ドミートリイ・ドミートリエヴィチ・ショスタコーヴィチ(Dmitrii Dmitrievich Shostakovich/1906年~1975年)の「交響曲第5番」は、1937年に作曲された彼にとって5番目の交響曲です。
ショスタコーヴィチの作品の中でも人気の高い作品の一つでもあります。

 日本では「革命」という副題で取り上げられることもありますが、ショスタコーヴィチ自身は副題は付けておらず、これは日本限定で呼ばれるものです。

交響曲第5番は「正当な批判に対する、ある芸術家の創造的回答」とも呼ばれています。

また第1楽章後半でオペラ「カルメン」のハバネラを彷彿させる音楽が登場しますが、作曲当時ショスタコーヴィチが恋をしていた女性が別の男性と結婚しカルメンという姓になったという話もあります。

ここではショスタコーヴィチ「交響曲第5番」の解説や名盤を紹介したいと思います。

危険と隣り合わせの作曲活動

ショスタコーヴィチが音楽活動をしていたころのソ連は社会主義の名のもとに恐怖政治をおこなっている時代でした。
社会主義のソ連のもとでは、音楽活動も自由にすることもできません。
作曲家たちは自分たちの作品を検閲され、その作品が政治的に問題がないか厳しくチェックされました。

Shostakovich

ショスタコーヴィチも例外ではなく1936年1月に共産党中央機関誌「プラウダ」紙は、人気も高かったショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンスクのマクベス夫人」を厳しく非難します。
そしてショスタコーヴィチは音楽としてだけではなく体制への反逆者として見られるようになってしまいます。
交響曲第5番の前年に書かれた第4番(1936年)はそれが原因で演奏する機会をえることができませんでした。
この交響曲第4番は完成したのにもかかわらず、その後1961年に初演されるまで25年もの間、日の目を見ることはありませんでした。

この当時はスターリンの粛清が嵐のように吹き荒れており、ショスタコーヴィチの近親者や友人たちも次々と投獄され、処刑されるものもいました。
ショスタコーヴィチも当局に事情聴取を受けており、その危険はショスタコーヴィチ自身にも及ぶ恐れもありました。
そのショスタコーヴィチを危険から守り名誉を回復させたのが「交響曲第5番」でした。

大成功お収めた交響曲第5番

前衛的な手法を取り入れた交響曲第4番に対し、この第5番は古典的で比較的わかりやすい音楽となっています。
そしてこれが幸いし第5番は革命20周年(1937年)に初演され、ソ連内で大きな評価を得ました。
ベートーヴェン風の英雄主義の音楽性が、社会主義を表していると受け取られたのです。
そしてこの作品は社会主義リアリズムの傑作として称えられました。
初演終了後は強烈なスタンディングオベーションが起こったそうです。

さらに国外でも第5番は評価を高め、ショスタコーヴィチはこれ以降名誉を回復していくことになります。
一聴すると古臭く感じるかもしれないこの第5番ですが、近年では引用や暗示を暗号とする体制告発のメッセージとしても解釈されるようになってきています。

曲の構成

古典的な4楽章で構成されており、演奏時間は45分程度です。

第1楽章 Moderato - Allegro non troppo 4/4拍子 ソナタ形式 ニ短調

弦楽器が主題をカノンで提示し、その後2つの主題によるソナタ形式で演奏されます。
第2主題と再現部では「ハバネラ」(ビゼー作曲「カルメン」より)のメロディーが聴こえてきます。
曲の盛り上がりでは主題を大きく変形した二重カノンがあらわれ、最後はチェレスタの半音階で第1楽章は閉じます。

第2楽章 Allegretto スケルツォ 3/4拍子 複合三部形式 イ短調

第1楽章の第1主題の変形が主題に用いられています。
マーラーの交響曲などで登場するレントラー風のワルツを、中間部のトリオで聴くことが出来ます。
また第2楽章でも「ハバネラ」をはじめとするオペラ「カルメン」のメロディーが流れます。

第3楽章 Largo 緩徐楽章 4/4拍子 特殊な形式 嬰ヘ短調

マーラーの「大地の歌」やロシア正教聖歌を思い来させる音楽が流れ、これは死と暗に示していると言われています。
悲しみに満ちた音楽で、初演に立ち会った聴衆は涙を流したそうです。

第4楽章 Allegro non troppo 4/4拍子 特殊な構成(三部形式に近い) ニ短調

第4楽章においても「ジプシーの歌」「ハバネラ」などの「カルメン」の音楽を聴くことが出来ます。
最後のファンファーレにショスタコーヴィチの神髄が聴いて取れるとも言われています。

ショスタコーヴィチ「交響曲第5番(革命)」の名盤

ショスタコーヴィチ「交響曲第5番(革命)」の録音として筆頭に上がるものの一つが、このムラヴィンスキー指揮によるレニングラード・フィルによる演奏です。
ソ連の匂いを強く感じさせる1枚です。