項目 | データ |
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作曲年 | 1789年9月29日完成 |
初演 | 1789年12月22日 |
演奏時間 | 35分程度 |
クラリネット五重奏曲 イ長調(K.581)は、モーツァルトが1789年に作曲したクラリネットと弦楽四重奏のための室内楽曲です。
モーツァルトが亡くなる2年前のことでした。
このクラリネット五重奏曲の透明感溢れる流れる様な音楽が大好きな方も多いと思います。
しかしその特徴的な音色が人気で、オーケストラではオーボエやフルートに代わって使われ出しました。
ここではモーツァルトのクラリネット五重奏曲の解説と名盤を紹介したいと思います。
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」の演奏
第1楽章:アレグロ イ長調 4/4拍子、ソナタ形式
第2楽章:ラルゲット ニ長調 3/4拍子、三部形式
第3楽章:メヌエット イ長調 3/4拍子 - トリオⅠ イ短調 - トリオⅡ イ長調
第4楽章:アレグレット イ長調 4/4拍子、変奏曲形式
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」の解説
晩年のモーツァルトは、収入が減り借金を重ねる苦しい生活を送っていました。
仕事が減ったことも関係していますが、モーツァルトの浪費癖が激しかったことも原因だとも言われています。
またモーツァルトの才能に嫉妬した宮廷楽長アントニオ・サリエリが、モーツァルトの演奏活動を妨害したという説もあるようです。
そのためウィーンを離れて、バーデン(温泉で有名)で夏は療養していました。
モーツァルトはウィーンに留まりましたが、療養の費用を工面してあげたそうです。
生活は苦しかったようですが、名作は誕生し続けます。
この晩年には、「クラリネット五重奏曲」の他にも「コジ・ファン・トゥッテ」「魔笛」「レクイエム」などの傑作が生まれました。
名演奏家の友人のために作曲された
クラリネット五重奏曲は友人でフリーメイソンのアントン・シュタードラーのために作曲されました。
そのため「シュタードラー五重奏」と呼ばれることもあります。
シュタードラーはウィーン宮廷楽団でクラリネットを演奏しており「ウイーンで最初のクラリネット名演奏家」として知られています。
モーツァルトはそんなシュタードラーのクラリネットの演奏を「人の声のようであり、そして柔らかく繊細だ」と表現しています。
またシュタードラーはクラリネットだけではなくバセットホルンの名手でもありました。
この当時クラリネットはメジャーな楽器ではなく、ようやくオーケストラの仲間入りをしたところでした。
モーツァルトが初めてクラリネットを知ったのは13歳の時だと言われています。
まだ十分に確立されていないクラリネットの魅力を十分に引き出せたのは、まさにモーツァルトだからなせた業でしょう。
また名演奏家であるシュタードラーが存在したからこそ作曲できた曲でもあります。
名演奏家と名作曲家の両方がいたからこそ生まれた曲なのです。
またシュタードラーは借金があり女遊びも盛んで、愛人と暮らすために妻と別居していたそうです。
年齢もモーツァルトの3歳年上で、二人は同世代でした。
もしかするとモーツァルトと性格的にも相性が良かったのかもしれません。
ブラームスはモーツァルトのクラリネット五重奏曲に刺激を受けて、自分自身でクラリネット五重奏曲(Op.115)を作曲したと言われています。
元々はバセットクラリネットで演奏された
クラリネット五重奏曲は1789年12月22日にブルク劇場で初演されました。
初演はクラリネットではなく、シュタードラーがバセットクラリネットで演奏しました。
シュタードラーはクラリネットよりバセットホルンを好んだと言われています。
そのためクラリネット五重奏曲も、元々はクラリネットではなくシュタードラーの愛した低音を活かせるバセットクラリネット用に書かれた曲でした。
バセットクラリネットとは、バセットホルンと同じ音域を演奏できるクラリネットのことで、シュタードラーが依頼してオリジナルで作った「シュタードラーだけが持っている専用楽器」でした。
バセットクラリネットを演奏できたのはシュタードラーだけでしたので、その後の演奏では一般的にクラリネットで演奏されています。
バセットクラリネットはその後普及することはありませんでした。
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」の名盤
このCDは、名盤を語るうえでは外せない歴史的作品の一つです。
1951年、1952年の古い録音ではありますが、音質も悪くありません。
ウラッハは歴史上最も偉大なクラリネット奏者の一人として知られています。
多くの音楽ファンがこのウラッハのクラリネットに魅了され続けています。
透き通った音色で、天から舞い降りて来たかのような音楽です。
クラリネット五重奏曲の初めての1枚は、これで決まりではないでしょうか。
レオポルト・ウラッハ(Leopold Wlach/1902年2月17日-1956年5月7日)
オーストリア、ウィーン生まれのクラリネット奏者
1928年からウィーン国立歌劇場およびウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を務め、同オーケストラの最盛期を支えた。
その他の録音
アルフレート・プリンツ(ウィーン室内合奏団)
アルフレート・プリンツは、レオポルト・ウラッハの跡を継いでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者となったクラリネット奏者です。
こちらもウィーン色に染まった美しいクラリネット五重奏曲が堪能できます。
アイネ・クライネ・ナハトムジークも収録されています。
アルフレート・プリンツ(Alfred Prinz/1930年6月4日-2014年9月20日)
オーストリア、ウィーン生まれのクラリネット奏者
クラリネットをレオポルト・ウラッハに学び、15歳でウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団。
1955年にウラッハの跡を継いで、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者となる。
ソリストとしても、カール・ベーム指揮によるモーツァルトのクラリネット協奏曲、ウィーン室内合奏団との共演などで多くの録音を残した。
またピアノの名手としても知られている。
パトリック・メッシーナ
2003年からフランス国立管弦楽団の首席クラリネット奏者を務めるパトリック・メッシーナによるるモーツァルトのクラリネット協奏曲と五重奏曲です。
フランス、ニース生まれの彼は、1996年からはレヴァイン率いるメトロポリタン歌劇場管弦楽団にも定期的に出演しています。
2012年の来日公演で日本のファンも魅了しました。
クラリネット五重奏曲は、2008年ベルリンでのスタジオ録音です。
五重奏曲ではベルリン・フィルの精鋭たちが集うフィルハーモニア・カルテット・ベルリンが演奏しています。
その他の曲目一覧(目次)
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