オペラはヴェネツィアからナポリへ
オペラはヴェネツィアで栄えましたが17世紀後半から18世紀初めにかけて、オペラの活動の中心はヴェネツィアからナポリへ移りました。
ナポリ派の創始者の1人としてプロヴェンツァーレが挙げられます。
ナポリ派のオペラの特徴は旋律を重要視したことです。
音楽の対比性も明確に見られます。
ナポリ派の中でも、スカルラッティの音楽は初期バロックのイタリアの声楽様式とモーツァルトを代表とする古典楽派との間の重要な橋渡しとしての役割を果たしました。
このナポリ派で時代は後期バロック音楽へと変わっていきます。
スカルラッティ
ナポリ派の音楽を大成したのがアレッサンドロ・スカルラッティ(Alessandro Scarlatti,1660年-1725年)です。
スカルラッティによりナポリ派のオペラは完全にヴェネツィアからの影響から抜けることになります。
スカルラッティは115曲のオペラと700曲以上のカンタータ、200曲のミサを作曲しました。
その中でも最も重要なものにオペラが挙げられます。
ナポリ派のオペラは劇的なものではありませんが、とても旋律的でした。
スカルラッティはこれまでのグラウンド・バスと二部形式によるアリアを用いず、ダ・カーポ・アリアと呼ばれる歌唱形式を用いました。
また急ー緩ー急の三部形式であるイタリア式序曲の器楽形式も確立しました。
この序曲はいずれ交響曲へと繋がっていきます。
このようにオペラが形式的にも整えられていきました。
1694年に作られた「ピロとデメトリオ(Pirro e Demetrio)」の劇中のアリア「すみれ(Le Violette)」は現在でも歌われる有名な曲ですね。
Luciano Pavarotti. Le Violette. A. Scarlatti.
スカルラッティはこの他にも伴奏付きレチタティーヴォを用いました。
こやは従来のレチタティーヴォに比べてとても豊かな伴奏を加えたもので、後の声楽の発展に大きく貢献しました。
ダ・カーポ・アリア
ナポリ派の音楽の中でもダ・カーポ・アリアは特に重要です。
ABAの三部形式で演奏され、2度目のAは最初のAを繰り返しました。
このオペラのアリアの形の基礎を作り、イタリア歌劇の伝統として受け継がれていきます。
アリアにはコロラトゥーラがよく使用され、カストラートやプリマ・ドンナが人気をはくすようになります。
また当時のカストラートのほとんどはナポリで訓練を受けていました。
ナポリ派は劇的な要素よりも旋律の美しさを優先するようになったのです。
そしてアリアは次第に歌手の名人芸を披露する場となってしまい、劇的な要素が損なわれ「歌を聴くだけのシーン」となってしまいました。