目次
項目 | データ |
---|---|
初演 | <改訂版>1916年10月4日 ウィーン宮廷劇場 |
台本 | フーゴ・フォン・ホフマンスタール |
演奏時間 | 約2時間(第1幕40分、第2幕80分) |
リヒャルト・シュトラウス作曲の『ナクソス島のアリアドネ』(Ariadne auf Naxos)は、彼には珍しく少ないオーケストラ編成(36人)でのオペラです。
元々は、モリエールの戯曲『町人貴族』の劇中劇としてベルリンのドイツ劇場のために作曲されたものでした。
舞台構造の都合上シュトゥットガルト宮廷劇場(1912年10月25日)で初演されたこの作品ですが、初演は失敗に終わってしまいます。
失敗の原因の一つは「演奏時間が長すぎた」とも言われています。
この失敗した作品を改訂し、さらに前半にプロローグ(序劇)を加えて完成したものが『ナクソス島のアリアドネ』です。
改訂版のオペラ部分でも『町人貴族』の劇中劇という設定は同じです。
改訂後のウィーンでの初演は大成功を収め、現在でも彼の人気のあるオペラ作品の一つとして上演され続けています。
ここでは、そんなリヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』のあらすじを紹介したいと思います。
登場人物
登場人物 | 詳細 |
---|---|
プリマドンナ、アリアドネ | ソプラノ |
作曲家 | ソプラノ |
踊り子、ツェルビネッタ | ソプラノ |
テノール歌手、バッカス | テノール |
音楽教師(舞台監督) | バリトン |
その他に
・執事長(語り役)/士官(T)/舞踏教師(T)/かつら師(B)/スカラムッチョ(T)/ハルレキン(Br)/トルファルディン(B)/ブリゲルラ(T)/エコー(S)
など
『ナクソス島のアリアドネ』の簡単なあらすじ
前半:プロローグ
邸宅では、新作の悲劇「ナクソス島のアリアドネ」の上演の準備がはじまっています。
そこに「終演後に喜劇が上演される」という知らせが入ります。
音楽教師は怒りますが、相手にされません。
さらには邸宅の主人によって「悲劇と喜劇を同時に上演せよ」という無理難題が突き付けられます。
作曲者・出演者らによるドタバタ劇が繰り広げられ、後半のオペラ上演へと突入します。
後半:オペラ
ギリシアの孤島、ナクソス島
アリアドネは夫に捨てられ、死を望んでいます。
道化師やツェルビネッタが励ましますが、効果はありません。
そこにバッカス(酒の神)が登場します。
アリアドネは彼を「死の神」だと勘違いし身を委ねます。
バッカスは自分は「酒の神」だと名乗り、彼女にキスをします。
すると彼女の悲しみは消え去ります。
死が生へと変わり、新しい愛が生まれオペラが終わります。
プロローグ(序劇):『ナクソス島のアリアドネ』のあらすじ
祝宴後に開かれる「オペラ」の準備で舞台裏は大忙し
18世紀:ウィーンの富豪の邸宅
今夜の祝宴の後には、オペラ・セリア(悲劇)『ナクソス島のアリアドネ』の上演が予定されています。
皆はその準備で大忙しです。
「悲劇」の後に「喜劇」を上演!?
そんな中、音楽教師(舞台監督)が執事に
「悲劇の後に喜劇を上演することにしたんだって!」
「ありえない!作曲家もきっと許さんぞ!」
と怒っています。
しかし、執事は
「決定権があるのは、ご主人様(ウィーンの富豪)だけです。」
と相手にしません。
一方、作曲家(音楽教師の弟子)はオペラの「最後の稽古」をしようと皆を探しています。
しかし召使たちに馬鹿にされ、メンバーは集まりません。
また、テノール歌手は「かつらの出来が悪い」と不満をぶちまけています。
「悲劇側vs喜劇側」の口げんか
やがてツェルビネッタ(喜劇に出演する踊り子)が登場します。
アリアドネ(悲劇に出演するプリマドンナ)らも登場すると、「悲劇側vs喜劇側」で以下のような口げんかが始まります。
【会話の内容】
舞台教師(ツェルビネッタに)「あのオペラは退屈だよね。」
音楽教師(作曲家に)「あいつがツェルビネッタだって。オペラの後に踊るらしいよ。」
作曲家「あー、余韻が台無しだ!」
プリマドンナ(皆に聞こえるように)「あんな人たちと一緒なんて最悪よ。」
ツェルビネッタ(大声で)「あんな退屈なオペラをやるぐらいなら、先に私たちにやらせてほしいわ。」
悲劇と喜劇の「同時上演」が決定!
そこに執事が登場します。
執事は「主人の命令で、予定変更です。悲劇と喜劇の同時上演をしてもらいます。」と報告します。
喜劇側(舞台教師やツェルビネッタ)はすぐに了承しますが、悲劇側(特に作曲家)は絶望します。
アリアドネとテノール歌手は「自分ではなく、相手の歌の方をカット」するよう音楽教師にこっそり話します。
やがて、ツェルビネッタの甘い説得で作曲家も変更を了承します。
そして「オペラをカットして、バレエを挿入する」ことでまとまります。
ついに上演となると、喜劇役者たちはふざけた格好をして舞台に上がります。
作曲家は騙されたことに気づきますが、「時すでに遅し」…舞台の幕は上がっていきます。
オペラ:『ナクソス島のアリアドネ』のあらすじ
アリアドネが夫に捨てられ、悲しんでいる
ギリシャの孤島 ナクソス島の洞窟
アリアドネは夫テシウスに置き去りにされ、嘆き悲しんでいます。
ニンフたちが慰めますが、アリアドネは絶望のあまり死を望みます。
皆の励ましも、アリアドネには効果なし
そこにツェルビネッタら喜劇役者たちが登場します。
アリアドネは彼らの登場に気づかず、相変わらず嘆いています。(Ein Schönes war)
「Ein Schönes war」
ハルレキンが陽気に歌っても、道化師たちが励ましても、アリアドネには効き目はありません。
ツェルビネッタが「新しい恋」を勧めても同様です。(Großmächtige Prinzessin)
「Großmächtige Prinzessin」
バッカスのキスで、アリアドネが生きる喜びを取り戻す
そこにラッパの音に続いて、バッカス(酒の神)が登場します。
アリアドネは「バッカスは死の神」だと勘違いし、彼の胸に飛び込みます。
バッカスも彼女の美しさに魅了され、互いに惹かれ合っていきます。
やがてバッカスは「自分は酒の神」だと告げ、アリアドネにキスをします。
すると彼女の苦しみは消え去り、生きる喜びが溢れてきます。
ツェルビネッタが見守り、ニンフたちの美しい歌声の中でオペラの幕は下ります。
『ナクソス島のアリアドネ』の映像
2014年10月にティーレマン指揮で上演された『ナクソス島のアリアドネ』です。(ウィーン国立歌劇場)
ティーレマンはシュターツカペレ・ドレスデンでも同オペラを録音しており、シュトラウスを得意とする彼の美しい音楽は言うまでもありません。
歌曲やコンサート曲でも活躍するソイレ・イソコスキ(アリアドネ)をはじめ、キャスト人も充実しています。
ダニエラ・ファリーはウィーン国立歌劇場の来日公演でもツェルビネッタを演じており、同じく来日で記憶に新しいソフィー・コッシュは2022年でもスカラ座で作曲家を演じる予定です。
2016年に若くして亡くなったヨハン・ボータも、ヘルデン・テノールらしい力強い歌声を聞かせてくれます。
【プロローグ】
ハンス・ペーター・カンメラー(執事長)
マルクス・アイヒェ(音楽教師)
ソフィー・コッシュ(作曲家)
ノルベルト・エルンスト(舞踊教師)
他
【オペラ】
ソイレ・イソコスキ(アリアドネ)
ヨハン・ボータ(バッカス)
ダニエラ・ファリー(ツェルビネッタ)
他
ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団
指揮:クリスティアーン・ティーレマン
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ
その他の曲目一覧(目次)
その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。