フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn/1732年~1809年)の「交響曲第102番」は、1794年にロンドンで作曲された彼が62歳の頃の作品です。
ロンドン訪問時の作品はいわゆる「ロンドン交響曲」という愛称で親しまれていますが、その中の作品の1つです。

「94番(驚愕)」「100番(軍隊)」「103番(太鼓連打)」「104番(ロンドン)」らの交響曲も、このロンドン訪問時の作品です。

ここではハイドンの「交響曲第102番」の解説と名盤を紹介したいと思います。

エステルハージ家に長年仕えたハイドン

ハイドンの生涯の多くは中世から続くハンガリー有数の大貴族であるエステルハージ家と共にありました。
ハイドンは1761年にエステルハージ家の副楽長に就いた後、1766年には楽長に就任します。
そして1790年までここで働き続けることになります。

後継者が音楽に不理解→エステルハージ家からの解放

ハイドンは長きに渡って雇用されていたわけですが、それはエステルハージ家の当主ミクローシュ・エステルハージ侯爵が音楽を深く理解していたことによるものでした。
しかし当主の死によってハイドンの環境は一変します。
後継者になったアントン・エステルハージ侯爵は音楽に全く興味がなかったのです。

それにより多くの音楽家解雇されてしまい、ハイドンも年金暮らしとなりました。

興行師ザロモンによるロンドン訪問の誘い

このエステルハージ家からの解放は、ハイドンにとっては悪いことではありませんでした。
ドイツ人でヴァイオリニストでもある興行師、ヨハン・ペーター・ザロモン(Johann Peter Salomon/1745年~1815年)がハイドンに儲け話を持ち掛けてきます。
それはイギリスで新しい交響曲を演奏することでした。

ロンドンで名声を手に入れる

その話にのったハイドンは、ロンドンに2度(1791年~1792年・1794年~1795年)訪問し、いずれも成功を収めます。
大成功により名声を手に入れたのはもちろんですが、ギャラはエステルハージ家に仕えていたころの20年分もあったそうです。

haydn

「交響曲第102番」は2度目のロンドン訪問の際の作品で、ロンドンでの最後のシーズンの初日に演奏されました。
コンサートは協奏曲・声楽曲を含む様々な作曲家の作品が演奏されるプログラムで、プログラム後半の最初に「交響曲第102番」は演奏されました。
オーケストラの演奏の質については賛否があったようですが、ハイドンのこの作品は賛辞を受けたそうです。

1791年~1792年の第1回ロンドン訪問時に、イギリスに帰化して大成功を収めたヘンデルの音楽性をイギリス国民は愛していることに、ハイドンは気付きました。
ハイドンはそのバロック的な音楽を愛する国民性を加味してこの作品を書いたとも言われています。

ロンドン交響曲は別名「ザロモン交響曲」

このロンドン訪問時の第93番~第104番の交響曲は「ロンドン交響曲」として親しまれていますが、「ザロモン交響曲」とも呼ばれます。
これは興行師・ザロモンが依頼したことからこう呼ばれています。
ちなみにこれらの「ザロモン交響曲」の楽曲の権利は、ザロモンが持っていました。

ザロモンはその他にもモーツァルト「交響曲41番」をジュピターと命名したことでも知られています。

曲の構成

演奏時間は全体で25分程度で、4楽章で構成されています。

第1楽章 Largo 2/2拍子 – Vivace 2/2拍子 変ロ長調

ソナタ形式からなっており、ゆったりとした美しい序奏からはじまります。
愁いを感じさせる音楽が続きますが、第1主題ではバイオリンとフルートが明るくテンポの良い音楽を奏でます。
推進力のある8分音符の刻みを伴った音楽がしばらく続いたあとに、第2主題が登場します。

第2楽章 Adagio 3/4拍子 ヘ長調

3部形式で主題と3つの変奏からなり、3連符が随所に効果的に現れます。
またオーケストラのチェロとは別に、独奏チェロがメロディを奏でているのも特徴的です。

第3楽章 Menuetto. Allegro 3/4拍子 変ロ長調

複合3部形式からなっており、快活で勢いのある音楽が印象的です。
中間部ではフルート、オーボエ、ファゴットがメロディを優美に奏で、それを弦楽器が豊かに広げます。

第4楽章 Finale. Presto 2/4拍子 変ロ長調

ロンド・ソナタ形式からなっています。
バイオリンが疾走感のある第1主題を演奏し、それがオーケストラ全体に行き渡り大きな盛り上がりをみせます。
半音階が印象的な第2主題も登場し、心がウキウキするような緊張感のままで作品は幕を閉じます。

ハイドン「交響曲第102番」の名盤

アダム・フィッシャー指揮、オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団によるハイドンの交響曲全集です。
33枚にも及ぶもので、録音は1987年~2001年の多岐に渡ります。

このヴォリュームでこの価格ですので質を疑ってしまうかもしれませんが、美しい演奏で音質も悪くありません。
とてもお得な全集に間違いないと思います。

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