湖上の美人La donna del lago
初演1819年10月24日 サン・カルロ劇場(ナポリ)
原作ウォルター・スコットの叙事詩『湖上の美人』
台本アンドレア・レオーネ・トットラ
演奏時間2時間30分

『湖上の美人(La donna del lago)』は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini/1792年-1868年)によって作曲されたオペラ・セリアです。
3か月ほどで作曲された作品で、ウォルター・スコットの原作をイタリアオペラに取り入れた最初の作品です。

ヨーロッパ中で上演されましたが、1860年以降は上演機会がなくなり、1958年まで『湖上の美人』は忘れ去られた存在となってしまいます。

 ドニゼッティの傑作オペラ『ランメルモールのルチア』の原作も、ウォルター・スコットのものです。
スコットの作品を原作したオペラは、25を数えます。

ただ、嬉しいことに現在では上演される機会のある作品として輝きを取り戻しています。

ここではロッシーニのオペラ『湖上の美人』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
ウベルト(テノール)ジャコモ5世、スコットランド王
ダグラス(バス)エレナの父親
エレナ(ソプラノ)ダグラスの娘
ロドリーゴ(テノール)反乱軍の首領、エレナの婚約者
マルコム(メゾソプラノ)反乱軍の将校、エレナと両想い

『湖上の美人』の簡単なあらすじ

時間のない方のための「簡単なあらすじ」
ジャコモ5世(スコットランド国王)はウベルトと扮して、狩りに出ています。
そこでエレナという女性に恋をします。

しかしエレナは「反乱軍の娘」であり、別に好きな男性(マルコム)もいました。
ウベルトは失恋しますが、エレナの誠実さに感銘を受けます。
そして「何かあったらこの指輪を使いなさい」と王の指輪を渡します。


その後、国王軍(ウベルト側)と反乱軍(エレナ側)の戦いが起こり、国王軍が勝利します。
エレナの父(ダグラス)は囚われの身となります。

そこでエレナは「王の指輪」を持って王宮に向かい、許しを請います。
ウベルトが正体を明かし、ダグラスが釈放され、エレナとマルコムも結ばれてハッピーエンドで終わります。

 エレナは「王の指輪」を持っていたので、王宮に入ることができました。

第1幕:『湖上の美人』のあらすじ

エレナが「マルコムへの愛」を歌う

16世紀のスコットランド

夜が明けると羊飼いたちは仕事をはじめ、猟師たちは森へと出かけます。

湖の船の中
一方小船の中では、エレナがマルコムに想いを寄せています。(Oh mattutini albori!)
やがて船は岸辺に着き、エレナは陸へと上がります。

"Oh mattutini albori!"(Elena)

ウベルトがエレナに一目惚れをする

陸にいたウベルトは、エレナを一目見て虜になります。
ウベルトがエレナに「仲間たちとはぐれてしまった。」と助けを求めると、エレナはウベルトを自分の小屋へと案内します。

 ウベルトとは、ジャコモ5世(スコットランド王)のことです。
彼はウベルト(狩人)に扮して狩りに出ています。

続いて狩人たちが現れ「ウベルトはどこだ!?連れ去られたのか!?」と探しますが、彼は見つかりません。

エレナは「ウベルトの敵の娘」だった

一方、ウベルトは小屋に辿り着きます。
ウベルトは「エレナが反乱軍ダグラスの娘」だと知り、ショックを受けます。

またエレナはマルコムを愛していますが、「エレナとロドリーゴの婚約」が明らかになります。

 マルコムもロドリーゴも反乱軍の仲間ですが、ロドリーゴの方が位が上(反乱軍の首領)です。

マルコムが「エレナへの愛」を歌う

皆が去ると、マルコムが登場し「エレナへの愛」を歌います。(Mura felici...)
そこにダグラスとエレナが現れるので、マルコムは物陰に隠れます。

"Mura felici, ove il mio ben si aggira!"(Malcolm)

マルコムとエレナが愛を確かめ合う

ダグラスはエレナの気持ちを顧みず「ロドリーゴとの結婚」を無理強いします。
そして「ロドリーゴ到着のラッパ」が鳴ると、ダグラスは彼を迎えに行きます。

マルコムが姿を現すと、エレナとマルコムは愛を確かめ合います。

ロドリーゴとダグラスに「エレナとマルコムの秘密の愛」がばれる

山々に囲まれた平野
ロドリーゴが戦地へ行く兵士たちを鼓舞しています。(Eccomi a voi)

"Eccomi a voi"(Rodrigo)

ダグラスとロドリーゴが盛り上がる中、遅れてきたエレナは苦しみを隠すことができません。
そこにマルコムが登場し、心を抑え祖国に忠誠を誓います。

しかし、「エレナとロドリーゴの結婚」が明らかになると、マルコムは動揺し感情を抑えきれません。
遂には「エレナとマルコムが愛し合っている」ことがロドリーゴとダグラスにばれてしまいます。

4人の複雑な感情が重なる中、スコットランド軍の襲来の知らせが入ります。
士気は高まり、皆は戦場へと向かっていきます。

第2幕:『湖上の美人』のあらすじ

失恋したウベルトが、エレナに「王の指輪」を渡す

ウベルトが「エレナへ」の愛を歌っていると(O fiamma soave)、偶然にもエレナと再会します。

"O fiamma soave"(Uberto)

ウベルトはエレナへ愛を語りますが、エレナは「私はマルコムを愛しているの。」と、愛を断ります。

ウベルトは失恋しますが、彼女の誠実さに感銘を受けます。
そして身分を隠したまま、「これは王の指輪です。何かあったときはこの指輪を王に見せてください。」と指輪をエレナに渡します。

国王軍が反逆軍に勝利し、ロドリーゴは命を落とす

そこにタイミング悪く、ロドリーゴが現れます。
「ウベルトが敵」だとわかると、ロドリーゴとウベルトは激しく対立します。
二人は戦いのために去っていきます。

 スコットランド国王軍と反逆軍との戦いは、国王軍の勝利に終わります。

戦いの後、マルコムはエレナを探しに戻ってきましたが、彼女の姿は見つかりません。
マルコムは「最悪な運命」と「エレナをなくした悲しみ」を歌います。(Ah, si pera, ormai la morte)

さらにはロドリーゴが命を落とし、ダグラスが行方不明となったことも明らかになります。

ウベルト(王)がダグラスとマルコムを許し、エレナとマルコムが結ばれてオペラが終わる

ジャコモ5世の王宮の部屋
ダグラスは捕えられています。
ダグラスは王(ウベルト)に許しを請いますが、聞き入れられません。

一方、エレナも王宮に来ています。
エレナはウベルトに出会うと、王に取り次いでほしいと頼みます。

 エレナは「王の指輪」を持っていたので、王宮に入ることができました。

そして「ウベルト自身がスコットランド国王」だったと知ると、エレナは驚愕します。
ウベルトは、エレナの願いを聞き入れ「ダグラスとマルコムの釈放」が認められます。

そして「エレナとマルコムが結ばれ」、ハッピーエンドでオペラは終わります。

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