ブラームス交響曲第1番
作曲1854-1976年
初演1876年11月4日
演奏時間約50分

ヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms/1833年-1897年)の『交響曲第1番』は、最も人気のあるブラームスの交響曲です。
21年もの年月をかけた大作で、完成したのは彼が43歳のときでした。

ブラームス『交響曲第1番』の演奏

hr交響楽団(hr-Sinfonieorchester)
指揮:スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ(Stanisław Skrowaczewski)

完成までに21年もかかった作品

最初にブラームスが交響曲の作曲を考えたのは、22歳のときでした。
きっかけは恩師シューマンの『マンフレッド序曲』を聴いたときだそうです。

 シューマンが「ブラームスを賛辞する記事」を書いたことで、ブラームスは一躍注目を浴びます。
それはブラームスが20歳の頃でした。

「ベートーヴェンの交響曲」が偉大過ぎた

しかしベートーヴェンを崇拝していたブラームスは、なかなか書く気にはなれなかったそうです。
「ベートーヴェンの偉大さ」ゆえに、ブラームスの作曲は長引いたのです。

次第に作曲家としての地位を既に築いていたブラームスは、ベートーヴェンの後継者としても期待されるようになります。
ブラームスは、慎重に慎重を重ねて作曲を進めていきます。

 ブラームスはベートーヴェンの他にも『バッハ、ハイドン、モーツァルト』といった先人の偉大な作曲家たちも敬愛していました。

ベートーヴェンの「運命」と「第九」

交響曲の作曲をはじめた当初(1854年)、作品はニ短調でした。
時期は、恩師シューマンが精神疾患で自殺未遂をした直後のことでした。

これは同時期に作曲が開始された『ピアノ協奏曲第1番』と同じ調で、そこにも一部転用されています。

 『交響曲第1番』は『ドイツ・レクイエム』にも転用されています。

しかし『交響曲』の調は、ハ短調へと変更されます。
これは、ベートーヴェンの『交響曲第5番(運命)』と同じ調でした。
また、第4楽章第1主題はベートーヴェンの『交響曲第9番』(第4楽章<歓喜の歌>)を思い出させます。

 オーケストラの編成も、ベートーヴェン『交響曲第5番』とほとんど同じです。

いずれもブラームス自身は意識して作曲したそうで、ベートーヴェンからの影響が大きく感じられます。

ベートーヴェンの『交響曲第10番』

1862年に第1楽章の原型が書かれました。
その頃のプレッシャーは大きいものだったようで、ブラームスは「交響曲を書くのはまっぴらだ! あの巨人(ベートーヴェン)が私の後ろに常に音を立てて近づいてくる。」と語っています。

作品がようやく完成したのは、さらに14年後のことでした。
ブラームスが43歳(1876年)の頃で、同年にめでたく初演を迎えます。

『交響曲第1番』について、当時の指揮者ビューローは「ベートーヴェンの交響曲第10番」と評しました。
ブラームスはこの例えを気に入ってはなかったそうですが、ブラームスの交響曲が認められた証でもありました。

 【ハンス・フォン・ビューロー(Hans von Bülow/1830年-1894年)】
ドイツの指揮者
当時は指揮は作曲家自身が振ることが通例でした。
ビューローは職業指揮者の先駆的者で、ここから指揮者という専門職が発展していきました。
また「ドイツ三大B(バッハ、ベートーヴェン、ブラームス)」の名付け親としても知られています。

ちなみにビューローは、ブラームスの『交響曲第2番』を「ブラームスの『田園』」と評しています。

クララへ送ったメロディも使われている

ブラームスとシューマンは師弟関係であったことで、知られています。
またブラームスは恩師シューマンの妻クララと恋愛関係にあったとも言われています。

『交響曲第1番』完成の8年前、ブラームスはクララへ誕生日を祝う手紙を送っています。
そこには歌が書かれており、その旋律が第4楽章では登場します。

 Hoch auf’m Berg, tief im Tal, grüß ich dich viel tausendmal!
(高い山で、深い谷で、私は君に何千回も挨拶する)

曲の構成

第1楽章 Un poco sostenuto - Allegro
ハ短調、序奏付きのソナタ形式 6/8拍子(9/8拍子)

第2楽章 Andante sostenuto
ホ長調、複合三部形式、3/4拍子

第3楽章 Un poco allegretto e grazioso
変イ長調、複合三部形式、2/4拍子
A-B-A'という三部形式
A'部分でベートーヴェンの「歓喜の歌」を彷彿させるメロディーが奏でられる

第4楽章 Adagio - Più andante - Allegro non troppo, ma con brio - Più allegro
ハ短調(後にハ長調)、序奏付きのソナタ形式、4/4拍子
クララへの手紙の旋律をホルンが奏で、フルートが繰り返す

ブラームス『交響曲第1番』の名盤

【収録情報作品】
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 op.68
【演奏】
パリ管弦楽団
指揮:シャルル・ミュンシュ
【録音】
1968年(パリ、サル・ワグラム)

「重厚感あふれる迫力のある演奏」で現在でも人気の高い名盤です。
名指揮者ミュンシュが亡くなる年に録音された『まさに最晩年』の作品ですが、情熱的で破壊力のある彼の演奏は健在です。

ミュンシュは録音の前年(1967年)にパリ管弦楽団の初代音楽監督に就任しましたが、翌年同団との演奏旅行中にアメリカで心臓発作で亡くなりました。
この録音は「出来立てホヤホヤのパリ管弦楽団の新しい門出の録音」でもあります。

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