邦題運命の力
初演1862年11月10日 マリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)
改訂版1869年2月27日 ミラノ・スカラ座
原作ドン・アンヘル・デ・サーヴェドラ『ドン・アルヴァーロ、あるいは運命の力』
台本フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ(改訂版:アントニオ・ギスランツォーニ)
演奏時間2時間45分

『運命の力(La Forza del Destino)』は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi/1813年-1901年)によって作曲されたオペラです。
現在演奏されるものは初演版ではなく改訂版(1869年、スカラ座)がほとんどで、有名な序曲も改訂版で書かれたものです。

ここではヴェルディのオペラ『運命の力』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
ドンナ・レオノーラ(ソプラノ)
カラトラーヴァ侯爵(バリトン)レオノーラの父
ドン・カルロ(バリトン)レオノーラの兄
ドン・アルヴァーロ(テノール)レオノーラの恋人
プレツィオジッラ(メゾソプラノ)占いが得意なジプシー
グァルディアーノ神父(バス)修道院長
メリトーネ(バリトン)修道士

『運命の力』の簡単なあらすじ

時間のない方のための「簡単なあらすじ」
【第1幕】
レオノーラはアルヴァーロと恋人関係にありますが、父親が交際を反対しています。
二人は駆け落ちをしようとしますが、父親が止めに入り一触即発となります。

そのときに不幸なことにアルヴァーロの銃が暴発し、レオノーラの父親が死んでしまいます。
二人は逃走します。

 二人は途中で生き別れ、レオノーラは「アルヴァーロに捨てられた」とアルヴァーロは「レオノーラは死んだ」と勘違いしています。

【第2幕】
カルロ(レオノーラの兄)は、復讐のためにアルヴァーロを探しています。
一方レオノーラは洞窟に籠り、神に祈りを捧げています。


【第3幕】
戦場でカルロとアルヴァーロは偶然出会い、彼らは決闘となります。
決闘の後、アルヴァーロは修道院へ入ることを決意します。


【第4幕】
カルロが修道院を訪れ、カルロとアルヴァーロは再び決闘となります。
二人が決闘した場所は、偶然にも「レオノーラが祈りを捧げている場所」でした。

アルヴァーロはカルロを刺したところに、レオノーラが現れます。
瀕死のカルロは、復讐のために妹(レオノーラ)を刺します。

レオノーラが息絶え、悲しみの中でオペラが終わります。

第1幕:『運命の力』のあらすじ

レオノーラは、アルヴァーロと駆け落ちしようとしている

セビリア:カストラーヴァ侯爵邸
レオノーラはアルヴァーロと愛し合っていますが、父(カストラーヴァ侯爵)に強く反対されています。
彼女は駆け落ちの準備をはじめ、「私のなつかしの故郷よ、さようなら。」と苦しい心の内を歌います。(Me, pellegrina ed orfana)

"Me, pellegrina ed orfana"

そこにアルヴァーロがレオノーラを迎えに現れます。
アルヴァーロが情熱的に愛を歌い、ようやくレオノーラも旅たつ決心を固めます。

 アルヴァーロは純粋なスペイン人ではなく、インカ帝国の血も交じっています。
そのため、レオノーラは父親に交際を反対されています。

アルヴァーロの銃が暴発し、侯爵(恋人の父)を殺してしまう

しかし、異変に気付いた侯爵(父)が、剣を握りしめて入ってきます。
アルヴァーロはピストルを取り出して身構えますが、レオノーラのために応戦することをやめます。
そして、銃を床に投げ捨てます。

すると銃が落ちたはずみで暴発し、侯爵に直撃します。
侯爵は息絶えてしまい、アルヴァーロはレオノーラを連れてその場から逃走します。

第2幕:『運命の力』のあらすじ

カルロ(レオノーラの兄)が「妹とアルヴァーロ」を探している

第1幕から18か月後:オルナチュエロス(スペイン西部)村の居酒屋
カルロ(レオノーラの兄)が学生に変装し、「レオノーラとアルヴァーロ」を探しています。
偶然居合わせた男装したレオノーラは、兄に気づき慌てて身を隠します。

そこにプレツィオジッラ(占いが得意なジプシー)が現れ、「カルロの不吉な未来」を予言し、彼が学生でないことを見破ります。

カルロは、アルヴァーロに復讐しようとしている

巡礼が通りかかると、カルロはその中に「男装したレオノーラ」を見つけます。
カルロは執拗に「あれは女じゃないか?」と行商人に尋ねるので、カルロは反対に村長から素性を怪しまれます。

カルロはペレーダと偽名を名乗り、「父親が殺された事件」を友人の話として語りだします。
そして「その息子は、父を殺した外国人(アルヴァーロ)に復讐を誓った!」と歌います。

レオノーラは「アルヴァーロに捨てられた」と勘違いしている

オルナチュエロス村近郊:修道院の前
男装したレオノーラが、修道院の前で「マリア様、私の罪を許してください。そしてあの男を忘れさせてください。」と歌っています。(Madre, pietosa vergine)

 レオノーラは「アルヴァーロが自分を捨てて逃げた」と勘違いしています

"Madre, pietosa vergine"

レオノーラは神に祈りを捧げるために、洞窟にこもる

レオノーラはグァルディアーノ(修道院長)を呼び、「自らに起こった出来事」を語ります。
そしてレオノーラは修道院長の許可を得て、洞窟で神に祈りを捧げることとなります。

第3幕:『運命の力』のあらすじ

アルヴァーロは「レオノーラが死んだ」と勘違いしている

イタリアの戦場:夜の森

 アルヴァーロはスペイン軍の一員として、戦場にいます。

アルヴァーロは「レオノーラが死んだ」と勘違いし、戦場で死を求めています。
そして「天使の胸に抱かれたあなたは…」と彼女を偲んでいます。(La vita è inferno all'infelice/O tu che in seno agli angeli)

"La vita è inferno all'infelice/O tu che in seno agli angeli"

アルヴァーロが、偶然カルロ(恋人の兄)を助ける

そんなとき、アルヴァーロは「賭けのいざこざ」でトラブルになったある人物を助けます。
それはカルロ(レオノーラの兄)でした。

 アルヴァーロとカルロは偽名を名乗っているため、お互いの素性は知りません。

二人には友情が芽生え、それぞれ再び戦場へ向かっていきます。

カルロが「友人は宿敵アルヴァーロだった」ことに気づく

スペイン軍の宿舎
スペイン軍は勝利を収めますが、アルヴァーロが重傷を負って運ばれてきます。
アルヴァーロはカルロに「私には秘密がある。もし私が死んだら、これを焼いてくれ。」と頼み、カバンを渡します。

カルロもそれを誓いますが、衝動的にカバンをこっそり開けてしまいます。
カバンからは「レオノーラの肖像画」が出てきます。

そこに「アルヴァーロが助かった知らせ」が入ってきます。
カルロは「私は何て幸せなんだ!これで復讐を果たせる!」と喜びます。

"Urna Fatale"

 カルロがカバンを開けてアルヴァーロの正体に気づき、復讐を喜ぶ場面

アルヴァーロが修道院に入ることを決意する

軍のテントがある野営地:夜更け
アルヴァーロの傷は回復しています。
カルロはアルヴァーロに決闘を申し込み、アルヴァーロは約束を破って「カバンを開けた」ことを怒ります。

そしてアルヴァーロは、二人の会話の中で「レオノーラが生きている」ことを理解します。
アルヴァーロは「一緒にレオノーラを探そう」と語りますが、カルロの復讐心はおさまらず、決闘が始まります。

兵士の制止でカルロは連れていかれ、アルヴァーロは修道院に入ることを決意します

夜明け
夜が明けると辺りは賑やかになります。
プレツィオジッラ(占いが得意なジプシー)が戦場の明るい未来を歌い、メリトーネ(修道士)がそれにあきれ返ります。

第4幕:『運命の力』のあらすじ

カルロがアルヴァーロを挑発し、決闘へと向かう

5年後の修道院
カルロが、ラファエル神父(アルヴァーロ)との面会に現れます。

 アルヴァーロは修道院に入り、ラファエル神父となっています。

未だに復讐心に燃えるカルロは、アルヴァーロに罵声を浴びせ挑発します。
信仰の道を進みたいアルヴァーロでしたが、やがてカルロの挑発に乗ってしまいます。

二人は剣を持ち、決闘をするために立ち去っていきます。

アルヴァーロがカルロを刺す

レオノーラの祈る洞窟
洞窟で、レオノーラが「アルヴァーロ、あなたを愛しています。神様、私を死なせてください。」と祈っています。(Pace, pace, mio Dio!)

"Pace, pace, mio Dio!"

そこに人の気配がします。
レオノーラが隠れると、「瀕死のカルロ」と「剣を持ったアルヴァーロ」が現れます。
レオノーラとアルヴァーロは不幸な再会を果たします。

カルロがレオノーラを刺す

レオノーラは「恋人が兄を刺した」ことに混乱し、その場を去っていきます。
すると瀕死のカルロが、最後の力を振り絞ってレオノーラを刺します。

レオノーラは致命傷を負い「兄は私の血で私たちに復讐した。」と語ります。
そしてレオノーラは、アルヴァーロに「天国で待っています。さようなら。」と言葉を残し、息絶えます。

悲しみの中で、オペラは終わります。

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