項目データ
初演1791年9月30日 アン・デア・ウィーン劇場
原作クリストフ・マルティン・ヴィーラントの童話劇集『ジンニスタン』の『ルル、または魔笛』など
台本エマヌエル・シカネーダー
演奏時間2時間40分

『魔笛(Die Zauberflöte)』は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart/1756年-1791年)が作曲した生涯最後のオペラです。

当時興行主のエマヌエル・シカネーダーは、仕事がなく困っていました。
そこで、自身が台本を書き、同じフリーメイソン会員で友人でもあるモーツァルトに作曲を依頼して出来たオペラが『魔笛』です。
シカネーダーは俳優、歌手、演出家と何でもこなし、自身もパパゲーノを演じました。

初演はシカネーダーが設立したアン・デア・ウィーン劇場でおこなわれました。
すぐに『魔笛』は人気を博し、モーツァルトの生前までで100回以上の公演がうたれたと言われています。

一般市民を対象とした一座でしたので、物語はわかりやすい「お伽噺」になっており、曲と曲の間はセリフが挟まれます。
しかし一方で、物語はフリーメイソンとの深い繋がりも感じさせます。

ここでは、モーツァルトのオペラ『魔笛』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

人物名備考
ザラストロ(バス)神殿に仕える大祭司
タミーノ(テノール)王子、パミーナに一目惚れする
夜の女王(ソプラノ)
パミーナ(ソプラノ)夜の女王の娘
パパゲーノ(バリトン)鳥刺し
パパゲーナ(ソプラノ)最後にパパゲーノの妻となる
[その他の人物] モノスタトス/3人の侍女/弁者/3人の童子 など

『魔笛』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
王子タミーノは森の中に迷いこみます。
「パミーナの肖像画」を見たタミーノは、彼女に一目惚れをします。
タミーノは森で出会ったパパゲーノを従えて、捕らわれたパミーナを救出に向かいます。
試練を乗り越えたタミーノは、最後にパミーナと結ばれます。

第1幕:『魔笛』のあらすじ

第1番:Introduktion

侍女が大蛇を倒し、王子タミーノを助ける

岩山

王子タミーノが大蛇に追いかけられています。
タミーノは気を失って倒れます。

その間に、"夜の女王に仕える"3人の侍女が大蛇を倒します。
彼女たちは、夜の女王のもとに報告に行きます。

第2番:パパゲーノのアリア

パパゲーノが「おれが大蛇を倒した」と嘘をつき、口に鍵をかけられる

パパゲーノが『鳥を捕まえるのが、おれの商売』と愉快に歌いながら登場します。(Der Vogelfänger bin ich ja)

目を覚ましたタミーノが「大蛇を倒したのは君か?」と尋ねます。
パパゲーノは「素手で倒した。」と答え、手柄を横取りします。

「Der Vogelfänger bin ich ja」

すると3人の侍女が戻って来て、嘘をついたパパゲーノの口に鍵をかけます。
3人の侍女はタミーノに「大蛇を倒したのは私たちです。」と告げ、夜の女王の娘パミーナの肖像画を見せます。

第3番:タミーノのアリア

タミーノがパミーナ(肖像画)に一目惚れする

タミーノは肖像画を一目見て、その美しさに心を動かされます。(Dies Bildnis ist bezaubernd schön)

「Dies Bildnis ist bezaubernd schön」

3人の侍女はタミーノに、
「悪魔(ザラストロ)が夜の女王様の娘(パミーナ)をさらっていきました。」
「どうか助けて下さい。」
と頼みます。

タミーノはパミーナを救うことを決意します。

第4番:夜の女王のアリア

夜の女王が、タミーノに「パミーナを助けてください。」と頼む

雷鳴と共に、夜の女王が現れ、
「私の娘が連れ去られ、私の幸せは消えました。」
「あなたこそが娘を助けられる人です。」
とタミーノに歌います。(O zittre nicht, mein lieber Sohn)

「O zittre nicht, mein lieber Sohn」

歌い終わると、夜の女王は舞台から去ります。

第5番:五重唱

タミーノたちがパミーナ救出に向かう。

タミーノ、パパゲーノ、3人の侍女

侍女が「女王様からのお許しが出た。」とパパゲーノの口の鍵を外してあげ、タミーノのお供を命じます。
ようやくパパゲーノは話せるようになります。

そしてタミーノは「魔法の笛」を、パパゲーノが「銀の鈴」を御守りとして受け取り、ザラストロのもとへ向かいます。

第6番:三重唱

モノスタトス、パミーナ、パパゲーノ

パミーナが捕らわれており、奴隷頭の黒人モノスタトスがパミーナを口説いています。

そこにパパゲーノが現れ、二人は鉢合わせします。
お互いが見たことのない人種なので、お互いに「おばけだ!」と恐がり逃げ去ります。

第7番:二重唱

パミーナは「タミーノが救けに来ている」ことを聞かされ、愛を喜ぶ

パパゲーノ、パミーナ

パパゲーノはパミーナのもとに戻ってきます。

そして夜の女王の娘だと確認し、
「王子タミーノがあなたを愛していて、助けに向かっているところだ。」
と伝えます。

パミーナは喜び、パパゲーノと
「男も女も、愛の喜びを知り、愛に生きる」
と二重唱を歌います。

第8番:フィナーレ

タミーノとパミーナはお互い惹かれ合い、試練の神殿へと進む

タミーノのアリア

王子タミーノがザラストロのもとに到着します。

タミーノが「魔法の笛」を吹くと、パパゲーノの笛が返ってきます。
"パパゲーノとパミーナが一緒にいる"ことを確信したタミーノは、彼らのもとへ向かいます。

一方パパゲーノとパミーナは、逃げるところをモノスタトスに捕まってしまいます。
しかし、「銀の鈴」を鳴らすと、モノスタトスたちは突然踊り出し去っていきます。

ザラストロ

ザラストロが、従者の行列と共に城に帰ってきます。
パミーナは、逃げようとしたことをザラストロに詫びます。

そこにモノスタトスが、タミーノを捕え入ってきます。
初めて出会ったタミーノとパミーナは、一目で恋に落ちます。

ザラストロは「この二人を試練の神殿に連れていけ」と命じます。
皆がザラストロを称える中で、幕が下ります。

第2幕:『魔笛』のあらすじ

第9番:神官たちの行進

タミーノが「試練を受ける資格がある」と認められる

ザラストロが、神官たちと厳かに登場します。
彼らは「タミーノは徳を備えており、沈黙も守り、慈悲の心もある」と会話し、試練を受ける資格があることを確認します。

第10番:ザラストロのアリア

ザラストロは、
「神々は、タミーノとパミーナが結婚することを定めた。」
「私がパミーナをあの高慢な母親から離したのも、神々が定めたことだ。」
「タミーノは我々と神殿を守り、神に仕えなければならない。」
と語ります。

そして「イジス、オジリスの神よ、若い二人を助けてあげて下さい。」と歌います。(O Isis und Osiris)

「O Isis und Osiris」

第11番:二重唱

タミーノとパパゲーノに試練が与えられる

タミーノとパパゲーノに試練が与えられます。
しかしタミーノは心構えが既にできている一方で、パパゲーノは試練について未だ理解できていません。

しかし、僧侶がパパゲーノに
「試練に耐えることが出来れば、お前にパパゲーナという若くて美しい娘を用意しよう。」
と語ると、パパゲーノは喜び、試練を受けることにようやく同意します。

弁者と第二の神官の二重唱

弁者と第二の神官は、二人に「女の悪だくみから身を守りなさい。」と語り去っていきます。

第12番:五重唱

「沈黙の試練」が始まる

3人の侍女が「沈黙の試練」を破ろうと、タミーノとパパゲーノに話しかけます。
タミーノが沈黙を守る一方、パパゲーノはペラペラと話してしまいます。

しかしパパゲーノも次第に沈黙を守るようになり、3人の侍女は雷鳴と共に奈落に落ちていきます。

二人は、さらなる試練へと向かいます。

第13番:モノスタトスのアリア

夜の庭

モノスタトスがそっとパミーナに近づき、「おれも生身の人間だ。恋もキスもしたい。」と歌います。
(Alles fühlt der Liebe Freuden)

第14番:夜の女王のアリア

夜の女王が、パミーナに「ザラストロの死」を命じる

そこに雷鳴と共に夜の女王が現れ、モノスタトスを追い払います。
夜の女王は、パミーナに短剣を渡し、「この短剣でザラストロを殺しなさい。」と命じます。

そして、「ザラストロに死を与えなければ、親子の縁を切る!」と歌いあげます。(Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen)

「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」

第15番:ザラストロのアリア

悩みこむパミーナを、ザラストロがさとす

パミーナは思い悩み、ザラストロに「母にご慈悲を。」と相談します。

ザラストロは、
「この聖なる地に住む者は復讐心は持っていない。」
「ここでは人々は愛し合い、裏切り者はいない。」
「我々は敵を許すのだ。」
と歌います。(In diesen heil'gen Hallen)

「In diesen heil'gen Hallen」

第16番:三重唱

「試練」の続き

タミーノとパパゲーノは試練を続けています。
そこに老婆が現れ、「私の彼氏はパパゲーノだよ。」と言い、去っていきます。

3人の童子の三重唱

続いて3人の童子が現れ、ザラストロが預かっていた「魔法の笛」と「銀の鈴」を二人に返します。

第17番:パミーナのアリア

「沈黙を続けるタミーノ」をみて、パミーナが嘆き悲しむ

タミーノが笛を吹くと、パミーナが現れます。
しかし、沈黙の試練を受けているタミーノとパパゲーノは話しかけることができません。

パミーナは「愛の幸せは永遠に消えてしまった。」と嘆き悲しみ、立ち去ります。(Ach, ich fühl's, es ist verschwunden)

「Ach, ich fühl's, es ist verschwunden」

第18番:神官たちの合唱

タミーノはパパゲーノを力ずくで引っ張り、次の試練に向かいます。
神官たちは「彼は我々の仲間にふさわしい人間になるでしょう。」と歌います。

第19番:三重唱

タミーノが試練を乗り越える

ザラストロは「タミーノが試練を乗り越えた。」ことを喜びます。
そしてパミーナを呼んで、「タミーノが最後のお別れを言いに待っている。」と告げます。

ザラストロ、タミーノ、パミーナ

三人は「いずれ会うときまで、神様がお守り下さるだろう。」と歌い、別れを告げます。

第20番:パパゲーノのアリア

パパゲーノの前に老婆(パパゲーナ)が現れ、去っていく

パパゲーノは、タミーノに置いていかれています。
そしてタミーノを追いかけているときに、弁者と出会います。

弁者に1杯のワインをもらうと、パパゲーノは気分が良くなり「おれが欲しいのは女房だけさ」と歌います。
(Ein Mädchen oder Weibchen wünscht Papageno sich!)

そこに老婆が現れ、パパゲーノは無理やり結婚の誓いをさせられます。

すると老婆は"若くて美しいパパゲーナ"に姿を変えます。
しかし、弁者によって二人はすぐに引き離されてしまいます。

第21番:フィナーレ

タミーノとパミーナが、二人で「最後の試練」を乗り越える

パミーナと3人の童子

パミーナが絶望し自殺をはかろうとしているところに、3人の童子が止めに入ります。
そして「タミーノはあなたを愛している。」と伝えます。

タミーノとパミーナ

タミーノは「パミーナと再会し、話すこと」が許されます。
そして最後に火の試練、水の試練が与えられます。

タミーノとパミーナは再会し、二人で試練を乗り越えます。

パパゲーノとパパゲーナが結ばれる

パパゲーノとパパゲーナ

パパゲーナのもとに再びパパゲーナが現れます。
二人は抱き合って喜び、愛を誓います。

夜の女王が地獄へ落ちる

夜の女王がザラストロたちに最後の復讐をしに、モノスタトスと共に現れます。
しかし、雷鳴と共に地獄に落ちてしまいます。

皆がイジスとオジリスの神を称える中で、オペラが終わります。

モーツァルト『魔笛』の映像

『フィガロの結婚』『魔笛』『ドン・ジョヴァンニ』

「日本語字幕ナシ」でもよければ、とてもお得な値段でモーツァルトのオペラのブルーレイボックスが出ています。
いずれもコヴェント・ガーデン王立歌劇場のもので、『フィガロの結婚』『魔笛』『ドン・ジョヴァンニ』が収録されています。
もちろん値段がおとくなだけではなく、演奏も素晴らしいです。
当時話題をさらった「ダムラウの夜の女王」は必聴です。

限定生産のボックスセットのようですので、再生産を待つか、完売前に手に入れたいところです。

キャスト等
タミーノ:ヴィル・ハルトマン
パミーナ:ドロテア・レシュマン
夜の女王:ディアナ・ダムラウ
ザラストロ:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ
パパゲーノ:サイモン・キーンリーサイド
パパゲーナ:アイリッシュ・タイナン
モノスタトス:エイドリアン・トンプソン

コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:サー・コリン・デイヴィス
演出:デイヴィッド・マクヴィカー

収録:2003年1月27日ロンドン、コヴェント・ガーデン王立歌劇場(ライヴ)

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