項目データ
初演1849年3月9日 ベルリン王立歌劇場(現在のベルリン国立歌劇場)
原作ウィリアム・シェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』
台本サロモン・ヘルマン・フォン・モゼンタール
演奏時間2時間20分

『ウィンザーの陽気な女房たち(Die lustigen Weiber von Windsor)』は、オットー・ニコライ(Otto Nicolai/1810年–1849年)によって作曲されたオペラです。
同じ原作を元にしたオペラとしては、ヴェルディが作曲した最後のオペラ『ファルスタッフ』が挙げられます。

このオペラは若くしてこの世を去ったニコライにとって最後のオペラで、彼の代表作です。
またニコライは、音楽史的には「ウィーンフィルの創始者」としても知られています。

ここではニコライのオペラ『ウィンザーの陽気な女房たち』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

ファルスタッフ(バス)

ライヒ(バス)
ライヒ夫人(メゾソプラノ)
アンナ(ソプラノ):ライヒの娘、フェントンの恋人

フルート(バリトン)
フルート夫人(ソプラノ)

フェントン(テノール):アンナの恋人
シュペアリッヒ、カイアス:アンナへの求婚者

『ウィンザーの陽気な女房たち』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

ファルスタッフは、2人の夫人に「全く同じ文章の恋文」を送ります。

その失礼な態度に彼女たちは怒り、「ファルスタッフへの復讐計画」をたてます。
そして「ファルスタッフの誘いに乗るふり」をして、彼を罠にかけます。

ファルスタッフは見事に引っ掛かり、オペラは終わります。

第1幕:『ウィンザーの陽気な女房たち』のあらすじ

夫人2人が「ファルスタッフを懲らしめよう」と結託する

ライヒ家とフルート家の間の中庭

フルート夫人とライヒ夫人

フルート夫人が、ファルスタッフから貰った恋文を手に持ち登場します。
彼女は傲慢なファルスタッフに怒っています。

続いて、ライヒ夫人も同じように恋文を手に持って登場します。

二人は「全く同じ文章の恋文」を貰ったことに気付き、ファルスタッフを罠にはめて懲らしめようと歌います。
そして、フルート夫人の家に消えていきます。

アンナとフェントンは結婚を反対されている

フルート、ライヒ、シュペアリッヒ、医者カイアス

フルート、ライヒ、シュペアリッヒ、医者カイアスが登場します。
シュペアリッヒとカイアスは、ライヒの娘アンナに求婚しています。

アンナの父はシュペアリッヒを、アンナの母はカイアスを気に入っています。
しかしアンナ本人はフェントンに恋をしています。

フェントン

そこにフェントンが現れ、「財産はないが、娘さんを愛している。」と父ライヒに語ります。
ライヒは、「貧乏人はだめだ。もう結婚相手は決めてある。」と相手にせず、追い払います。

「ファルスタッフを懲らしめる計画」が進む

フルート家の部屋

フルート夫人のアリア

フルート夫人は
「私たちを誘惑したファルスタッフを懲らしめてやる。人妻に手を出すなんて。」
「愛しているふりをして騙しましょう。」
と歌っています。(Nun eilt herbei)

フルート夫人とライヒ夫人

そこにライヒ夫人が現れ、
「打ち合わせた通りに進んでるわ。」
「あなたの主人に手紙を出して、あなたが夕暮れ時に逢引するって伝えたわ。」
と語ります。

フルート夫人は、
「二人とも(ファルスタッフとフルート)懲らしめましょう。」
と返します。

フルートが浮気現場に帰ってくるので、ファルスタッフが洗濯籠に隠れる

ファルスタッフの登場

そこに何も知らないファルスタッフが現れます。
ライヒ夫人は、近くに隠れます。

ファルスタッフは早速フルート夫人を口説き始めます。
フルート夫人は、「ライヒ夫人が好きなんじゃないの?」と言います。
ファルスタッフがそれを否定するので、フルート夫人は「信じましょう。」と返します。

そこにライフ夫人が急いで外から入って来て、
「フルートが怒り狂って、こっちに向かっている。」
と告げます。

フルート夫人は、ファルスタッフを「用意していた洗濯籠」の中に閉じ込めて隠します。
そして使用人たちに「テムズ川に投げ捨てる」ように頼みます。

ファルスタッフは川に投げ捨てられ、フルートは妻に謝罪する

フルートが部屋を捜索

激怒し嫉妬に狂ったフルートが現れ、連れて来た男たちに浮気相手を探させます。
しかし、いくら探しても証拠は見つかりません。

疑いをかけられたことにフルート夫人は嘆き悲しみ、皆はフルートを責めます。

フルートは
「手紙を貰って、そこにファルスタッフと逢引するって書いてあったんだ。」
「許してくれ。」
と言います。

しかし、フルート夫人は「今日にも離婚よ。」と許しません。
全員がフルートを責め立てる中で、1幕が下ります。

第2幕:『ウィンザーの陽気な女房たち』のあらすじ

ファルスタッフが再び罠にかかる

ガーター亭の居酒屋

ファルスタッフ

川に投げ捨てられたファルスタッフが愚痴を言いながら酒を注文しようとします。
しかし、つけが溜まっているため、断られます。
それでもファルスタッフが酒を出せとうるさいので、ウェイターは仕方なしに酒を1杯出します。

ウェイターは酒の後に「フルート夫人からの手紙」を渡します。
「私は昨日の災難にとても悲しんでいます。」
「今日の9時に夫は鷹狩でいませんので、もう1度来てください。」
と手紙には書いてあります。

ファルスタッフは機嫌を直し、居酒屋の客と酒の飲み比べをします。(Als Büblein klein an der Mutter Brust)

「Als Büblein klein an der Mutter Brust」

そこにフルートが「バッハ」と偽名を使って現れます。

そしてファルスタッフに
「私はフルート夫人に恋をしているが、彼女は相手にしてくれない。」
「お金を渡すから、フルート夫人を口説いてほしい。」
と頼みます。

ファルスタッフは「昨日も密会し、今日も彼女と会う約束がある。」と言い、引き受けます。

フェントンとアンナが愛を語り合う

ライヒ家の庭

シュペアリッヒとカイアスが、アンナが外に出てくるのを庭で待っています。

そこにフェントンが現れるので、二人は隠れます。
フェントンは愛のセレナーデを高らかに歌います。(Horch, die Lerche singt im Hain!)

「Horch, die Lerche singt im Hain!」

そして家から出てきたアンナと愛を語り合います。
シュペアリッヒとカイアスは、それに嫉妬します。

フルートが再び浮気現場に現れ、ファルスタッフは叔母に変装する

フルート家の部屋

ファルスタッフが再びフルート夫人を口説き始めます。

そこにまたもやライヒ夫人が入って来て、
「洗濯籠の件を知ったあなたの主人が鷹狩から戻ってくる。」
と伝えます。

今度はファルスタッフは「女中の太った叔母さん」に変装させられます。

 フルートと伯母さんは、面識がありません。

戻ってきたフルートが捜索をはじめ洗濯籠を剣で突くが、そこには誰もいません。
さらに部屋中を探し回りますが、ファルスタッフは見つかりません。

しばらくすると、ライヒ、シュペアリッヒ、カイアスも駆けつけます。

伯母(ファルスタッフ)が追い出される

続いてフルート夫人が伯母さんを連れてきます。
フルートは「元々伯母さんが嫌いで部屋に入れることを禁止していた」ため、伯母さん(ファルスタッフ)がいることにフルートは怒り、部屋から叩き出します。

そしてファルスタッフは結局最後まで見つかりません。

第3幕:『ウィンザーの陽気な女房たち』のあらすじ

フルートもこれまでの経緯を理解し、計画に参加する

ライヒ家の部屋

ライヒ夫妻、フルート夫妻、アンナは一緒に昼食を食べています。

フルートは妻に今までの許しを請い、真相をすべて聞きます。
そして皆で、「真夜中の公園にファルスタッフを呼び出して懲らしめる。」ことを計画します。

ライヒ夫人は、ウィンザーの森の狩人ハーンの伝説を語ります。(Vom Jäger Herne die Mär ist alt)
そして皆は妖精に変装し、ファルスタッフは狩人ハーンに変装させて招待することにします。

この騒動に乗じて、アンナの両親は娘を「それぞれのお気に入りと結婚させよう」と計画します。
母(ライヒ夫人)は「赤い妖精に変装しなさい」、父は「緑の妖精に変装しなさい。」とアンナに言います。

アンナは親に従うふりをして、「白い妖精の変装をして、フェントンと結婚すること」を決意します。(Wohl denn, gefasst ist der Entschluss)

「Wohl denn, gefasst ist der Entschluss」

ファルスタッフが真夜中の森に呼ばれる

真夜中のウィンザーの森

森の広場に樫の木があり、美しい月が夜空を照らしています。
そこに、ファルスタッフが狩人ハーンの格好をして現れます。

フルート夫人とライヒ夫人も現れ、二人はファルスタッフに言い寄ります。
ファルスタッフは「二人とも愛してやろう。」と上機嫌になります。

その時、あたりは急に明るくなり、妖精たちが現れます。
迷信を信じているファルスタッフは、恐れよろめいて倒れます。

妖精に扮したアンナとフェントンは手を取りあって、二人で消えていきます。

ファルスタッフへの復讐が完結する

続いてライヒが狩人ハーンの格好をして現れ、角笛を吹きます。
しかし、角笛が鳴りません。

ライヒは「角笛が鳴らないのは、ここに人間が隠れているからだ。」と言い、ファルスタッフを引っ張りだします。
そして皆でファルスタッフを痛めつけます。

ファルスタッフは「お慈悲を!」と叫びます。
フルートが招待を明かし、「バッハは偽名で、実はフルートだった。」ことを告白します。
ファルスタッフは騙されたことに気付き、観念します。

そこにシュペアリッヒカイアスが、二人で手を取り合って登場します。
二人はお互いをアンナだと思って結婚しようとしたのでした。
二人は「男と結婚してしまったじゃないか!」とライヒを責めます。

アンナとフェントンの結婚する

そこに聖壇の前で永遠の愛を誓い終わったアンナとフェントンが現れます。
アンナは両親に許しを請い、両親は仕方なく結婚を認めます。
皆が仲直りしたところでオペラの幕は下ります。

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