目次
項目 | データ |
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初演 | 1821年6月18日 ベルリン王立劇場 |
原作 | ヨハン・アウグスト・アーペル、フリードリヒ・ラウン『怪談集』 |
台本 | ヨハン・フリードリヒ・キーント |
演奏時間 | 2時間15分 |
『魔弾の射手(Der Freischütz)』は、カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲したオペラです。
初演はウェーバー自身の指揮でおこなわれ、大成功を収めました。
アンコールで序曲などが何曲も演奏され、相当の盛り上がりを見せたそうです。
この作品はドイツの民話を題材としており、ドイツのロマン主義オペラを確立した傑作として知られています。
これを機にドイツオペラはさらなる発展を見せ、それはワーグナーにまで繋がっていくことになります。
チケットは完売が続いたそうです。
これをきっかけにウェーバーは偉大なオペラ作曲家の道を進むかと思われました。
しかし初演から5年後の1826年、結核が原因で39歳の若さでこの世を去ることとなってしまいます。
ここではウェーバーのオペラ『魔弾の射手』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
マックス(テノール):若い猟師。射撃の名手だが調子を落としている。
アガーテ(ソプラノ):マックスの恋人。
カスパール(バス):若い猟師。マックスの同僚でライバル。悪魔ザミエルに魂を売っている。
クーノー(バス):森林保護官。アガーテの父。
エンヒェン(ソプラノ):アガーテの従姉妹。
オットカール侯爵(バリトン):ボヘミアの領主。
隠者(バス)
キリアン(バリトン):裕福な農民。
ザミエル:悪魔。
『魔弾の射手』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
【第1幕】
マックスは射撃大会に優勝して、恋人アガーテと結婚したいと思っています。
しかし、射撃のスランプに陥って思うようにプレーできません。
【第2幕】
マックスは、ライバルのカスパールの策略にはまり、悪魔から魔弾を授かります。
【第3幕】
射撃大会で魔弾を使ったことが明らかになり、マックスは非難されます。
マックスには何とか寛大な処分が下され、オペラは終わります。
第1幕:『魔弾の射手』のあらすじ
マックスの射撃の調子が良くない
ボヘミア、森の酒場前の広場
射撃大会の前日
狩人マックスは射撃の名手でありますが、調子が良くありません。
農夫キリアンにも射撃で負けて、マックスは農民たちにからかわれています。
アガーテの父クーノーが現れ、射撃大会の由来を語り、「運命を信じなさい。」とマックスを励まし去っていきます。
マックスが策略にはまり、魔弾を欲しがる
一人になったマックスは、明日への不安とアガーテへの恋心を歌い上げます。(Durch die Wälder, durch die Auen)
そこにマックスの同僚カスパールが現れます。
しかし契約により、明日までに新しい魂を差し出さなければ、自分の命を失うことになっています。
カスパールは、その犠牲者としてマックスを狙っています。
カスパールは、魔弾を手に入れて明日の射撃大会にのぞむよう提案します。
最初は乗り気でなかったマックスですが、魔弾の力に魅了されます。
そして魔弾の鋳造のために、夜中の12時にカスパールと狼谷で待ち合わせをします。
カスパールは「マックスを策略にはめた」ことを喜び、「勝った、勝った、仇を討った!」と不敵な笑みを浮かべます。(Schweig, schweig, damit dich niemand warnt!)
第2幕:『魔弾の射手』のあらすじ
恋人アガーテが、不吉な未来を予感する
クーノーの家
先祖の肖像画が落ちるのを見たアガーテは、嫌な予感がします。
いとこのエンヒェンが、アガーテを励まし元気づけます。
一人になったアガーテは、マックスへの想いを歌い上げます。 (Wie nahte mir der Schlummer)
「Wie nahte mir der Schlummer」
そこにマックスが、取り乱した様子で、ようやく登場します。
マックスはアガーテを抱きしめますが、アガーテは不安を覚えます。
マックスは「またすぐに出発しないといけない。」と語り、仕留めたシカをとりに狼谷に向かうと告げます。
アガーテは「あの恐ろしい谷間に!?行かないで。心配だわ。」と制止しますが、マックスは慌ただしく向かっていきます。
マックスとカスパールが、魔弾を鋳造する
狼谷
見えない妖精が飛び回り、不気味な声を上げています。
カスパールは悪魔ザミエルを呼び出し、「新しい犠牲者を連れてくるので、命を期限を3年延ばしてほしい。」と頼みます。
そして「7発目は花嫁(アガーテ)に向けて撃ち、マックスを絶望させてくれ。」と頼みます。
ザミエルは「魔弾は6発までは命中するが、7発目の行き先は私が決める。」「それはお前かマックスだ。」と語り、消えていきます。
伝説では、7発中6発は命中しますが、残りの1発は悪魔の望む箇所へ命中するとされています。
カスパールが魔弾の鋳造に取りかかった頃に、ようやくマックスが近くに現れます。
母親の亡霊がマックスを警告し止めようとしますが、カスパールがアガーテの幻影を見せて彼を誘惑します。
カスパールとマックスが魔弾の鋳造をはじめ、カスパールの声が岩山にこだまします。
7つ目の魔弾を作り終えると、二人はザミエルの名を叫びます。
ザミエルが現れ、マックスは十字を切って大地に倒れ込みます。
第3幕:『魔弾の射手』のあらすじ
魔弾の最後の1発(7発目)は、マックスの手元に残る
射撃大会
狩人たちは「マックスの絶好調ぶり」に驚いています。
そこにマックスとカスパールが現れます。
彼らは7発の魔弾を分け合い、1発ずつを残しています。
カスパールは自分が最後の1発を撃たないよう、こっそり魔弾を使い果たします。
アガーテが「自分がマックスに撃たれる夢」を見る
アガーテの部屋
花嫁衣裳を着たアガーテが、祭壇に祈りを捧げています。(Un ob die Wolke sie verhülle)
そこにエンヒェンが現れます。
アガーテは「昨日、嫌な夢を見たの。」「私は白い鳩になって飛び回っていたわ。するとマックスが私を撃ち落としたの。」とエンヒェンに語ります。
エンヒェンは陽気に振る舞い、アガーテを元気づけます。
アガーテに"葬式用の花冠"が届く
娘たちが「花嫁の花冠を編みましょう」と歌いながら登場します。
エンヒェンが「冠の入った箱」を持って戻ってきます。
しかし、箱を開けてみると"葬式用の花冠"が入っていました。
アガーテは蒼ざめます。
エンヒェンは「箱に詰めた人が間違えたのよ。捨てましょう。」と言います。
アガーテは、隠者からもらった白いバラで花冠を作るよう頼みます。
悪夢が再現されるが、魔弾はカスパールに命中する
舞台は、再び射撃大会
狩人たちが、狩りを称えて歌っています。(狩人の合唱)
射撃大会も終盤に差し掛かります。
領主オットカール侯爵はマックスに「あの白い鳩を撃て!」と命令します。
「Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen?」(狩人の合唱)
アガーテは「夢と同じ情景」が現れたことに驚き、「撃たないで!鳩は私です!」とマックスに叫びます。
しかし、間に合わずマックスは魔弾を放ちます。
アガーテは倒れ込みますが、彼女は気を失っただけでした。
魔弾は、隠れていたカスパールに命中します。
カスパールはザミエルを呪って息絶えます。
マックスには寛大な処分が下され、幕が下りる
マックスは「私はカスパールと魔弾を鋳造しました。」と、領主にこれまでの経緯を話します。
領主は立腹し、マックスに「二度とこの国には戻ってくるな!」と追放を命じます。
そこに隠者が現れ「彼は重い罪を犯しましたが、純粋で誠実な男です。」「1年の猶予を与えてくれませんか。」と願い出ます。
皆もそれに賛同し、領主も受け入れます。
皆が領主の計らいを称える中で、オペラは終わります。
ウェーバー『魔弾の射手』の映像
チューリヒ歌劇場で1999年2月に演奏されたライブ映像です。
マックス役のザイフェルトが、素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。
オットカール:チェイン・デヴィッドソン
クーノー:ヴェルナー・グレシェル
アガーテ:インガ・ニールセン
エンヒェン:マリン・ハルテリウス
カスパール:マッティ・サルミネン
マックス:ペーター・ザイフェルト
チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:ニコラウス・アーノンクール
演出:ルート・ベルクハウス
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