィオ・ポリーニ

pollini
イタリアのミラノ出身の名ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニのショパンの「練習曲集」です。
1972年にミュンヘンで録音されたもので、ドイツ・グラモフォンより発売されています。

1960年に彼は18歳で第6回ショパン国際ピアノコンクールに審査員全員一致で優勝しますが、その後10年近くも演奏活動から離れます。
この録音は彼が演奏活動を再開してから間もない時期に録られたものです。

ルイ・ロルティ

lortie
1959年生まれのフランス系カナダ人ルイ・ロルティによるショパンの「練習曲集」です。
1986年に録音されています。
同年の1986年度に彼はブゾーニ国際ピアノコンクールで第一位を獲得しています。
まさに勢いに乗っている頃の録音です。

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