項目データ
作曲1856年
初演1870年
台本リヒャルト・ワーグナー
演奏時間3時間40分

リヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレ(Die Walküre)』は、『ニーベルングの指環』4部作の2作目(第1日)に当たります。
『ニーベルングの指環』の中でも特に人気が高く、上演される機会も多い楽劇です。

 ワルキューレは、"戦場において死を定めて勝敗を決める"女性的存在です。
彼女たちには、戦死した勇士をヴァルハラ城(天上)へ運ぶ役割があります。
この楽劇では9人のワルキューレが登場します。

『ニーベルングの指環』は、
・序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)
・第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)
・第2日 『ジークフリート』(Siegfried)
・第3日 『神々の黄昏』(Götterdämmerung)
の4部からなり、上演に約15時間も要する大作です。
台本は、北欧神話の物語を基としたワーグナーの独自の世界観が描かれています。

すべてを作曲するのに26年もの歳月をかけ、全曲初演は1876年8月13日にようやくおこなわれました。(第1回バイロイト音楽祭)
このバイロイト音楽祭は、『ニーベルングの指環』を上演するためにワーグナー自らが創設した音楽祭です。

ここでは、そんなワーグナー『ラインの黄金』のあらすじを紹介したいと思います。

【4部作すべての概要はこちらから】

登場人物

【ヴォータンと人間の女との間の子】
ジークムント(テノール)
ジークリンデ(ソプラノ):ジークムントの双子の妹
【ジークリンデの夫】
フンディング(バス):ジークムントの宿敵
【神々】
ヴォータン(バリトン):天上に住む神々の主神
フリッカ(メゾソプラノ):ヴォータンの妃
【ワルキューレ】
ブリュンヒルデ(ソプラノ):ヴォータンと智の女神エルダの娘。
他8人のワルキューレ

『ラインの黄金』と『ワルキューレ』の間の出来事

神々の長ヴォータンは"神々の終焉"を恐れ、知恵の女神エルダを訪れます。
そこでエルダとの間に子供ブリュンヒルデをもうけます。
他の女神との間にも子供を作り、ブリュンヒルデ含む8姉妹をワルキューレとして育て上げます。

またヴォータンは指輪を取り返したいが、契約のため自らでは取り返せません。
そこで人間界に降り、名をヴェルゼと名乗って、人間との間に双子の兄妹を作ります。
それが、ジークムントジークリンデです。

『ワルキューレ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

 ジークムントとジークリンデ:ヴォータンと人間の間にできた双子の兄妹

【第1幕】ジークムントとジークリンデは、互いに惹かれ合います。ジークムントは宿敵との決闘のために伝説の剣「ノートゥング」を引き抜きます。

 ヴォータン:神々の長
ブリュンヒルデ:ヴォータンの娘で、ワルキューレの一人。

【第2幕】ブリュンヒルデは、ヴォータンの命令に背いて、ジークムントを勝たせようとします。しかしヴォータンが決闘に割って入り、ジークムントは息絶えます。

【第3幕】ジークリンデ(妹)に、兄との子供ジークフリートが宿っていたことがわかります。ブリュンヒルデは命令に背いた罰として、岩山に眠らされます。

 眠らされたブリュンヒルデの岩山には、”真の英雄のみが近づける"ようになっています。

ジークムント
双子の妹ジークリンデと禁断の愛を犯してしまったんだ。そして、妹との間には子供(ジークフリート)が宿ったんだ。

ブリュンヒルデ
父ヴォータンの命令に背いて、ジークムントを勝たせようとしたの。それが原因で岩山に眠らされたわ。

第1幕『ワルキューレ』のあらすじ

フンディングの家

ジークムントが逃げてくる

ジークムントが嵐の中逃げまどい、フンディングの家の前で疲れ果てて倒れ込みます。
彼は戦いで孤軍奮闘しましたが、武器を失ってしまいました。
そこにフンディングの妻ジークリンデが現れ、彼を介抱します。
二人はお互いに惹かれ合います。

フンディングが帰還

そこにフンディングが戻ってきます。
彼はジークムントに身の上を尋ねます。
話が進むにつれ「ジークムントフンディングが逃した敵」だったことが判明します。
「一晩泊めた後に明日決闘する」ことが決まり、フンディングは妻と寝室へと消えます。

一人残ったジークムントは、父との約束を思い出します。(Ein Schwert verhieß mir der Vater)
父は別れる際に、「危機が迫ったときに剣を授ける」ことを約束していたのです。

ジークムントが"伝説の剣"を引き抜く

一方、ジークリンデは「ジークムントが生き別れた兄」だと悟ります。
そして夫フンディングに眠り薬を飲ませ、ジークムントを訪れます。

ジークリンデジークムントに、「フンディングと無理やり結婚させられた」ことを話します。
そして、「トネリコの幹に"未だ誰も抜いたことのない"剣が刺さっている」と武器のありかを教えます。

ジークムントは彼女を抱き、復讐を誓います。
二人は春の月光の下で再会を喜び、ジークムントの歌(Winterstürme wichen dem Wonnemond)にジークリンデが答えます。(Du bist der Lenz)

「Winterstürme wichen dem Wonnemond/Du bist der Lenz」

ジークムントは、幹から誰も抜いたことのない剣を引き抜き「ノートゥング」と名付けます。
二人がフンディングの家から去り、1幕は終わります。

第2幕『ワルキューレ』のあらすじ

ヴォータンが「ジークムントの勝利」を命じる

ヴォータンブリュンヒルデに、「今日の決闘はジークムントに勝たせる」ように命じます。

 ヴォータン:天上に住む神々の主神
ブリュンヒルデ:ヴォータンと智の女神エルダの娘で、ワルキューレの一人。

ブリュンヒルデは歓声を上げて、その場を去ります。(Hojotoho! Hojotoho!)

「Hojotoho! Hojotoho!」

ヴォータンの妃フリッカが「ジークムントの勝利」に不満

そこにヴォータンの妃フリッカが現れます。

フリッカは、
・人間との間に生まれた子に剣を与えたこと
ジークリンデジークムントが、双子でありながら恋愛関係にあること
の不満を訴え、ジークムントに処罰を求めます。

 近親相姦は、神々のみに許されたものでした。
ギリシア神話の最高神ゼウスと妃ヘーラーも夫婦であり、姉弟の関係にあります。

一転して「ジークムントの敗北」を命じる

ヴォータンは戻ってきたブリュンヒルデに、
ジークムントではなくフンディングに勝利を与える」よう
命じます。
ブリュンヒルデは反論しますが、仕方なく父ヴォータンの命令を受け入れます。

ブリュンヒルデが「父ヴォータンの命令」に従わない

ジークムントジークリンデが逃げているところに、ブリュンヒルデが現れます。
ブリュンヒルデジークムントに死を告知し、「あなたをヴァルハラ城へ連れていく。」と語ります。

 ワルキューレの役割は、"戦場の死を選定し、その死者をヴァルハラ城(天上)へ運ぶこと"です。

しかしブリュンヒルデは、「ジークムントジークリンデを想う愛の強さ」に深く感動します。
そして「ヴォータンの命令に背いて、ジークムントを勝たせる」ことを約束します。

ヴォータンの手によりジークムントが刺される

フンディングが現れると、二人の決闘がはじまります。
しかしジークムントが勝利をおさめようと剣を振りかぶった時、ヴォータンが現れ割って入ります。
ジークムントの剣は槍で砕かれ、槍がジークムントの胸に突き刺さります。
ジークムントは命を落とします。

ブリュンヒルデは"ショックで気絶したジークリンデ"を馬に乗せて、砕けた剣の破片を持ち、その場から逃げます。
ヴォータンフンディングも打倒し、逃げたブリュンヒルデを追います。

第3幕『ワルキューレ』のあらすじ

「ワルキューレの騎行」

ワルキューレたちが空を駆け巡り、岩山に集まります。(ワルキューレの騎行)
彼女たちがブリュンヒルデの帰りを待っていると、なんとブリュンヒルデが「人間(ジークリンデ)を乗せた状態で、しかもヴォータンに追われて」やってきます。

ブリュンヒルデは事情を話し助けを求めますが、ワルキューレたちは彼女を非難します。

「ワルキューレの騎行」

ジークリンデに子(ジークフリート)が宿っていた

ジークリンデは死を考えますが、体内に新たな命が宿っていることが告げられます。
ブリュンヒルデは「この子供は、いずれ"剣の破片を継ぎ合わせてできた剣"をふるう勇士です。」と語り、その子の名を「ジークフリート」と名付けます。

 名前に度々登場するジーク(Sieg)とは、ドイツ語で「勝利」という意味です。

ジークリンデは生きて子を産むことを決心します。
そして剣の破片を受け取ると、急いで逃げていきます。

ブリュンヒルデが岩山に眠る

そこに怒り狂ったヴォータンが現れます。
ブリュンヒルデは、「父(ヴォータン)の本心に気付き、命令に従わなかった」と弁明します。

ヴォータンは心を打たれますが、それでも「罪は受けてもらわなければいけない」と告げます。

ヴォータンブリュンヒルデに別れを告げます。(Leb' wohl du kühnes, herrliches Kind!)
ブリュンヒルデは神性を抜きとられ、岩山の上に眠らされます。
さらに、岩山は"真の英雄のみが近づけるよう"に炎で囲まれます。

ヴォータンが立ち去り、全幕は終わります。

「Leb' wohl du kühnes, herrliches Kind!」

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