作品名メサイア(Messiah)
作曲家ヘンデル
作曲年1741年8月22日~9月14日
初演1742年4月13日(ダブリン)
演奏時間約2時間半

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(Georg Friedrich Händel/1685年~1759年)のオラトリオ「メサイア(Messiah)」は、1742年に初演されました。
作曲自体は1741年におこなわれ、わずか1カ月弱で完成されたと言われています。

日本全国で年末になるとベートーヴェンの第九が歌われるように、このメサイアも多くの合唱団によって歌われる日本でも有名な曲です。
ハレルヤコーラスは誰もが聴いたことのある音楽で、中学校の卒業式で歌われる学校もあるようです。

ここでは ヘンデルのオラトリオ「メサイア」の解説と名盤を紹介したいと思います。

ヘンデルのオラトリオ「メサイア」の演奏

 有名なハレルヤコーラスは[1:54:39]から

Soprano:Susan Gritton
Alto:Sara Mingardo
Tenor:Mark Padmore
Bass:Alastair Miles

London Symphony Orchestra
Conductor:Colin Davis

Part I
Scene 1: Isaiah's prophecy of salvation
[3:44]Overture
[7:36]Comfort Ye My People
[10:40]Ev'ry Valley Shall Be Exalted
[14:14]And The Glory Of The Lord Shall Be Revealed
Scene 2: The coming judgment
[17:02]Thus Saith The Lord Of Hosts
[18:33]But Who May Abide The Day of His Coming
[22:51]And He Shall Purify
Scene 3: The prophecy of Christ's birth
[25:13]Behold, A Virgin Shall Conceive
[25:38]O Thou That Tellest Good Tidings To Zion
[31:20]For Behold, Darkness Shall Cover The Earth
[36:56]For Unto Us A Child Is Born
Scene 4: The annunciation to the shepherds
[41:04]Pastoral Symphony
[44:15]There Were Shepherds Abiding In The Field
[45:51]Glory To God In The Highest
Scene 5: Christ's healing and redemption
[47:52]Rejoice Greatly, O Daughter Of Zion
[52:30]Then Shall The Eyes Of The Blind Be Open'd
[53:00]He Shall Feed His Flock/Come unto Me
[58:00]His Yoke Is Easy, His Burden Is Light

Part II
Scene 1: Christ's Passion
[1:01:36]Behold The Lamb Of God
[1:05:05]He Was Despised
[1:15:05]Surely He Hath Born Our Griefs
[1:17:30]And With His Stripes We Are Healed
[1:20:03]All We Like Sheep Have Gone Astray
[1:24:10]All They That See Him
[1:25:00]He Trusted In God
[1:27:27]Thy Rebuke Hath Broken His Heart
[1:29:55]Behold, And See If There Be Any Sorrow
Scene 2: Christ's Death and Resurrection
[1:31:23]He Was Cut Off Out Of By The Land Of The Living
[1:31:44]But Thou Didst Not Leave His Soul
Scene 3: Christ's Ascension
[1:34:15]Lift Up Your Heads, O Ye Gates
Scene 4: Christ's reception in Heaven
[1:37:34]Unto Which Of The Angels
[1:37:49]Let All The Angels Of God Worship Him
Scene 5: The beginnings of Gospel preaching
[1:39:15]Thou Art Gone Up On High
[1:42:38]The Lord Gave The Word
[1:43:48]How Beautiful Are The Feet
[1:46:14]Their Sound Is Gone Out
Scene 6: The world's rejection of the Gospel
[1:47:50]Why Do The Nations So Furiously Rage
[1:50:33]Let Us Break Their Bonds Asunder
[1:52:17]He That Dwelleth In Heaven
Scene 7: God's ultimate victory
[1:52:33]Thou Shalt Break Them
[1:54:39]Hallelujah

Part III
Scene 1: The promise of eternal life
[2:02:20]I Know That My Redeemer Liveth
[2:08:12]Since By Man Came Death
Scene 2: The Day of Judgment
[2:10:33]Behold, I Tell You A Mystery
[2:11:12]The Trumpet Shall Sound
Scene 3: The final conquest of sin
[2:20:07]Then Shall Be Brought To Pass
[2:20:25]O Death, Where Is Thy Sting?
[2:21:34]But Thanks Be To God
[2:23:42]If God Be For Us
Scene 4: The acclamation of the Messiah
[2:28:33]Worthy Is The Lamb That Was Slain
[2:32:09]Amen

オラトリオは宗教的な音楽劇

そもそもオラトリオとはどのようなものなのでしょうか。
オラトリオは宗教劇をもとに作られたもので、初めはグレゴリオ聖歌やマドリガーレのようなものでした。
1575年にグレゴリウス13世よりオラトリオ集会が正式に認可され、本格的なオラトリオの作品は1619年のジョヴァンニ・アネーリオの「宗教的調和劇」だと言われています。

初めの頃は教会で歌われ、オペラのように演技付きのものもありました。
それが教会の信者たちの反対により、次第に演技付きではない今のような形に変わっていきました。
それと共に演奏をする場所も、教会からコンサートホールへと変わっていきました。

メサイアはキリストを指す

メサイアはオラトリオですので、もちろん宗教的な内容になっています。
メサイアとはヘブライ語で「聖油を注がれた者」の意味で、「救世主」とも訳され、これはキリストを指しています。
音楽自体も「キリストの降臨」「受難」「復活」の3部で構成されています。

オペラで倒産したヘンデル

ヘンデルはオラトリオの印象が強いかもしれません。
しかし、実はオラトリオよりオペラの方が多くの作品を残しています。
ヘンデルは46作品ものオペラを作曲しました。

オペラ作曲家としても活躍したヘンデルらしく、彼のオラトリオはドラマティックな作品が多いのが特徴です。
ヘンデルはドイツ生まれですが、1712年にはロンドンに移住し、1727年には正式に帰化をしています。
そしてロンドンで「王立アカデミー」を設立し、オペラの興業もはじめます。

ヘンデル

ロンドンでオペラ作曲家として活躍したヘンデルですが、オペラにも流行りがあり、この流行の変化がヘンデルを悲劇へと導きます。

「セリア」と呼ばれるジャンルのオペラを書いていたヘンデルでしたが、ロンドンでは「乞食オペラ」と呼ばれるコメディの要素が強いオペラが流行り出します。
「セリア」とはイタリア語で「コミカルではない・真面目な・悲しげな」などの意味で、まさに流行とは真逆のオペラでした。

流行からはみ出たヘンデルはオペラで失敗し、多額の負債を抱えて倒産してしまいます。
そして1737年の52歳のときに卒中の発作を起こしてしまいます。

オラトリオでのヘンデル復活

そんな中、ヘンデルを復活させてくれたのがオラトリオでした。
ヘンデルの書いた32曲のオラトリオの多くは、この卒中を起こした以降に書かれています。

メサイアは、アイルランドの貴族たちによって作曲を依頼されました。
初演は1742年にアイルランドの首都ダブリンでおこなわれ、大成功を収めました。
600人収容の場所で700人が入り、外には入れなかった人たちが溢れたそうです。
そしてイギリスでも次第に広まっていくのでした。

ヘンデル自体もメサイアがお気に入りで、この作品を56回も指揮しました。
また、ヘンデルが亡くなる前の最後のコンサートもメサイアだったそうです。

国王が感動で立ち会った作品

ハレルヤのイギリスでの初演は1743年にロンドンで演奏され、国王も招待された公演でした。
国王は、初演であの有名な「ハレルヤコーラス」を聴いて感動のあまり曲の途中で立ち上がって賛辞を示したそうです。
そして曲の終了後は、スタンディングオベーションに包まれました。

 現在ではこれは「事実ではない」とも考えられています。
それが今でも慣習として残っており、ハレルヤコーラスを聴く際には聴衆が立って聴くこともよくあります。

ちなみにイギリスの初演は大成功とは言えなかったとのエピソードも残っており、ヘンデルが地道に演奏活動を続けることで「メサイア」の地位を上げていったという説もあります。

実際、聖書から直接引用した歌詞が多く、宗教作品をオペラ劇場で演奏したなどの理由から、宗教関係者の間では賛否両論だったそうです。
ロンドンでの初演もそれを考慮し「メサイア」というタイトルは使われず「新しい宗教的オラトリオ」という仮題で演奏されました。

作品自体は素晴らしくとも、当時としては刺激的な作品だったのかもしれません。

ヘンデルのオラトリオ「メサイア」の名盤

1984年に録音されたショルティ指揮・シカゴ交響楽団演奏によるメサイアです。
ソリストや合唱も充実しています。
メサイアは「歌モノ」ですので、歌の演奏も美しいこの録音はオススメの1枚です。

その他の録音

ヘンデルのオラトリオ「メサイア」のその他の録音も紹介したいと思います。

カール・リヒター/ロンドン・フィル

messiah01
1972-1973年の録音です。
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:カール・リヒター
合唱:ジョン・オールディス合唱団

ヘレン・ドナート(ソプラノ)
アンナ・レイノルズ(アルト)
スチュアート・バロウズ(テノール)
ドナルド・マッキンタイアー(バス)

クロイスターノイブルクの教会でのライヴ映像

messiah02

メサイアは映像付きのほうが楽しめるかもしれません。
こちらは2016年、オーストリアのクロイスターノイブルク修道院教会でのライブ映像です。
ブルーレイで高音質・高画質のコンサートを鑑賞できます。

指揮:ルベン・ドゥブロフスキー
ザルツブルク・バッハ合唱団
バッハ・コンソート・ウィーン

ハンナ・ヘアフルトナー(ソプラノ)
ガイア・ペトローネ(アルト)
ミヒャエル・シャーデ(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス)

ガーディナー指揮

messiah03
1982年に録音されたガーディナーの音楽を世に知らしめた名盤です。
ガーディナー自身が「現存する資料を深く調べあげ、曲ごとに最も適切で効果的なものを選んだ」と述べているように、ガーディナーの作品への深い解釈が特徴的です。
録音状態も良いのが嬉しいポイントです。

モンテヴェルディ合唱団
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

マーガレット・マーシャル(S)
キャサリン・ロビン(A)
チャールズ・ブレット(C-T)
アンソニー・ロルフ・ジョンソン(T)
ロバート・ヘイル(B)
ソウル・カーク(B-S)

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