ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky/1840年~1893年)の「ピアノ協奏曲第1番」は、1874年11月から1875年2月にかけて作曲された彼が34歳ごろの作品です。
チャイコフスキーにとっての出世作となった作品でもあります。

この「ピアノ協奏曲第1番」というタイトルは知らずとも、誰もが冒頭の音楽は聴いたことがあると思います。
とても人気の高い作品で、オーケストラにとっては「チケットが売れやすい」作品でもあります。
その特徴は何といっても一聴してわかる「派手さと豪華さ」です。
そのためテレビやCMなどでもよく使われています。

Tchaikovsky

ただ、この「冒頭の余りに有名な部分」はその後二度と登場しません。
この冒頭部分が過ぎ去ってしまうと、クラシックファン以外の方には馴染みのない音楽へと一気に変貌します。
ここではチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」の解説と名盤を紹介したいと思います。

友人に否定されてしまった作品

チャイコフスキーにはピアニストであり友人でもあるニコライ・ルビンシテインという人物がいました。
ルビンシテインはチャイコフスキーが働いていたモスクワ音楽院の院長も務めていましたので、職場の仲間でもありました。
チャイコフスキーはルビンシテインをソリストと想定し、彼に献呈するために曲を書き始めます。
そして草稿の段階でこの作品をルビンシテインに見せるのですが、なんとチャイコフスキーは彼にこの作品を酷評されてしまいます。

初演の大成功→友人からの評価

しかしチャイコフスキーは作曲をやめることはありませんでした。
初演は1875年にソリストにハンス・フォン・ビューローを迎えてアメリカのボストンでおこなわれ大成功に終わりました。

作品が認められると、作品を酷評していた友人のルビンシテインもこの作品を演奏するようになります。
モスクワでの初演ではルビンシテインは指揮者としてステージに立っています。
初めは交わらなかった二人ですが、最終的にはルビンシテインもこの作品を好きになってくれたそうで、この曲を広めるのに一役買ってくれました。

2楽章、3楽章も美しい

冒頭部分が有名なこの曲ですが、当然ですが人気が示す通りその後の音楽も聴きどころが満載です。

第2楽章の主題の1つにはシャンソンのメロディが使われています。
これはチャイコフスキーが恋していたベルギー人の歌手であるデジーレ・アルトーが歌っていた曲をモチーフとしているそうです。
また第3楽章の主題はロシアの匂いを感じさせてくれますし、流れてくるメロディもとても美しく聴いていてうっとりとしてきます。

曲の構成

全体を通して35分程度の作品で、3楽章で構成されています。

第1楽章 Allegro non troppo e molto maestoso - Allegro con spirito、変ロ短調→変ロ長調

第1楽章はこの作品で最も演奏時間が長く、作品全体の3分の2近くを占めています。

ホルンから始まる壮大な序奏はとても印象的で、その後ピアノとオーケストラも加わり4分程度演奏されます。
この余りにも有名な序奏ですがその後二度と登場することはなく、この協奏曲全体を通して特別な役割を果たしています。

しばらくすると第1主題が流れ、これはウクライナで聴いた民謡をイメージしたと言われており、リズムが印象的です。
続いてクラリネットが情感あふれた第2主題を奏で、第3主題へと移っていきます。
ピアノの優美な装飾を経て、第1楽章はクライマックスへと向かっていきます。

壮大なカデンツァが演奏された後に、オーケストラが第3主題を演奏し第1楽章の幕は閉じていきます。

第2楽章 Andantino semplice - Prestissimo - Quasi Andante、変ニ長調→ヘ長調→変ニ長調

フルートによる美しいメロディではじまり、これを弦楽器の優しいピッツィカートが支えます。
そこにピアノが加わり、音楽はより暖かみを増し、さらにはチェロ、オーボエがそれを引き継ぎます。
フランスのシャンソンを思い起こさせるワルツ風の中間部を経て、暖かな第2楽章冒頭の音楽に戻ったのちに楽章を静かに終えます。

第3楽章 Allegro con fuoco、変ロ短調→変ロ長調

ウクライナ民謡による農民の春の喜びを表現した第1主題と、美しく穏やかなメロディが印象的な第2主題が登場します。
壮大な盛り上がりをみせた後は、華やかな音楽が最後まで続き絶頂の中作品は終わります。

チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」の名盤

炎のようなピアニスト、アルゲリッチのチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」です。
この作品は彼女自身が得意としている作品であり、この他にも録音を残しています。
この録音はアバド指揮でベルリン・フイルの演奏によるものです。

マルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich/1941年6月5日-)
アルゼンチンのブエノスアイレス出身のピアニスト
1957年:ブゾーニ国際コンクール、ジュネーヴ国際コンクールで優勝
1965年:ショパン国際コンクールを満場一致で優勝、マズルカ賞
日本にも度々訪れ、大分県別府市の音楽祭の音楽監督も務めている

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