ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840年~1893年)の「ヴァイオリン協奏曲」は、1878年に作曲されました。

ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーンの3作品で「三大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれますが、それにチャイコフスキーも加えて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれることもあります。
ヴァイオリニストにとっては難曲としても知られています。
日本では「のだめカンタービレ(フジテレビ)」で千秋真一挑戦したプラティニ国際指揮者コンクールの中で使われた曲としても有名ですね。

ここではチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」の解説と名盤を紹介したいと思います。

恵まれた環境の中で短期間で作曲された

多くの音楽家がそうであったように、チャイコフスキーもまたお金には苦労した人物でした。
実際にチャイコフスキーがお金に苦労していたり、借金の申し込みをしている書簡などが残っています。

しかしこの時期のチャイコフスキーは恵まれた環境下にいました。
ロシアの鉄道会社の未亡人であったメック夫人から年金を受け取れることになったのです。
年金というと少額に感じるかもしれませんが、その額は彼のモスクワ音楽院の給料の2倍の額でした。

経済的に余裕のできたチャイコフスキーはジュネーヴ湖畔のクラランに静養に出かけたり、イタリアを訪れたりします。
そして精神的にも余裕ができたのか、この時期には多くの傑作が生まれています。
「交響曲第4番」やオペラ「エフゲニー・オネーギン」はこの時期に書かれたものです。

謎のパトロン・メック夫人

メック夫人はチャイコフスキーのパトロンとして1877年から14年間も支援し続けました。
支援を止めた理由は精神的な病を患い、自分自身が破産してしまったと思いこんでしまったと言われています。
14年も支援を続けたメック夫人ですが、チャイコフスキーとは一度も会うことがなかったそうです。

メック夫人の娘はドビュッシーにピアノを習っています。
メック夫人は純粋に音楽を愛する人物だったのかもしれませんね。
ちなみにドビュッシーはメック夫人の娘と恋愛関係に陥ってしまったため、解雇されています。

チャイコフスキーの「交響曲第4番」はこのメック夫人に捧げられた曲です。

ロシアの哀愁が溢れる作品

このヴァイオリン協奏曲は友人のヴァイオリニストのイオシフ・コテックがチャイコフスキーのもとにエドゥアール・ラロのヴァイオリン協奏曲第2番(スペイン交響曲)の譜面を持ってきたことがきっかけだったと言われています。
作品は短期間で書き上げられ、1カ月ほどで完成しました。

ロシアの大地を感じられ、哀愁溢れる音楽が印象的です。
チャイコフスキーはロシア的匂いの強い作曲家ではないかもしれませんが、それでも節々にロシア的な辛抱強さや哀しみが漂います。

Tchaikovsky

初演は大失敗

初演は1881年にロシア人のヴァイオリニストのアドルフ・ブロツキーの独奏、ハンス・リヒター指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でおこなわれましたが、大失敗に終わりました。
当時の偉大なロシア人ヴァイオリンのレオポルト・アウアーに当初はソリストを頼む予定ですが、演奏不可能と酷評され断れた経緯もありました。
音楽評論家のエドゥアルト・ハンスリックは「悪臭を放つ音楽」と酷評しました。

ちなみにハンスリックという人物はブラームス派の評論家で、標題音楽に否定的でワーグナーのことも痛烈に批判していました。
ブラームス派のハンスリックにとって民族的な匂いの強いこの音楽は新しすぎたのかもしれませんね。

ロシア人ヴァイオリニストが作品の価値を高める

初演で酷評されたこの作品ですが、初演でソリストを務めたアドルフ・ブロツキーが酷評に負けることなく弾き続けることにより、次第に評価が高まっていきます。
ブロツキーはチャイコフスキーの友人でもあった人物です。
持つべきものは「友」というわけですね。
そして、しばらくすると初演の演奏を断ったレオポルト・アウアーもこの作品を演奏するようになります。
チャイコフスキーが作ったロシア音楽の価値を高めたのも同じロシア人である二人のヴァイオリニストだったのです。

「ヴァイオリン協奏曲」の価値を高めてくれた感謝の印として、この作品は初演のソリストであるアドルフ・ブロツキーに献呈されました。

曲の構成

作品全体を通して35分程度の演奏時間で、3楽章で構成されています。

第1楽章 Allegro moderato - Moderato assai ニ長調

ロシアの情感が詰まったオーケストラの序奏で始まり、その後独奏ヴァイオリンが入ってきます。
第1主題が独奏ヴァイオリンによって演奏され、次第に音楽は壮大な盛り上がりをみせます。

やがて音楽は暖かな雰囲気を醸し出し、続いて独奏ヴァイオリンが第2主題を穏やかながら情感豊かに演奏します。
独奏ヴァイオリンが提示部を引っ張り、トランペットも印象的なオーケストラによる展開部が演奏され、途中から独奏ヴァイオリンが加わります。
そして音楽はカデンツァに移ります。

最後は独奏ヴァイオリンの見せ場タップリの演奏を経て、劇的なリズムの中で第1楽章は終わります。
第1楽章の終わりではありますが、作品全体が幕を閉じたような壮大な幕切れが印象的です。

第2楽章 Canzonetta:Andante ト短調

1楽章の終わりとは雰囲気はガラリと変わり、管楽器による静かな序奏で第2楽章は始まります。
それに続いて、独奏ヴァイオリンが優美ですが少し悲しげな第1主題を演奏します。

やがて中間部では印象を変え、華やかで軽快な音楽が登場します。
その後第1主題を独奏ヴァイオリンが再び奏でた後に、オーケストラだけによる演奏がなされます。
そのまま音楽は終わることなく第3楽章へと入っていきます。

第3楽章 Allegro vivacissimo ニ長調

第2楽章から雰囲気をガラリと変え躍動感のあるリズムをオーケストラが奏でた後に、独奏ヴァイオリンによる第1主題が登場します。
この第1主題はロシアの舞曲をもとにしており、広大な大地を思い起こさせるようなリズムが印象的です。

音楽は一度穏やか一面をみせますが、次第に華やかさを取り戻し、軽快なリズムで盛り上がりをみせます。
最後は独奏ヴァイオリンとオーケストラによる壮大なクライマックスの中で作品は幕を閉じます。

チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」の名盤

日本人で素晴らしい演奏があるのであれば、同じ日本人として是非聞いておきたいところです。
こちらのCDはソリストに五嶋みどりさん、クラウディオ・アバド指揮でベルリン・フィルの演奏という豪華な共演です。
チャイコフスキーは1995年3月にショスタコーヴィチは1997年12月に、いずれもベルリンにて録音されたものです。

その他の曲目一覧(目次)

その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。

クラシック作品(目次)

オペラ作品(目次)

ミュージカル作品(目次)

歌詞対訳(目次)

ピアノ無料楽譜(目次)