アントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi/1678年~1741年)の「四季」は1725年に出版された作品です。
クラシックファン以外の方も1度は聴いたことがあるであろう人気のある曲でもあります。
爽やかな光が差しこむような音楽が印象的な「春」が特に人気が高い曲です。
日本でももちろん人気が高いわけですが、それは日本自体が四季に富んだ国だということと関係が深いと思われます。

 「四季」とは「和声と創意への試み」の中の第1曲から第4曲までを「春」「夏」「秋」「冬」名付けたものの総称ですが、これはヴィヴァルディ自身が付けたものでがありません。

ちなみにこの「四季」はもちろん日本の四季ではなく、ヴィヴァルディが生まれ育ったイタリアのヴェネツィアの四季です。
日本の四季との印象の違いを感じてみるのも面白いかもしれませんね。

ここではヴィヴァルディ「四季」の解説や名盤を紹介したいと思います。

ヴィヴァルディ「四季」の演奏

Budapest Strings
Conductor:Bela Banfalvi

[00:00]協奏曲第1番:春(La primavera)
[10:31]協奏曲第2番:夏(L’estate)
[20:59]協奏曲第3番:秋(L’autunno)
[32:48]協奏曲第4番:冬 (L’inverno)

バッハ以前の重要人物

クラシック音楽はバッハ以降が語られることが多く、実際に今日演奏される作品の多くはバッハ以降の音楽です。
そんな中、このヴィヴァルディの「四季」はバッハ以前の音楽で上演機会が多い作品の一つです。

忘れ去られていたヴィヴァルディ

バロックを代表する大家であったバッハがそうであったように、ヴィヴァルディもまた18世紀末から19世紀末にかけて忘れ去られた存在になっていました。
19世紀末になってようやく再評価されたわけですが、この「四季」が見つかったのはそれ以降のことです。

耳馴染みがある名曲ですので意外かもしれませんが、四季の楽譜が再発見され出版されたのは第2次世界大戦後の1949年のことでした。
戦前のクラシックファンはこの名曲「四季」の存在すら知らなかったというわけです。

vivaldi

戦後1952年に結成されたバロックを中心に演奏するイタリアの室内楽団「イ・ムジチ合奏団(I Musici)」が、「四季」を演奏したことで日本でも人気に火か付きました。
ちなみに「イ・ムジチ合奏団」のこれまでの録音の合計は、日本だけで300万枚近くも売れています。

カトリック教会の司祭

ヴィヴァルディはカトリック教会の司祭であったことでも有名で、その風貌から「赤毛の司祭」と呼ばれていました。
そして司祭と並行しながら音楽家としての道も進んでいきます。

作曲家としても秀でていましたが、ヴィヴァルディはヴァイオリンの腕も一流でした。
ヴァイオリニストとしても演奏旅行をおこない、ヴェネツィアの音楽院ではヴァイオリンを教えたりもしました。
作曲家としてはジャンルに縛られることなくまさに多彩な音楽を作曲しました。
500以上の協奏曲、52の現存するオペラ、73のソナタをはじめ室内楽曲・シンフォニア・オラトリオ・宗教音楽・カンタータなどそれは多岐にわたります。

「四季」はそんなヴィヴァルディが円熟期を迎えた頃の作品で、同年代の作曲家たちからもこの「四季」は高い評価を受けました。

ヴェネツィアの四季

曲の構成に入る前に、ヴェネツィアの四季について少し記載します。

ヴェネツィアは日本と同じように四季を感じられる地域です。
またヴェネツィアは水に囲まれているため、湿気の多いのも特徴的です。

venezia

街並みは「ディズニーシー」を思い浮かべてみるのが、一番近いかもしれません。
アトラクションの「ヴェネツィアン・ゴンドラ」の周りは、まさにヴェネツィアの景色そっくりです。

【春】
雨が多くなります。
【夏】
雨は少ないですが蒸し暑いのが特徴的で、寒暖差も激しいです。
夏でも夜は長袖が必要になるくらいの寒さになります。
【秋】
雨が多くなります。10月には寒くなるため、秋はとても短いです。
【冬】
3月ごろまで寒さが続きます。
冬から春にかけては「アックア・アルタ」(満潮のときに起こる)と呼ばれる現象で、路上まで水が押し寄せることもあります。

曲の構成

協奏曲第1番:春(La primavera)

日本人が最も聴いたことがある「春」が最初に登場します。

Allegro

冒頭の春の訪れの音楽は、「四季」の中でも最も有名なメロディーです。
小鳥のさえずりの中、やがて嵐が訪れますが、最後に再び春の小鳥のさえずりが聴こえます。

Largo e pianissimo sempre

牧草地で犬の側で羊飼いが眠る様子を表現した音楽です。
低音楽器は登場せず、ヴィオラの音は犬の鳴き声を模しています。

Allegro pastorale

羊飼いが踊る様子を表現したこの陽気な音楽も、聴き馴染みのある印象的なメロディです。
pastoraleとはイタリア語で羊飼いを意味します。

協奏曲第2番:夏(L'estate)

Allegro non molto

夏の暑さで人と羊がぐったりとしています。
日本の夏と言えば「夏休み」で元気なイメージがありますが、それとは大きく異なります。
カッコウやキジバトの鳥の鳴き声や、北風や嵐などの自然も登場します。

Adagio e piano - Presto e forte

雷が登場するほか、なんと騒がしいハエ(蠅)も登場します。
汚いハエの様子はヴァイオリンが表現しているため、幾分か美しく聴こえてしまいます。

Presto

激しい嵐の様子が描かれています。

協奏曲第3番:秋(L'autunno)

Allegro

農民が豊作を祝って踊る様子が描かれています。
ワインで酔っぱらった彼らは、やがて眠りについてしまいます。

Adagio molto

宴会終わりの農民が眠った様子を穏やかに表現しています。

Allegro

夜が明けると、狩人が犬と共に狩りに出掛けます。
逃げる獲物を必死に追いかけ、最後に獲物を仕留めます。

協奏曲第4番:冬 (L'inverno)

Allegro non molto

雪の中、寒さで震えながら歩いています。
冷たく厳しい風や、寒さから来る歯ぎしりも表現されています。

Largo

雰囲気がガラリと変わって、暖かな屋内で穏やかに過ごす様子が描かれています。
ここで奏でられるソロヴァイオリンのメロディは、優雅でとても美しいのが印象的です。

Allegro

氷の上を転ばないように注意深く歩く様子が描かれています。
しかし最後には転んでしまい、冷たい風が吹き付けます。

ヴィヴァルディ「四季」の解説とオススメ名盤

前述したイ・ムジチ合奏団による「四季」の演奏です。
1959年に録音された演奏で音符通りのナチュラルな演奏が人気の理由の一つでもあります。

イ・ムジチ合奏団(I Musici)
イタリアの室内楽団
1952年に、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアの卒業生12名が集まって結成。
日本で初めてクラシック音楽でのミリオンセラーを記録した。

その他の録音

ヴィヴァルディ「四季」のその他の録音も紹介したいと思います。

カラヤン&ベルリン・フィル

karajan
古楽器で演奏されるバロックな雰囲気とは反対にある、カラヤン&ベルリン・フィルによるヴィヴァルディ「四季」です。
好みが別れることもあるかもしれませんが、重厚な「四季」も聴きごたえがあります。
カラヤンが1970年代に録音したもので、他には アルビノーニ「アダージョ ト短調」、コレルリ「合奏協奏曲 ト短調(クリスマス協奏曲)」も収録されています。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan/1908年4月5日-1989年7月16日)
オーストリアの指揮者

1955年から1989年までベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者・芸術監督を務める。
ウィーン国立歌劇場の総監督やザルツブルク音楽祭の芸術監督も務めるなど、歴史上最も偉大な指揮者の一人である。
日本には11度も来日しており、日本人には小澤征爾が師事したことでも知られている。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)
世界を代表するオーケストラの一つで、日本において絶大な人気を誇る。
重厚なドイツ的サウンドを奏でながらも、バラエティに富んだプログラムを演奏し常に世界の最先端をリードしている。

ジャニーヌ・ヤンセン

jansen
1978年オランダ生まれのヴァイオリニスト、ジャニーヌ・ヤンセンによるヴィヴァルディ「四季」です。
世界中で活躍する現役の売れっ子ヴァイオリニストで、日本では2016年の来日公演が最も記憶に新しいところです。
2004年に故郷オランダで録音されており、各パート一人ずつという最小の編成で「四季」を聴かせてくれます。