項目データ
初演1900年1月14日 コスタンツィ劇場(ローマ)
原作ヴィクトリアン・サルドゥの同名の戯曲
台本ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ
演奏時間1時間50分

『トスカ(Tosca)』は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini/1858年-1924年)によって作曲されたオペラです。
劇中では、数多くあるオペラの中でも特に人気のある有名なアリアが美しく歌われます。

プッチーニは同名の戯曲をみて、すぐにこの台本に惹かれたそうです。
しかし「トスカ」をオペラ化する権利は、一度はアルベルト・フランケッティのものになってしまいます。
その後フランケッティが無償でオペラ化の権利をプッチーニに譲り、この傑作は生まれました。

 フランケッティは裕福な貴族出身の作曲家でした。
そのため敵対心が薄く「ライバルのプッチーニに権利を譲ることも抵抗がなかった」のではと言われています。
彼は「アンドレア・シェニエ」の権利もジョルダーノに無償で譲りました。

台本はイッリカとジャコーザの名コンビによるもので、『ボエーム』『蝶々夫人』の台本も彼らが書きました。

ここではプッチーニのオペラ『トスカ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
フローリア・トスカ(ソプラノ)有名な歌手
マリオ・カヴァラドッシ(テノール)画家でトスカの恋人
スカルピア男爵(バリトン)ローマ市の警視総監
アンジェロッティ(バス)前ローマ共和国統領、脱獄してきた政治犯
スポレッタ(テノール)スカルピアの副官
堂守(バス)聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会の番人

『トスカ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
1800年6月:ナポレオン軍が欧州で勢いを増し、ローマ共和国が廃止され教皇国家が復活した頃

カヴァラドッシ(画家)はアンジェロッティ(脱獄してきた政治犯、前ローマ共和国統領)の逃亡を手助けします。
そのことが明らかになり、カヴァラドッシはスカルピア(警視総監)に捕らえられ死刑が告げられます。

トスカ(カヴァラドッシの恋人)がスカルピアを殺し、恋人を助けようとしますが、最後に悲劇が待ち受けています。
カヴァラドッシは処刑されてしまい、最後にトスカもそれを追って自殺します。

 主要な登場人物3人(トスカ、カヴァラドッシ、スカルピア)は、すべて命を落としてしまいます。

第1幕:『トスカ』のあらすじ

1800年6月、ローマ
ナポレオン率いるフランス軍が勢いを持つころ

アンジェロッティが教会に逃げ込んでくる

聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会
脱獄した囚人・アンジェロッティが無人の教会に逃げ込んできます。
そして妹が隠してくれていた鍵を探し出すと、鍵を開け礼拝堂へ入っていきます。

 アンジェロッティ:前ローマ共和国統領、脱獄してきた政治犯。
このオペラが始まる直前までローマの統領でしたが、教皇国家が復活したために失脚し投獄されていました。

入れ替わりに堂守が現れ、続いて画家カヴァラドッシが登場します。
カヴァラドッシが書きかけの絵のカバーを取ると、そこには最近この教会に祈りに来ている女性がモデルの絵があります。

カヴァラドッシはそのモデルの絵と比較しながら、自身の恋人の美しさを称えます。(Recondita armonia)

「妙なる調和(Recondita armonia)」

堂守はバスケットに入っているパンが減っていないのを見て「断食でもしてるのか?」と尋ねます。
カヴァラドッシは「お腹が減っていない。」と答えます。
堂守は立ち去っていきます。

アンジェロッティが友人カヴァラドッシの再会

堂守が去ると、アンジェロッティ(脱獄囚)が友人カヴァラドッシの前に現れます。
カヴァラドッシはアンジェロッティの逃走を助けることを約束します。

そこにカヴァラドッシの恋人、トスカが現れます。
アンジェロッティはバスケットにあった食べ物とワインを貰って急いで身を隠します。

カヴァラドッシと恋人トスカの愛の二重唱

嫉妬深いトスカは鍵をかけていたことを疑い、誰か女がいたのかと問い詰めます。(Mario, Mario, Mario!)
カヴァラドッシは何とか誤魔化し、トスカに愛を伝えます。
そして今夜の演奏会が終わったら2人で別荘に行くことを約束します。

「Mario, Mario, Mario!」

カヴァラドッシとアンジェロッティが教会から逃げる

トスカが立ち去ると、カヴァラドッシはアンジェロッティに逃げ道として別荘までの道のりを教えます。
そして、もし何かあったら庭の井戸に隠れるよう助言します。

そのとき脱獄を知らせる城の大砲が鳴ります。
二人は急いで教会を立ち去ります。

そこへ堂守が戦争の勝利を知らせに来ますが、カヴァラドッシがいないのでがっかりします。
堂守は少年たちと勝利を喜びます。

残忍な警視総監スカルピアの登場

しばらくすると警視総監スカルピアがアンジェロッティを探しにやってきます。
残忍なスカルピアは、教会内でアンジェロッティの形跡を探し始めます。

堂守は「礼拝堂のドアが開いていること」に気づき、それを伝えます。
さらにスカルピアはアッタヴァンティ家の紋章の入った扇子も見つけます。

 アッタヴァンティ・・・絵のモデルで、脱獄囚アンジェロッティの妹

その後、バスケットの食料が減っていることにも気付きます。
スカルピアは「カヴァラドッシが脱獄囚の逃亡に関係している」と疑い出します。

部下にトスカを尾行させる

そこにトスカが現れます。
カヴァラドッシがいなくなっているのを見て、嫉妬深いトスカは彼の浮気を疑い出します。
スカルピアはトスカにアッタヴァンティ家の扇子を見せて、嫉妬心をあおります。

トスカは怒って教会から出ていきます。
スカルピアは、部下のスポレッタにそれを尾行させます。

第2幕:『トスカ』のあらすじ

カヴァラドッシは厳しい拷問を受ける

ファルネーゼ宮殿にあるスカルピアの部屋

スカルピアのもとに部下・スポレッタが帰ってきます。
そして、「アンジェロッティは逃したが、カヴァラドッシを捕えた。」と伝えます。

カヴァラドッシは厳しい拷問を受けますが、「何も知らない」と言い続けます。
しかし、トスカが恋人の拷問に耐えきれなくなり、「庭の井戸の中にアンジェロッティがいる。」と告白してしまいます。

カヴァラドッシが収監される

拷問から解放されたカヴァラドッシは、トスカが居場所を教えたことに怒ります。
しかし、そのとき戦争の敗北(スカルピアのいる軍の敗北)の知らせが舞い込みます。

カヴァラドッシは勝利を叫びます。
逆上したスカルピアは「死刑囚、絞首台がおまえを待っている。」と叫び、部下に外に連れていかせます。

カヴァラドッシは死刑が宣告され、収監されてしまいます。

トスカがスカルピアを刺す

残ったトスカはスカルピアに「カヴァラドッシを助けてくれるよう」頼みます。
スカルピアは対価として彼女の身体を要求します。
トスカはその苦悩を歌い(Vissi d’arte, vissi d’amore)、要求を受け入れます。

「Vissi d’arte, vissi d’amore(歌に生き、愛に生き)」

スカルピアは部下・スポレッタに「銃殺のふりだけして、カヴァラドッシを生かすよう」命令する。
スポレッタはその場を去ります。

 本当はそうではなく、「カヴァラドッシを銃殺する」ように命令している。

トスカはさらに「2人で逃亡するための通行手形」を要求します。
スカルピアが手形を書き終えトスカを抱こうとしたときに、事件が起こります。

トスカがスカルピアをナイフで刺し殺してしまうのです。
トスカは息絶えたスカルピアから通行手形をもぎ取り、部屋を出ていきます。

第3幕:『トスカ』のあらすじ

カヴァラドッシの極上のアリア

サンタンジェロ城の屋上

カヴァラドッシが収監されています。
カヴァラドッシは看守にトスカへの指輪を託し、さらに手紙を書きだします。
そして手紙の途中で感極まり、愛と絶望、命の惜しさを歌います。(E lucevan le stelle)

「E lucevan le stelle(星は光りぬ)」

そこにトスカが現れます。
トスカはカヴァラドッシに通行手形をみせ、これまでの出来事を伝え、スカルピアを殺したことも告白します。
そして、「見せかけの処刑があるから、撃たれたら倒れるように」頼みます。
二人は自由を喜びます。

カヴァラドッシとトスカの死

処刑の準備が整い、カヴァラドッシは処刑台へと進みます。
そして銃声が聞こえると、トスカは倒れたカヴァラドッシのもとへと向かいます。
しかし銃声は空砲ではなく、カヴァラドッシは既に死んでいました。
「空砲で見せかけの処刑」は嘘だったのです。

その時「スカルピアが殺害された!犯人はトスカだ!」という知らせが入ります。
絶望したトスカが屋上から身を投げ命を絶ち、悲劇のオペラが終わります。

プッチーニ『トスカ』の映像

ロバート・カーセンの斬新な演出で話題を呼んだ、2009年チューリヒ歌劇場でのライブ映像です。
近年の録音ですので、高音質・高画質でオペラが楽しめます。

"イタリア的な声"を求める場合は好みが別れるかもしれませんが、情熱的に演じるカウフマンのカヴァラドッシは必見です。
マギーやハンプソンも説得力のある歌唱を聴かせてくれます。

【キャスト等】

トスカ:エミリー・マギー(ソプラノ)
カヴァラドッシ:ヨナス・カウフマン(テノール)
スカルピア:トーマス・ハンプソン(バリトン)
アンジェロッティ:ワレリー・ムルガ(バス)
堂守:ジュゼッペ・スコルシン(バス)、他

チューリヒ歌劇場管弦楽団、合唱団
指揮:パウロ・カリニャーニ
演出:ロバート・カーセン

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