項目データ
初演1805年11月20日 アン・デア・ウィーン劇場
原作ジャン・ニコラス・ブイイの『レオノーレ、または夫婦愛』
台本ヨゼフ・ゾンライトナー
演奏時間2時間15分

『フィデリオ(Fidelio)』は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven/1770年-1827年)が作曲した唯一のオペラです。(未完のオペラを除く)

このオペラはベートーヴェンがとても苦労した作品で、何度も改訂がおこなわれました。
序曲は3度も改訂され、4つの序曲が残っています。
第1稿(初演1805年)第2稿(初演1806年)第3稿(初演1814年)、これらの初演はいずれもウィーンで演奏されました。
※現在上演されるものの多くは、第3稿。

ベートーヴェン自身が指揮した第1稿の初演は大失敗に終わりましたが、最終的には大成功を収め今の地位を築きました。

また壮大なベートーヴェンの音楽の中でメロディは器楽的に書かれており、歌手にとっては歌うのにテクニックを要する作品でもあります。

ここではベートーヴェンのオペラ『フィデリオ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

人物名備考
フロレスタン(テノール)囚人
レオノーレ<フロレスタンの妻>(ソプラノ)男装しフィデリオと偽名を使っている
ロッコ(バス)牢番
マルツェリーネ(ソプラノ)ロッコの娘
ヤキーノ(テノール)ロッコの部下、門番
ピツァロ(バリトン)刑務所長
フェルナンド大臣

『フィデリオ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

フロレスタンは、無実にもかかわらず囚人として幽閉されています。
そこでレオノーレ(フロレスタンの妻)は夫を助けるために、男装し「フィデリオ」と偽名を名乗り、牢獄に潜入し男として働きます。
レオノーレは夫を救出し、皆が彼女を称える中で終幕となります。

第1幕:『フィデリオ』のあらすじ

マルツェリーネがフィデリオ(レオノーレ)に恋をしている

スペインの政治犯監獄の中庭

門番のヤキーノはマルツェリーネ(牢番ロッコの娘)に恋をしています。
そして彼女にプロポーズをしますが、彼女は全く相手にしません。

彼女は「新人のフィデリオ」に胸をときめかせていたのでした。
ヤキーノが去ると、彼女は「もし、あなたと一緒になれたら…」と、フィデリオへの恋心を歌いあげます。(O wär ich schon mit dir vereint)

「O wär ich schon mit dir vereint」

男装し潜入しているレオノーレが登場

そこに父親の牢番ロッコがレオノーレ(フィデリオ)を連れて戻ってきます。

レオノーレは「フロレスタンの妻」で、夫を助けるために潜入しています。
そして男装し「フィデリオ」と偽名を名乗っています。

 「レオノーレ」と「フィデリオ」は同一人物

ロッコは部下のレオノーレを気に入り、娘マルツェリーネの婿にしようと考えます。
マルツェリーネは喜び、ヤキーノは落ち込みます。
一方、レオノーレは「男装した自分」が愛されていることに困惑します。
4人のそれぞれの心情が絡み合った四重唱が歌われます。

誰かが地下牢に幽閉されている情報が入る

ロッコはレオノーレに「刑務所長が出発した翌日に、お前とマルツェリーネを結婚させてあげよう。」と語ります。
そして、「生活は愛がすべてではない。美しく力強いものは金だ!」と歌いあげます。(Hat man nicht auch Gold beineben)

それに対しレオノーレは「私を信頼しているのなら、禁じられている地下牢に私も行かせてください。」と頼みます。

ロッコは
「2年前からあそこには重要な囚人がいるんだ。」
「そして、あそこは誰も連れていってはけないと命令が出ている。」
「ただ、ろくに食事もしていないから、あいつもそう長くはないだろう。」
と話します。

フロレスタンは無実で幽閉されている!?

行進曲が鳴り、監獄所長ピツァロが現れます。

ロッコはピツァロに
「ここに無実の囚人が幽閉されていると密告があった。」
「そのため大臣が偵察に来るらしい。」
との旨の手紙を渡します。

ピツァロは事実が明るみに出ることを恐れ、「その前に囚人フロレスタンを殺してしまおう」と決意します。(Ha, welch ein Augenblick!)

レオノーレが夫婦愛を歌い上げる

ピツァロは「大臣が来たら知らせろ」と見張りを立て、ロッコに「フロレスタンを殺す」ように命じます。
しかしロッコが「殺すことは私の仕事ではありません。」とためらうので、自らで殺すことを決意します。

その様子を見ていたレオノーレは怒り、「真実の夫婦の愛が、私を強くする!」と夫の救出を誓います。(Abscheulicher! Wo eilst du hin?)

「Abscheulicher! Wo eilst du hin?」

レオノーレが地下牢へ降りる許可をもらう

レオノーレはロッコに「今日は天気が良いから囚人たちを外に出してはどうでしょう?」と提案します。
ロッコは所長の許可なしで、囚人たちを表に出します。
囚人たちは久しぶりの太陽の光を喜びます。

ロッコがレオノーレに
「地下牢の墓堀りの仕事を手伝ってもいいという許可が出た」
と伝え、レオノーレは喜びます。

そこに所長が登場し、勝手に囚人たちを外に出したことを怒ります。
囚人たちは名残惜しそうに牢に戻っていきます。
ピツァロはロッコに「早く地下牢の墓を掘る」ように命じます。

第2幕:『フィデリオ』のあらすじ

幽閉されたフロレスタン、そこを訪れる妻レオノーレ

暗い地下牢

フロレスタンが鎖に繋がれ、地下牢に幽閉されています。
初登場のこのシーンで彼は「何て厳しき試練だ。しかし、もし死んでもレオノーレが天国へ導いてくれるだろう。」と力強く歌い上げます。(Gott! Welch Dunkel hier!)

「Gott! Welch Dunkel hier!」

フロレスタンが倒れたところに、ロッコとレオノーレが現れ墓を掘りはじめます。

フロレスタンが目を覚ますと、ロッコから「ここの所長はピツァロだ」ということを知ります。
フロレスタンはロッコに「妻への伝言」を頼むが断られます。

瀕死のフロレスタンにレオノーレはパンと酒を与えます。
しかし、彼はそれが妻だとはまだ気づいていません。

妻レオノーレが夫を助ける、大臣の到着

墓の穴を掘り終えると、ピツァロが登場します。

そしてピツァロがフロレスタンを刺し殺そうとした瞬間、妻レオノーレが止めに入り
「まず妻を殺せ!」
「私は妻のレオノーレよ。」
と叫び、ピツァロに銃を突きつけます。

そこに大臣到着の合図のラッパが鳴ります。
ピツァロは地上に登っていき、フロレスタンとレオノーレは再会を喜び抱き合います。

序曲『レオノーレ』第3番

マーラーが演奏して以来、ここに序曲『レオノーレ』第3番が挿入されることが多い。

フロレスタンは解放され、ピツァロは捕えられる

中庭
囚人たちは解放されて、その喜びを歌いあげます。

大臣は
「もう奴隷のようになることはない。」
「闇に葬られた悪を暴き、自らの兄弟を助けに来た。」
と語ります。

大臣は死んだと思っていた同志フロレスタンとの再会に驚き、喜びます。
そして妻レオノーレの勇気ある行動を称えます。

ピツァロは逮捕され、フロレスタンは解放されます。
ここでマルツェリーネは「レオノーレは女だった。」ことを知りがっかりします。

皆が妻レオノーレを称える中で、オペラは終わります。

ベートーヴェン『フィデリオ』の映像

バーンスタイン&ウィーン国立歌劇場、ヤノヴィッツ、コロ
1978年、ウィーン国立歌劇場でのライブ映像です。
歌手陣はとても豪華な布陣で、ベートーヴェンの豊かで抒情的なサウンドが美しく鳴り響きます。
さらにバーンスタイン、ウィーン国立歌劇場管弦楽団の奏でる音楽が、オペラを一層輝かせます。
演出もとても入りやすく、フィデリオの初めての1枚としてもオススメです。

【キャスト等】
レオノーレ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
フロレスタン:ルネ・コロ
マルツェリーネ:ルチア・ポップ
ドン・ピツァ:ハンス・ゾーティン
ロッコ:マンフレート・ユングヴィルト
ドン・フェルナンド:ハンス・ヘルム

合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
指揮:レナード・バーンスタイン
演出:オットー・シェンク

収録:1978年1月29日(ウィーン国立歌劇場)

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