清教徒I Puritani
初演1835年1月25日 イタリア座(パリ)
原作戯曲『議会党派と王党派』
台本カルロ・ペーポリ
演奏時間2時間30分

『清教徒(I Puritani)』は、ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(Vincenzo Bellini/1801年-1835年)によって作曲された最後のオペラです。
初演を大成功し飛ぶ鳥を落とす勢いのベッリーニでしたが、『清教徒』初演のわずか8か月後に病により亡くなりました。

 『清教徒』はベッリーニを代表するオペラであると同時に、歌手にとって演奏の難しいオペラとしても知られています。
エルヴィラ(sop)やアルトゥーロ(Tn)には、歌手として高度な技術が求められます。

ここではベッリーニのオペラ『清教徒(I Puritani)』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
エルヴィラ(ソプラノ)ヴァルトンの娘
アルトゥーロ(テノール)スチュアート王家につかえる騎士、エルヴィラの婚約者
ヴァルトン(バス)城主で清教徒軍の首領、エルヴィラの父
ジョルジョ(バス)ヴァルトンの弟、退役大佐
リッカルド(バリトン)大佐、アルトゥーロの恋敵、清教徒
ブルーノ(テノール)士官、リッカルドの親友、清教徒
エンリケッタ(メゾソプラノ)国王チャールズ1世の王妃

『清教徒』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

17世紀のイングランド:清教徒革命の最中
議会派(清教徒)と王党派が対立しています。

第1幕

エルヴィラ(議会派の娘)とアルトゥーロ(王党派)は互いに愛し合い、婚約関係にありました。
しかしアルトゥーロは二人の結婚が祝われる中で、王妃エンリケッタ(議会派によって幽閉されている)を救うことを決意します。

アルトゥーロは王妃を救出し、逃亡します。
一方、エルヴィラは「アルトゥーロが別の女性と駆け落ちした」と勘違いし、正気を失います。

第2,3幕

やがて二人の誤解は解け再会を喜びますが、アルトゥーロが議会派に捕まり死刑となります。
しかし死刑に処せられる直前に、「議会派が王党派に勝利した」という知らせが入ってきます。

戦いが終わり、罪人は解放されることとなり、アルトゥーロも解放されます。
最後に二人は無事結ばれ、ハッピーエンドでオペラは終わります。

第1幕:『清教徒』のあらすじ

リッカルドが婚約を解消され、愛に燃えている

ヴァルトンの城の外:エルヴィラの結婚式当日

兵士たちが夜明けを歌い、住民たちはエルヴィラの結婚を祝っています。
そんな中、リッカルドはエルヴィラを失い悲しみに暮れています。(Ah, per sempre io ti perdei)

「Ah, per sempre io ti perdei」

 リッカルドは、ヴァルトン(エルヴィラの父)から結婚の承諾を得ていました。
しかし戦場から戻ってくると、その話はおじゃんになっていました。
代わりにアルトゥーロがエルヴィラの婚約者となっています。

ブルーノ(リッカルドの親友)は「愛を忘れて、祖国と名誉を思い起こせ!」とリッカルドを諭します。
しかし、リッカルドは「私の情熱は、恋と怒りに燃えている」と語り、去っていきます。

エルヴィラがアルトゥーロとの婚約を喜ぶ

エルヴィラの部屋
エルヴィラは自分の結婚相手が誰だかわからず苦しんでいます。
そこに、ジョルジョ(叔父)が現れ「エルヴィラの結婚相手はアルトゥーロだ。」と告げます。
アルトゥーロを愛しているエルヴィラは、それに歓喜します。

 議会派のヴァルトン(エルヴィラの父)は、王党派のアルトゥーロとの結婚を反対していました。
議会派と王党派は戦いの最中です。
しかし、ジョルジョの説得により婚約が成立しました。

間もなくして兵士たちが称える中、アルトゥーロが到着します。

王党派のアルトゥーロが、王妃エンリケッタを救うために脱走する

城内
皆が二人の結婚を祝っています。
そしてアルトゥーロがエルヴィラへの愛を華やかに歌い上げます。(A te, o cara)

「A te, o cara」

そこに、幽閉されているエンリケッタ(国王チャールズ1世の王妃)が登場します。
そして彼女がイギリス最高議会に呼ばれ、処刑される身になることがわかります。
王党派のアルトゥーロは、エンリケッタを救うことを決意します。

 この時代のイギリスは、議会派(清教徒)と王党派で対立していました。
ヴァルトン(エルヴィラの父)は議会派で、アルトゥーロが王党派です。

続いてアルトゥーロとエンリケッタの前に、エルヴィラが花嫁衣裳を身にまとい登場します。
結婚に喜ぶエルヴィラは、自らのヴェールをエンリケッタに被せ去っていきます。

アルトゥーロはそれを利用し、ヴェールを被せたままエンリケッタと脱走を試みます。

エルヴィラが「アルトゥーロに裏切られた」と勘違いし、正気を失う

脱走しようとした二人は、リッカルドに見つかります。
リッカルドは、「ヴェールを被っているのがエンリケッタだ」とわかると、二人を逃がします。

 リッカルドはエルヴィラを愛しているので、これを利用しようとしています。

リッカルドは事の次第をエルヴィラに伝えます。
エルヴィラは「アルトゥーロに裏切られた」と勘違いし、錯乱します。

第2幕:『清教徒』のあらすじ

逃亡中のアルトゥーロに死刑が宣告される

城内
皆がエルヴィラを心配する中、ジョルジョ(エルヴィラの叔父)が彼女の錯乱した様子を語ります。(Cinta di fiori)
そこにリッカルドが登場し、「議会がアルトゥーロの死刑を決定した」ことを告げます。

やがて錯乱したエルヴィラが現れ、「私に死を与えてください。」と歌います。(Qui la voce sua soave)
エルヴィラは完全に正気を失い、見る影もありません。

「Qui la voce sua soave」

ジョルジョはリッカルドに「エルヴィラが錯乱したのはお前のせいだ!」と非難します。
二人は対立しますが、最後には「明日の王党派との戦い」のために心を合わせます。

第3幕:『清教徒』のあらすじ

誤解が解け、エルヴィラが正気を取り戻す

城の外
アルトゥーロが追跡を振り切り、エルヴィラに会うために城のそばに現れます。
そして錯乱状態のエルヴィラと再会します。

アルトゥーロが事の経緯を話すと、誤解が解けエルヴィラは正気に戻ります
二人は再会を喜び、愛を語りあいます。

アルトゥーロが捕えられる

しかし、そこにリッカルドの軍が現れ、アルトゥーロは捕らわれてしまいます。
アルトゥーロは死刑を言い渡され、エルヴィラは再び錯乱します。

アルトゥーロが解放され、ハッピーエンドで終わる

アルトゥーロが死刑に処せられる直前に、吉報が入ります。
それは「議会派(清教徒)が王党派に勝利した」という知らせでした。

戦いが終わったことで、罪人も解放されることとなります。
アルトゥーロは無事解放され、エルヴィラは再び正気に戻ります。

最後に二人の愛は報われ、ハッピーエンドでオペラは終わります。

ベッリーニ『清教徒』の映像

2009年1月ボローニャ市立劇場でのライヴ映像です。
フローレスの歌うアルトゥーロ役は必聴で、ベルカントオペラの神髄を堪能できます。
『清教徒』の映像作品では外すことのできない名盤の一つです。

フアン・ディエゴ・フローレス(アルトゥーロ)
ニノ・マチャイゼ(エルヴィラ)
イルデブランド・ダルカンジェロ(ジョルジョ)
ウーゴ・グアリアルド (ヴァルトン)
ガブリエレ・ヴィヴィアーニ(リッカルド)
ジャンルーカ・フローリス(ブルーノ)
ナディア・ピラッツィーニ(エンリケッタ)

ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団
指揮:ミケーレ・マリオッティ

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