邦題火の鳥
作曲1909年-1910年
初演1910年6月25日 パリ・オペラ座
演奏時間45分(バレエ版全曲)20分(1911版、1919版)30分(1945版)

『火の鳥(L'Oiseau de feu)』は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882年-1971年)によって作曲された初期を代表する三部作の一作目です。
初演の全曲版は約45分に渡る演奏時間の作品ですが、コンサートでは20分程度の「1919年版」がよく演奏されます。

 手塚治虫の『火の鳥』は、この作品からインスピレーションをえたそうです。
「劇中で火の鳥を演じるバレリーナ」から、あの不朽の名作は誕生しました。

ここではストラヴィンスキー『火の鳥』の解説と名盤を紹介したいと思います。

ディアギレフがストラヴィンスキーに委嘱した「最初の作品」

ストラヴィンスキーを語るうえで、セルゲイ・ディアギレフ(1872年-1929年)はとても重要な人物です。
ディアギレフはバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)を創設した人物で、多くの作曲家にバレエ音楽を委嘱しました。

 ストラヴィンスキーのバレエ音楽『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』は、すべてディアギレフの委嘱によるものです。

元々は違う作曲家が書く予定だった作品

ディアギレフは1909年にバレエ・リュスを創設します。
そしてこのバレエ団の記念すべき初めてのオリジナル作品が『火の鳥』でした。
ディアギレフはロシアの民話から着想を得て、振付師のフォーキンと共に台本を完成させます。

ディアギレフはまず最初にニコライ・チェレプニンに作曲を依頼しますが、頓挫します。
次にアナトーリ・リャードフに依頼しますが、彼のグズグズした性格から作品はまとまりません。
そして最後に依頼されたのが当時まだ無名のストラヴィンスキーでした。

初演の成功で、作曲家としての評価が高まる

ストラヴィンスキーは『火の鳥』の発表で、初めてパリを訪れます。
そして初演は大成功を収め、彼の注目度は高まります。

この作品は『ホップ(火の鳥)、ステップ(ペトルーシュカ)、ジャンプ(春の祭典)』のホップと言えるかもしれません。
その後『ペトルーシュカ』も大成功し、『春の祭典』では一大騒動を起こし、彼の前衛的な音楽の知名度は一気に高まります。

ストラヴィンスキー『火の鳥』の簡単なあらすじ

時間のない方のための「簡単なあらすじ」
イワン王子は火の鳥を追って、魔法の国に迷い込みます。
そこでツァレーヴナ王女に恋をしますが、彼女は「カスチェイ(不死の魔王)の魔法」よって捕らわれの身でした。

イワン王子は「火の鳥の羽」を使って、カスチェイの弱点を見つけ退治します。
カスチェイの魔法は解け、王子と王女が結ばれて物語は終わります。

ストラヴィンスキー『火の鳥』の詳しいあらすじ

王子が「火の鳥の羽」を手に入れる

魔法の国、夜
魔法の国は、カスチェイ(不死の魔王)によって支配されています。
そこにイワン王子が迷い込んできます。

 イワン王子は、火の鳥を追っているうちに迷い込んでしまいました。

王子は隠れて狙いを定め、火の鳥を捕まえます。
火の鳥は「自らの羽を1枚渡すから、助けてほしい。」と懇願し、王子が火の鳥を解放します。

王子が一人の王女に恋をする

向こうに城が見えると、そこから「13人の魔法をかけられた王女」が登場します。
イワン王子はそのうちの一人(ツァレーヴナ王女)に恋をします。

 王女たちは、「カスチェイの魔法」によって城に閉じ込められています。

夜が明けると、王女たちは城の中に帰ってきます。

王子が「王女救出」に失敗し、捕まる

イワン王子は「王女たちを助けること」を決意し、城内に入っていきます。
しかし、王子は怪物(城の番人)に捕まってしまいます。

王女たちが「王子を許す」よう頼みますが、カスチェイは受け入れません。

火の鳥が、カスチェイたちを翻弄する

カスチェイは王子を石にしようとします。
しかし、それを「火の鳥の羽」が守ってくれます。

そして王子が羽をかざすと、火の鳥が飛んできます。
カスチェイたちは火の鳥の魔法に翻弄され、疲れ果てて眠ってしまいます。

王子がカスチェイを退治する

王子は火の鳥の導きによって、魔法の木の根元ある「卵(カスチェイの命)」を見つけます。
カスチェイは身の危険を感じ王子に飛び掛かりますが、すでに手遅れでした。

王子が卵を大地に叩き割ると、カスチェイは死んでしまいます。

魔法が解けて、ハッピーエンド

カスチェイの死により、城と魔法は消滅します。
王女たちは自由になり、石になった騎士たちも元の姿に戻ります。

イワン王子とツァレーヴナ王女が結ばれ、ハッピーエンドで物語は終わります。

ストラヴィンスキー『火の鳥』の名盤

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団
このCDは、ティルソン・トーマスがサンフランシスコ交響楽団の音楽監督就任直後の1996年(春の祭典)と1998年(火の鳥)に録音されました。
これらに『ペルセフォーヌ』を加えた当時のCDは2000年のグラミー賞を受賞しました。

その後も何度もグラミー賞を受賞する名コンビでのこの録音は、彼らの傑作として知られています。

【演奏者】
指揮:ティルソン・トーマス(Michael Tilson Thomas/1944年- )
アメリカの指揮者、ピアニスト、作曲家。MTTの愛称でも知られる。
1995年から長きにわたってサンフランシスコ交響楽団の音楽監督を務めている。(2020年退任)
同交響楽団でのマーラーの録音は特に有名。
また晩年のストラヴィンスキーとも交流があった。

管弦楽:サンフランシスコ交響楽団

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