アルジェのイタリア女L'italiana in Algeri
初演1813年5月22日、サン・ベネデット劇場(ヴェネツィア)
原作伝説『偉大なソリーマン2世の美しい女奴隷ロクセラーナ』
台本アンジェロ・アネッリ
演奏時間約2時間

アルジェのイタリア女(L'italiana in Algeri)』は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini/1792年-1868年)によって作曲されたオペラです。
当時21歳のロッシーニは、わずか27日間(17日の説もある)でこのオペラを書き上げたそうです。

初演はロッシーニ自身の指揮によって行われ、大成功を収めました。
現在では全曲が上演されることは少ないオペラですが、序曲は単独でコンサートで取り上げられることもあります。

 台本は、1808年にルイージ・モスカ(Luigi Mosca/1775年–1824年)が作曲した同名のオペラの台本が使われています。

また、このオペラは約30年前にモーツァルトが作曲したオペラ『後宮からの逃走』とストーリーが類似していると言われることもあります。
音楽は全く違いますが、どちらも宮殿からの逃走計画をテーマとしたオペラです。

ここではロッシーニのオペラ『アルジェのイタリア女』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

アルジェリア詳細
ムスタファ(バス)アルジェリアの太守
エルヴィーラ(ソプラノ)ムスタファの妻
ズルマ(メゾソプラノ)エルヴィーラの奴隷
ハーリー(バス)アルジェリアの海賊の首領
リンドーロ(テノール)イタリアの青年、ムスタファの奴隷、イザベッラの恋人
イタリア船詳細
イザベッラ(メゾソプラノ)イタリアの女性(イタリア女)、リンドーロの恋人
タッデオ(バス)イザベッラと同船の旅客

『アルジェのイタリア女』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

ムスタファ(アルジェリアの太守)は妻エルヴィーラに飽きて、新しい女性を探しています。
そしてムスタファは、ハーリー(アルジェリアの海賊の首領)が連れてきたイザベッラ(イタリア女)を気に入ります。

 イザベッラには離れ離れになっていた恋人(リンドーロ)がいました。二人はアルジェリアで再会します。

困ったイザベッラやリンドーロたちは結託して脱出を図り、見事成功します。
ムスタファは妻に謝罪し、元のさやに戻りオペラは終わります。

第1幕:『アルジェのイタリア女』のあらすじ

太守が妻に飽きて、新しい女を探し始める

ムスタファ(太守)の宮殿の一室

太守の妻エルヴィーラが「夫(ムスタファ)が自分に冷めてしまった」ことを嘆いています。

そこに太守ムスタファが現れ、「若いイタリア女を探してこい!」とハーリー(アルジェリアの海賊の首領)に命じます。

太守が自分の妻をリンドーロ(奴隷)にプレゼントする

続いてリンドーロ(ムスタファの奴隷)が現れ、「離れ離れになった恋人(イザベッラ)」を想い嘆きます。(Languir per una bella)

「Languir per una bella」

そんな中、太守はリンドーロに「お前にオレの妻をあげよう」と告げます。

 リンドーロには恋人がいます。
それは海賊に捕まり、後から連れてこられるイタリア女(イザベッラ)です。

リンドーロはそれに困ってしまいます。
そして太守とリンドーロの愉快な押し問答が繰り広げられます。

イザベッラが捕えられる

アルジェリアの海岸
ハーリー(海賊の首領)たちがイタリア船を襲い、美しいイタリア女(イザベッラ)を捕えます。
イザベッラは「自分が太守に贈られる」と聞いて、運命を嘆きます。(Cruda sorte!)
しかし最後には「私は男を落とす方法を知っている!」と力強く歌います。

「Cruda sorte!」

続いてイザベッラに片想いしているタッデオも登場します。
イザベッラは「私はタッデオの姪よ」とハーリーに嘘をつき、タッデオも一緒に宮殿に連れていかれます。

太守の胸が高鳴る

ムスタファ(太守)の宮殿の一室
太守が妻エルヴィーラに「リンドーロのところに行け!」と言っているところに、ハーリーが入ってきます。
そしてハーリーは太守に「若いイタリア女を連れてきました。」と告げます。

太守の胸は高鳴ります。

太守がイザベッラに一目惚れする

宮殿の大広間
皆が太守を賛美する中、イザベッラが連れてこられます。
太守はイザベッラに一目惚れをします。

一方タッデオが「奴隷になりたくない」と騒いでいます。
危うく火あぶりの刑になりかけますが、イザベッラの計らいで助かります。

ドタバタ劇の中で1幕が終わる

大広間にエルヴィーラとリンドーロが現れます。

イザベッラは行方不明になった恋人(リンドーロ)の登場に驚きます。

イザベッラは太守に
「妻を捨てて私を手に入れようとする人は嫌いよ。」
「この奴隷(リンドーロ)は私にちょうだい。」
「じゃないとあなたに想いを寄せないわ。」
と語ります。

イザベッラの虜になっている太守は、渋々それを受け入れます。
そして皆が大騒ぎする中で1幕が下ります。

第2幕:『アルジェのイタリア女』のあらすじ

イザベッラとリンドーロが逃走の相談をする

ムスタファ(太守)の宮殿の一室
イザベッラは「リンドーロに捨てられた」と勘違いしていましたが、リンドーロから真相を聞いて一安心します。
そして二人は宮殿から逃げ出す方法を相談し合います。

一方、タッデオはカイマカン(太守のお世話係のトップ)に昇進します。
そして太守に「太守とイザベッラの結婚を取り持つ」よう命じられます。
タッデオは喜びと悲しみの交じった複雑な思いを歌います。(Ho un gran peso sulla testa)

「Ho un gran peso sulla testa」

太守がイザベッラと二人きりになれず、機嫌を損ねる

宮殿の豪華な一室
イザベッラがトルコの美しい衣装を着て、鏡前で化粧をしています。
それを物陰から太守、タッデオ、リンドーロがそっと覗いています。

イザベッラはそれを意識して「あなたのために美しくなりましょう」と意味深に歌います。(Per lui che adoro)

太守はタッデオに「合図のクシャミをしたら、皆を連れて下げっていけ」と命じます。
イザベッラはそれを避けるために、エルヴィーラを呼んでコーヒーを飲み始めます。

太守が合図のクシャミをしますが、イザベッラが気になるタッデオは命令に従いません。
太守は激怒し、楽し気な五重唱が繰り広げられます。

タッデオも逃亡計画に参加する

ムスタファ(太守)の宮殿の一室
ハーリー(海賊の首領)は「イタリアの女たちは騙すのがうまいな」と感心しています。(Le femmine d'italia)

一方タッデオは「イザベッラが太守に反抗するのは自分のことが好きだからだ。」と勘違いします。
そしてリンドーロに「イザベッラの恋人は実はおれなんだ。」と告げます。

 イザベッラの本当の恋人はリンドーロです。

リンドーロはそれを利用して、二人の逃亡計画に協力させます。

太守を架空の結社「パッパタチ」に誘う

リンドーロとタッデオは、太守に「イザベッラも入っている"パッパタチ"に加入しませんか?」と誘います。

 「パッパタチ」は逃亡計画のために作り上げた架空の結社です。
加入するためには「食べて、飲んで、たくさん眠る」ことが必要です。

太守は、彼らの話を信じ込みます。

太守が「見ても見ぬふりをする」と誓う

宮殿の豪華な一室
イザベッラはイタリア人奴隷たち全員をパッパタチ会員にしたてあげ、皆で逃亡の準備を整えます。
そして「祖国を思い出すのよ!」と歌い上げます。(Pensa alla patria)

そこに太守が「パッパタチの入会」のために現れます。
太守は奇妙な衣装を着させられ、食べて飲んで会を楽しみます。

そして入会の儀式として、太守は「見ても見ぬふりをする」と誓いを立てます。

イタリア人たちが逃亡に成功する

その間にイタリア人たちは急いで船に乗り込みます。

そんな時、タッデオが「イザベッラとリンドーロは恋人関係だ」ということに気づきます。
怒ったタッデオは太守に告げ口に行きます。
しかし太守は規則を守り、「食べて飲んで見ても見ぬふり」を続けます。

そして太守が異常に気づいたときには既に手遅れでした。
部下のトルコ人たちも酔っぱらって役に立ちません。

太守は妻に許しを請う

太守は妻エルヴィーラに許しを請い、元のさやに戻ります。
そしてイタリア人たちの乗る船を見送りながらオペラは終わります。

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