項目データ
初演1911年5月19日 パリ・オペラ・コミック座
原作フランク・ノアンのファルサ(笑劇)『スペインの時』
台本フランク・ノアン
演奏時間45分

『スペインの時(L'heure espagnole)』は、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel/1875年-1937年)によって作曲されたオペラです。
このオペラは1幕物の短いオペラで、初演時はマスネのオペラ『テレーズ』と2本立てで上演されました。
初演の結果は、『テレーズ』よりも『スペインの時』の方が好評だったそうです。

ラヴェルはパリでフランク・ノアンの同名の笑劇を見たときに、オペラ化を考えました。
フランク・ノアンはオペラの許可を出しただけでなく、その後の台本制作もおこないました。

ここではラヴェルのオペラ『スペインの時』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

トルケマダ(テノール):時計屋の主人
コンセプシオン(ソプラノ):トルケマダの妻
ゴンサルヴェ(テノール):独身の男
ラミーロ(バリトン):ロバ引き
ドン・イニーゴ・ゴメス(バス):銀行家

第1幕:『スペインの時』のあらすじ、その1

スペインの時計屋の店

ラミーロが時計の修理の依頼に来る

時計屋の主人トルケマダが仕事をしているところに、ロバ引きのラミーロが「私の時計がよく止まってしまう。」と修理の依頼にやって来る。

そこにトルケマダの妻コンセプシオンが登場する。
彼女は夫に、
「今日は、市役所の時計の点検でしょ。」
とせかし、さらに
「ここのカタロニアの時計を2階の寝室に運んでって頼んだよね。」
と話す。

トルケマダが外出する

トルケマダはラミーロに、
「市役所に急いでいってくるから、帰るまで少し待っててくれ。」と告げ、出発する。

コンセプシオンは週で一日だけ一人になれるこの日を楽しみにしていた。
それは、自分の恋人を招くことができるからだ。
しかし、今日はここに客(ラミーロ)がいる不運にがっかりしている。

ラミーロが時計を運ぶ

コンセプシオンはラミーロを追い出すために「カタロニアの時計」のことを相談する。
すると、力持ちのラミーロは軽々と時計を持ち上げ、2階の寝室まで運んでくれる。

コンセプシオンはようやく一人になる。

第1幕:『スペインの時』のあらすじ、その2

コンセプシオンと恋人ゴンサルヴェ

そこに恋人ゴンサルヴェが入ってくる。
コンセプシオンとゴンサルヴェが抱き合っているところに、タイミング悪くラミーロが戻ってくる。

コンセプシオンはラミーロに
「やっぱりさっきの時計より、こっちの方がいい。」
「さっきのを元に戻してから、こっちのを運んでくれないか。」
と頼む。

ラミーロは快く引き受け、コンセプシオンはラミーロをまたも追い出す。

ゴンサルヴェが時計の中に

ラミーロが2階に行っている間に、コンセプシオンは大時計の中にゴンサルヴェを押し込む。

恋人の時計は寝室へ、銀行家は別の時計の中に

しばらくすると、銀行家イニーゴが店に入ってくる。
イニーゴは彼女が一人だと思いこみ、彼女を口説き始める。

そこにラミーロが戻ってくる。
そして「ゴンサルヴェが入った時計」を軽々と持ち上げ、寝室へと運んでいく。
コンセプシオンもそれに続いて寝室に消えていく。

イニーゴは彼女を驚かせようと、時計の中に入って帰りを待つ。

ラミーロが戻ってくる。
ラミーロが彼女の美しさを独白しているところに、彼女が戻って来てまた時計を取り換えてほしいと頼む。

ラミーロがまたも時計を取り換える

ラミーロが2階に行くと、時計の中からイニーゴが話しかけるので彼女は驚く。
ラミーロが2階から「ゴンサルヴェの入った時計」を戻しに来て、「イニーゴの入った時計」を2階に運ぶ。
コンセプシオンとゴンサルヴェは二人きりになると、痴話げんかをする。

ラミーロとコンセプシオンが惹かれ合う

ラミーロは次第にコンセプシオンに惹かれていく。(Voilà ce que j'appelle)
そして頼まれてもいないのに「イニーゴの入った時計」を2階に取りに行く。

「Voilà ce que j'appelle」

一方、コンセプシオンも力強いラミーロに想いを寄せはじめている。(Oh! la pitoyable aventure)
コンセプシオンはラミーロが戻ると「時計はなしで。」と話し、二人は2階の寝室へと消えていく。

「Oh! la pitoyable aventure」

トルケマダ帰宅、残された二人は1階の時計の中

イニーゴは太っているせいで時計から出られずにいる。
そこにトルケマダが帰ってくる。
未練がましく店に残っていたゴンサルヴェも慌てて時計の中に隠れる。

トルケマダは二人に気付き、二人にそれぞれの時計を買わせる。
そしてイニーゴを時計から出そうと悪戦苦闘しているところに、コンセプシオンとラミーロが戻ってくる。

力持ちのラミーロは簡単にイニーゴを時計から出す。

トルケマダは、時計が売れてなくなってしまったので、「お前にはまだ時計を持たせられないな」とコンセプシオンに話す。
コンセプシオンは、「毎朝ラミーロが、私の窓の下を、正確な時間にロバと一緒に通り過ぎるわ。」と返す。
するとトルケマダはラミーロに「毎朝彼女に時間を教えてあげて下さい。」と頼む。

皆が、「すべての恋人たちの中から役に立つ恋人を選べ」とボッカッチオの教訓を高らかに歌い幕が下りる。

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