交響曲第41番ハ長調 K.551 は、モーツァルトが作曲した最後の交響曲で、1788年に書かれました。

「ジュピター」とも呼ばれますが、これは正式名ではなく愛称です。
由来はローマ神話の最高神「ユピテル」(ギリシャ神話の最高神「ゼウス」)からきています。
ヨハン・ペーター・ザロモン (1745~1815)という人物が「ジュピター」と名付け、1820年頃にイギリスで定着し、その後現在のように親しまれるようになりました。
余談ですが、ザロモンはドイツ人のヴァイオリニスト・興行師でイギリスで活躍し、晩年のハイドンをロンドンに呼んだことでも知られています。

また「交響曲第41番(ジュピター)」は同じ1788年に作曲された交響曲第39番・第40番と合わせて「3大交響曲」としても親しまれています。
この「3大交響曲」は、出版やコンサートのためにセットとして書かれたものだと現在では考えられています。
その説が正しいとすれば、この第41番はまさしく「締めくくりの作品」というわけですね。
終結部分でこれまで出て来たフレーズが次々と登場する壮大な様はオペラを彷彿とさせます。

ここではモーツァルトの「交響曲第41番」の解説と名盤を紹介したいと思います。

交響曲第41番「ジュピター」の解説

この頃のモーツァルトは歴史的傑作を多数残しています。
1786年にオペラ「フィガロの結婚」、1787年にオペラ「ドン・ジョヴァンニ」や「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、そして1788年に交響曲第41番を含む「3大交響曲」が作曲されています。
「3大交響曲」はわずか2ヶ月で書き上げられました。
性格の異なる交響曲を短期間で書き上げる、天才モーツァルトの神業と言えるでしょう。

音楽的には充実している時期ですが、父レオポルトや長女テレジアが亡くなるなど私生活では不幸が続いた時期でもありました。

モーツァルトはすでに音楽的に高い名声を得ていましたが、借金を頼んでいる手紙が多数残っていることから、この頃はお金に困っていたのではとも言われています。
しかし、別の研究によるとかなりの収入があったとも言われています。
真実は現時点では謎のままのようです。

ジュピター音型

モーツアルトの交響曲の多くは、序奏が長い間演奏されます。
しかし、ジュピターでは第1楽章の冒頭から優雅なメロディーで始まります。

この冒頭に出てくるモチーフはドレファミの音型で、「ジュピター音型」と呼ばれます。
これはモーツアルトが好んだモチーフで、様々なモーツァルトの曲で使われています。
ジュピターを聴くときには、この「ジュピター音型」にも注意して聴いてみてください。
ジュピター音型が形を変えて、様々な楽器によって演奏されています。

リヒャルト・シュトラウスも大絶賛

「ジュピター」はリヒャルト・シュトラウスからも大絶賛されています。

シュトラウスは若い頃に、「ジュピターは今まで聴いた音楽の中で最も偉大である。終曲のフーガは、天にいるかのような思いだ」と語っています。
1926年には、シュトラウス自身の指揮でジュピターの録音もしています。

カール・ベームのモーツァルト愛

偉大な指揮者であるカール・ベームはモーツァルトをこよなく愛していることで知られています。
ベームはモーツァルトを「全時代の中で最も偉大な天才音楽家」だと語っています。
そして交響曲第1番の第2楽章が、ジュピターの最終楽章に出てくることに触れ、「モーツァルトの音楽は生まれたときから完成していた」と評しています。

このことを意識してジュピターを聴いてみると、また違った面白さがあるかもしれません。

交響曲第41番「ジュピター」の名盤

このCDは交響曲第41番の入門としてオススメできる名盤です。
モーツァルトを深く愛したベーム晩年の録音で、交響曲第40番・第41番ともに最後の録音となったものです。

ベルリン・フィルとモーツァルト交響曲全集録音を残した後に、ウィーン・フィルと再録音したものです。
神々しく美しい演奏は、格別な世界へ連れていってくれます。

クラシック初心者の方がモーツァルトの交響曲全集をお探しなら、このCDが断然オススメです。
多くの音楽愛好家たちに長い間愛され続けている歴史的名盤です。

ベームとベルリン・フィルが10年間(1959年~1969年)かけて録音しており、落ち着いた優美な音楽を聞かせてくれます。

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