項目データ
作曲年1791年
演奏時間30分

クラリネット協奏曲イ長調(K.622)はモーツァルトが最後に作曲した協奏曲であり、唯一のクラリネットのための協奏曲です。
日本では誰もが知っている曲ではありませんが、イギリスでは2006年に英国クラシックFMでモーツァルトの人気曲第1位になった曲でもあります。
音楽ファンの中には、この曲をモーツァルトの最高傑作と言う人もいます。

モーツァルトの最後の未完の作品である「レクイエム」はK.626ですので、「クラリネット協奏曲イ長調(K.622)」まさに最晩年の作品です。
作品目録への書き込みから考えると、モーツァルトはクラリネット協奏曲を作曲しているときには既に体調を崩していたかもしれません。

ここではモーツァルトのクラリネット協奏曲の解説と名盤を紹介したいと思います。

モーツァルト「クラリネット協奏曲」の演奏

[00:03]第1楽章:アレグロ イ長調 4分の4拍子、ソナタ形式
[12:05]第2楽章:アダージョ ニ長調 4分の3拍子、三部形式
[19:08]第3楽章:ロンド(アレグロ) イ長調 8分の6拍子、ロンド形式

シャロン・カム(Sharon Kam)
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:マンフレート・ホーネック(Manfred Honeck,1958年- )

モーツァルト「クラリネット協奏曲」の解説

モーツァルトのクラリネット協奏曲は、友人でフリーメイソンでもあったアントン・シュタードラーのために1791年に作曲されました。
自筆譜は見つかっておらず、初演も不明の作品です。
シュタードラーはウィーン宮廷楽団でクラリネットを演奏しており、この曲とクラリネット五重奏曲はシュタードラーに触発されて作曲された言われています。
シュタードラーは「ウイーンで最初のクラリネット名演奏家」と呼ばれており、クラリネットとバセットホルンの名手でした。

名演奏家と名作曲家のタッグ

この当時メジャーな楽器ではなかったクラリネットの魅力を十分に引き出せたのは、まさにモーツァルトだからなせた業でしょう。
また名演奏家であるシュタードラーが存在したからこそ作曲できた曲でもあります。
名演奏家と名作曲家の両方がいたからこそ生まれた曲なのです。

またシュタードラーは借金があり女遊びも盛んで、愛人と暮らすために妻と別居していたそうです。
もしかするとモーツァルトと性格的にも相性が良かったのかもしれません。

元々はバセットクラリネット用のための曲

この曲の第1楽章はモーツァルトが作曲した「G管バセットホルンのための協奏曲」を下敷きにしたもので、「G管バセットホルンのための協奏曲」もシュタードラーのために作曲されたとされたものです。
バセットホルンとはクラリネットより低音域が充実している楽器で、シュタードラーはクラリネットよりバセットホルンを好んだと言われています。

そのためクラリネット協奏曲も、元々はクラリネットではなくシュタードラーの愛した低音を活かせるバセットクラリネット用に書かれた曲でした。
それが1801年の出版では、普通のクラリネットでも演奏できるよう何者かによって編曲されました。
誰が編曲したのかは、現在のところわかっていません。

バセットクラリネットとは、バセットホルンと同じ音域を演奏できるクラリネットのことで、シュタードラーが依頼してオリジナルで作った「シュタードラーだけが持っている専用楽器」でした。
バセットクラリネットを演奏できたのはシュタードラーだけでしたので、出版時にクラリネット用に編曲されたことは不思議ではありません。

 現在では当時の編曲譜を元に復元版が作られており、復元されたシュタードラーのバセットクラリネットで演奏される機会もあります。

モーツァルト「クラリネット協奏曲」の名盤

巨匠ベームとウィーン・フィルの名演で、何度聞いても飽きの来ない落ち着いた音楽に仕上がっています。
美しいウィーン・フィルの音色に引き込まれること間違いなしの1枚だと思います。

モーツァルトのクラリネット協奏曲の1枚目として購入される「クラシック初心者」の方にもオススメです。
ハイ・ビット・リマスタリングにより、音質も以前の版に比べてより高音質になっています。

カール・ベーム(Karl Böhm/1894年8月28日-1981年8月14日)
オーストリアの指揮者で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団名誉指揮者
1931年:ハンブルク国立歌劇場音楽監督に就任
1934年:ドレスデン国立歌劇場総監督に就任
1943年:ウィーン国立歌劇場総監督に就任
1964年:オーストリア音楽総監督の称号を授けられる

その他の録音

アバド&モーツァルト管弦楽団

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クラリネットはローマ聖チェチーリア管の首席奏者アレッサンドロ・カルボナーレで、2006年にボローニャのマンゾーニ劇場で録音されたものです。
モーツァルトの「ファゴット協奏曲」「フルート協奏曲第2番」も収録されています。

クラウディオ・アバド(Claudio Abbado/1933年6月26日-2014年1月20日)
イタリア、ミラノ出身の指揮者
1972年:ミラノ・スカラ座音楽監督に就任(1977年には芸術監督に)
1983年:ロンドン交響楽団音楽監督に就任
1986年:ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任
1990年:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督に就任

モーツァルト管弦楽団(Orchestra Mozart)
2004年にクラウディオ・アバドにより設立。
団員は18歳から26歳の若手演奏家で構成されている。

ザビーネ・マイヤーのクラリネット協奏曲集

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ザビーネ・マイヤーが1985年から1995年の10年間にセッション・レコーディングしたもので、5枚組のお買い得なクラリネット協奏曲集です。
モーツァルト、ヴェーバー、シュターミッツ、クロンマー、ロッシーニと多岐にわたる作曲家のクラリネット協奏曲が堪能できます。

ザビーネ・マイヤー(Sabine Meyer/1959年3月30日-)
ドイツのクラリネット奏者
1979年:バイエルン放送交響楽団に入団
1981年:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席クラリネット奏者の候補に入る
楽員の投票で仮採用が否決される
採用に至らなかったことが反対に彼女を有名にし、その後世界的に評価を上げて活躍するようになる。

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