グスタフ・マーラー(Gustav Mahler/1860年~1911年)の「交響曲第3番」は、1895年から1896年にかけて作曲されました。
演奏時間は100分ほどもあり、大曲の多いマーラーの中でも最も演奏時間の長い交響曲です。
オーケストラに加えて、独唱、合唱と少年合唱を伴います。
ここではマーラー「交響曲第3番」の解説と名盤を紹介したいと思います。
マーラー「交響曲第3番」の演奏
演奏:hr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)<国際公式名:フランクフルト放送交響楽団(Frankfurt Radio Symphony)>
指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ(Andrés Orozco-Estrada/1977年12月14日-)コロンビアの指揮者
[0:35:47]第2楽章:Tempo di Menuetto. Sehr mäßig
[0:45:52]第3楽章:Commodo, Scherzando. Ohne Hast
[1:05:12]第4楽章:Sehr langsam. Misterioso
[1:15:19]第5楽章:Lustig im Tempo und keck im Ausdruck
[1:19:35]第6楽章:Langsam, ruhevoll, empfunden
ハンブルク時代の作品
1888年にマーラーは28歳の若さにしてブダペスト王立歌劇場の芸術監督となります。
しかし強気な性格のマーラーは衝突も多かったそうです。
支配人と対立し、数年で職を解雇されてしまいます。
職を失ったマーラーでしたが、才能のある彼にはすぐに次の職が見つかりました。
1891年からの6年間、マーラーはハンブルク歌劇場を仕事場とします。
「交響曲第3番」はそのハンブルク時代の作品です。
ビューローの死後、指揮活動は多忙に
当時のハンブルクでは名指揮者ハンス・フォン・ビューローが活躍していました。
マーラーはビューローに指揮の腕を認められ、病弱なビューローに代わって指揮を務めるようになります。
そして1894年2月12日にビューローが亡くなると、マーラーの指揮者としての仕事はますます忙しくなりました。
1895年から1896年にかけて、その忙しさは耐えきれぬほどになります。
マーラーは余りの忙しさに劇場との契約を打ち切ることを希望したほどだったそうです。
「交響曲第3番」は、その【ハンブルク時代の最も忙しかった時期】の作品でもあります。
夏季休暇中にシュタインバッハで作曲活動
マーラーは夏季の休暇を利用して、シュタインバッハで作曲活動をおこないました。
シュタインバッハはザルツブルクの東方に位置し、アッター湖と呼ばれるとても大きな湖に面しています。
1894年から1896年までに、このシュタインバッハの地で交響曲第1番の改訂、交響曲第2番の完成、「少年の魔法の角笛」の作曲などもおこなわれました。
マーラーはこの自然の豊かな土地で、規則正しい生活を送りながら作曲を進めたそうです。
標題も付いていた
「交響曲第3番」には、曲全体と各楽章ごとに次のように標題も付いていました。
これらの標題は誤解与える恐れがあるため、出版時には削除されています。
この第7楽章には「子供が私に語ること」という標題が付いていました。
交響曲全体の標題
初期:幸福な生活-夏の夜の夢
中期:楽しい学問-夏の朝の夢
最終:夏の真昼の夢
と作曲の過程を経て変化している。
第一部
序奏:牧神(パン)が目覚める
第1楽章:夏が行進してくる(バッカスの行進)
第二部
第2楽章:牧場で花が私に語ること
第3楽章:森の動物たちが私に語ること
第4楽章:夜が私に語ること
第5楽章:天使が私に語ること
第6楽章:愛が私に語ること
「自然」を愛したマーラー
予定していた標題をみても推測できるように、「交響曲第3番」は自然と関わりの深い作品です。
ただマーラーの表現した自然は、単なる動物や自然の風景ではないようです。
標題で見られた「牧神(パン)」とは、ギリシア神話に登場する羊の群れを監視する神です。
「交響曲第3番」の作曲後、マーラーは「誰もディオニソスの神や偉大な牧神のことを知らない。」と友人の音楽批評家に語っています。
マーラーは偉大な自然を表現しようとしたのかもしれません。
「角笛」3部作とも呼ばれる
マーラーの「交響曲第2番」、「交響曲第3番」、「交響曲第4番」は「少年の魔法の角笛」の3部作とも呼ばれることもあります。
「少年の魔法の角笛」はマーラーが作曲した10曲からなる歌曲集で、同名の詩集から歌詞を使用しています。
最終稿には残っていませんが、初期の出版時には、「原光」「3人の天使が歌った」の2曲が存在しました。
また出版時に削除されましたが「天上の生」という曲もありました。
これらの3曲が
「原光」・・・交響曲第2番の4楽章に使用
「3人の天使が歌った」・・・交響曲第3番の5楽章に使用
「天上の生」・・・交響曲第4番の4楽章に使用
マーラーの2~4番の交響曲に使われています。
マーラー「交響曲第3番」の名盤
アバド&ベルリン・フィルクラウディオ・アバド指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるマーラー「交響曲第3番」です。
1999年10月、ロンドンでのライブレコーディングが収録されています。
アバドはこの19年前の1980年にもこの「交響曲第3番」を録音しており、彼にとっての2度目の録音です。
1980年の録音では演奏はウィーン・フィル、ソリストはジェシー・ノーマンでした。
1999年録音のこのCDは、録音状態も良く臨場感のある音楽が堪能できます。
アルト:アンナ・ラーション
合唱:ロンドン交響合唱団、バーミンガム市立少年合唱団
クラウディオ・アバド(Claudio Abbado/1933年6月26日-2014年1月20日)
イタリア、ミラノ出身の指揮者
1990年にカラヤンの後任としてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督に就任。
2002年までその職を務めた。
1972年:ミラノ・スカラ座音楽監督に就任(1977年には芸術監督に)
1983年:ロンドン交響楽団音楽監督に就任
1986年:ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任
1990年:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督に就任
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)
世界を代表するオーケストラの一つで、日本において絶大な人気を誇る。
重厚なドイツ的サウンドを奏でながらも、バラエティに富んだプログラムを演奏し常に世界の最先端をリードしている。
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