題名アンナ・ボレーナ
初演1830年12月26日 カルカーノ劇場(ミラノ)
原作1イッポリト・ピンデモンテの小説『エンリーコ8世、またはアンナ・ボレーナ』
原作2アレサンドロ・ペーポリ『アンナ・ボレーナ』
台本フェリーチェ・ロマーニ
演奏時間2時間50分

『アンナ・ボレーナ(Anna Bolena)』は、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti/1797年-1848年)によって作曲された初期の傑作オペラです。

16世紀のイングランド国王ヘンリー8世(エンリーコ8世)とその2番目の妻アン・ブーリン(アンナ・ボレーナのこと)を描いた史実に基づいた作品です。

初演が大成功を収めたことで、ドニゼッティの名声は一気に広まりました。

 フェリーチェ・ロマーニは、ドニゼッティやベッリーニに多くの台本を提供しました。
ベッリーニの『カプレーティとモンテッキ』『夢遊病の女』『ノルマ』、ロッシーニの『イタリアのトルコ人』、ドニゼッティの『愛の妙薬』などを提供しています。
 1957年スカラ座初演でのマリア・カラス(アンナ・ボレーナ役)の熱演は、伝説的な公演だったとして語り継がれています。(録音も残されています。)

ここではドニゼッティのオペラ『アンナ・ボレーナ』のあらすじを紹介したいと思います。

ヘンリー8世は「離婚がしたい」から宗教改革!?をした

カトリックでは「離婚禁止」

このオペラの主要人物である、ヘンリー8世(1491-1547)は「世界史の授業」でも登場する歴史的人物です。
当時、ヨーロッパでは「宗教改革」の流れが起きていました。(ルター、カルヴァンなど)

そんな中、ヘンリー8世は侍女に恋をしてしまい、最初の王妃と離婚をしたがっていました。

 離婚のきっかけとなる「侍女=2番目の王妃」が、このオペラの主役アン・ブーリン(アンナ・ボレーナ)です。

当時のイギリスはカトリックを選択していましたが、カトリックでは離婚は認められていません。

ヘンリー8世は、女好き!?

大げさに言うと、ヘンリー8世は「離婚したいから!?」新しい宗派(イギリス国教会)を作ってしまったのです。
宗教改革後、ヘンリー8世は6度も結婚しました。

また何度も侍女に恋をしていますので、女好きだったのでしょう。
このオペラの物語通り、実際に史実でも「アン・ブーリン(アンナ・ボレーナ)を処刑した翌日」に、ジェーン・シーモア(ジョヴァンナ)と婚約しています。
さらにはアン・ブーリンを含めて「妻を2人処刑」しているので、冷酷な王だったのかもしれません。

アン・ブーリンも王に負けてな!?

一方、ヘンリー8世が宗派を作ってまで結婚した女性が「アン・ブーリン(アンナ・ボレーナ)」です。
アン・ブーリンは、愛人を拒否して王妃の座を要求したと言われています。

アン・ブーリンも負けず劣らず、強気な女性だったのかもしれません。
そんな王朝の物語をオペラ化したのが、『アンナ・ボレーナ』です。

主な登場人物

人物名詳細
エンリーコ8世(バス)イングランド国王
アンナ・ボレーナ(ソプラノ)王妃
ジョヴァンナ・セイモー(メゾソプラノ)国王の愛人、アンナの女官
リッカルド・ペルシー卿(テノール)アンナの元恋人
ロシュフォール卿(バス)アンナの兄
スメトン(アルト)王妃の楽士
エルヴェイ(テノール)王の部下

『アンナ・ボレーナ』簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」


【第1幕】
エンリーコ王は、「王妃アンナと離婚」して「ジョヴァンナ(侍女)と結婚」をしたがっています。

そこで王は「アンナが元恋人(ペルシー)を愛している」ことを利用して、アンナとペルシーを不倫の罪(冤罪)で捕まえます。


【第2幕】
アンナは「罪を認めて離婚すれば許される」と告げられますが、自分の名誉のためにそれを拒絶します。
そして、アンナは冤罪で死刑となります

遠くから「新しい王妃の誕生の祝砲」が聞こえる中、アンナが息絶えてオペラが終わります。

第1幕:『アンナ・ボレーナ』のあらすじ

王妃アンナが「王が冷たい」ことを嘆いている

ウィンザー城 王妃の居室
家臣らが「エンリーコ王は愛人ができて、王妃に冷たくなった。」と噂をしています。

現れた王妃アンナは「王が冷たい」ことに嘆き、気を紛らわすために、スメトン(王妃の楽士)に歌を歌ってもらいます。
しかし、反対にアンナは悲しい王妃の立場に打ちひしがれ、「初恋の人(ペルシー)」を思い出してしまいます。(Come, innocente giovane)

「Come, innocente giovane」

アンナは苦しい心持ちで「国王に誘惑されても、希望を持ってはいけない。」とジョヴァンナ(アンナの女官)に語ります。

やがてアンナは眠りに就くために、去っていきます。

 アンナは「王とジョヴァンナの愛人関係」には気づいていません。

エンリーコ王は、ジョヴァンナと結婚したい

一人になったジョヴァンナのもとに、エンリーコ王が現れます。
王はジョヴァンナと結婚を望んでいますが、ジョヴァンナは後ろめたさを感じています。

ジョヴァンナは王の愛を断りますが、王は「結婚前からアンナは私を裏切っていた。あいつを罰してでもお前と結婚する。」と告げます。

ペルシーはアンナを忘れられずにいる

ウィンザー城の庭園
ペルシー(アンナの初恋の人)が、追放の刑が許され戻ってきます。
ペルシーはロシュフォール(アンナの兄)との再会を喜び、「アンナと別れたが、まだ愛している」ことを告白します。(Da quel dì che, lei perduta)

「Da quel dì che, lei perduta」

 エンリーコ王は「アンナを罠にかける」ために、ペルシーの罪を許しました。

王が「アンナとペルシーの監視」を部下に命じる

そこにエンリーコ王の一行が通ります。
王は「アンナの計らいで、お前の罪が許された。」とペルシーに嘘をつき、罠を仕掛けます。

ペルシーは感激し、そこにいたアンナの手にキスをします。

アンナが取り乱す様子を見て、王は「二人がまだ愛し合っている」と感づきます。
王は「二人の監視」をエルヴェイ(王の部下)に命じます。

アンナは「ペルシーの愛」を拒絶する

アンナの居間へ続く控えの間
スメトン(王妃の楽士)が以前盗んだ「アンナの肖像画」を戻そうとしています。
そこにアンナペルシーが現れるので、スメトンは物陰に隠れます。

 スメトンは密かにアンナを愛しています。

ペルシーは変わらぬ愛を打ち明けますが、王妃であるアンナはそれを拒絶します。
絶望したペルシーが剣で自害しようとしたとき、とっさにスメトンが止めに入ります。

王によって「アンナ、ペルシー、スメトン」が逮捕される

その様子を監視していたエルヴェイ(王の部下)によって、続いて王が現れます。

アンナの弁明も聞き入れられず、王は3人(アンナ、ペルシー、スメトン)を逮捕します

第2幕:『アンナ・ボレーナ』のあらすじ

ジョヴァンナが「自分が王の愛人」であることを、アンナに告白する

アンナが捕らわれた部屋に続く控えの間
女官たちがアンナを慰めています。
やがてアンナが一人になると、そこにジョヴァンナ(アンナの女官、王の愛人)が現れます。

ジョヴァンナはアンナに「罪を認めて離婚すれば、命は助かる」という王の伝言を伝えます。
アンナは「名誉を捨ててまで、命は買えない」と拒絶し、まだ知らぬ愛人に怒りをぶつけます。

これを聞いたジョヴァンナは、ついに贖罪の念から「自分が王の愛人である」ことを告白します。
アンナは裏切りに怒りますが、やがて「悪いのは王のほうだ」とジョヴァンナを許します。

アンナが冤罪で「死刑」となる

裁判の間に続くの控えの間
王の策略によって、スメトンが「アンナが不倫をした」と嘘の証言をしてしまいます。
アンナもペルシーも潔白を訴えますが、王は聞き入れません。

 スメトンは「アンナを救うため」とそそのかされました。

ジョヴァンナ(アンナの女官、王の愛人)もアンナの許しを懇願しますが(Per questa fiamma indomita)、王は一歩も引きません。
ついに、アンナたち(ペルシー、ロシュフォール)は死刑となってしまいます

「Per questa fiamma indomita」

アンナが息絶える

ロンドン塔の牢獄
ペルシーとロシュフォールに「死刑の取消」が言い渡されます。
しかし「アンナの死刑」は覆らないことを知り、2人は死刑を選びます。

一方、アンナは過去の幻影をみながら狂乱状態に陥っています。(Piangete voi...Al dolce guidami)

「Piangete voi...Al dolce guidami」

ロシュフォール、ペルシー、スメトンも連行されてくる中、遠くから大砲の音が聞こえます。
正気に戻ったアンナは、それが「王とジョヴァンナの結婚の祝砲」だと知ります。

最後に、アンナが「非道な夫婦よ!私は慈悲深い神のために、復讐はしない」(Coppia Iniqua)と歌い息絶えてオペラが終わります。

「Coppia Iniqua」

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