ロシアの作曲家であるストラヴィンスキー(1882年~1971年)の「夜鳴きうぐいす(Le rossignol)」は、1914年に完成された作品です。
ここではストラヴィンスキー「夜鳴きうぐいす」の解説と名盤を紹介したいと思います。
長い期間作曲が中断された作品
オペラ「夜鳴きうぐいす」の作曲は、1908年に開始され順調に第1幕が書き上げられました。
しかしこのオペラの作曲は長い間中断されることとなります。
ちょうどその頃にセルゲイ・ディアギレフ(1872年~1929年)率いるロシア・バレエ団(バレエ・リュス)から作曲の依頼がストラヴィンスキーに来たのです。
ディアギレフは1909年に初演されたストラヴィンスキーの「花火」を聴いて感動し、作曲を依頼することを決めたそうです。
「三大バレエ音楽」を次々と作曲
ロシア・バレエ団は1909年に作られたばかりで、できたてほやほやの勢いのあるバレエ団でした。
このバレエ団のためにストラヴィンスキーは「火の鳥」を作曲し、1910年に初演されます。
その後もディアギレフからの信頼は厚く、次々と作曲を依頼されます。
そして「ペトルーシュカ」(1911年)「春の祭典」(1913年)をロシア・バレエ団のために作曲しました。
芸術の発展の貢献した「ロシア・バレエ団」
ロシア・バレエ団には、ストラヴィンスキーだけでなく多くの偉大な作曲家が曲を書いています。
例えばリムスキー=コルサコフ、ウェーバー、チャイコフスキー、ドビュッシー、ラヴェル、R.シュトラウスなどそうそうたるメンバーです。
音楽だけでなく美術界からはパブロ・ピカソ、ココ・シャネル、マリー・ローランサンなども起用されました。
ダンス、音楽、美術などの芸術が集結したのが「ロシア・バレエ団」だったのです。
1913年にようやく「夜鳴きうぐいす」作曲を再開
「三大バレエ音楽」作曲後にようやく落ち着いたストラヴィンスキーは、「夜鳴きうぐいす」の作曲を再開します。
しかし、この期間でストラヴィンスキーの作曲手法は変わってしまい、1幕と2,3幕の音楽性が違ったものとなってしまいました。
ストラヴィンスキー自身もそのことは十分理解していたようですが、「1幕と2,3幕では舞台が違うから、音楽が違っても問題ない」と自分に言い聞かせて作曲したそうです。
せっかく書いた1幕を書き直すのもめんどくさかったのかもしれません。
ロシア・バレエ団により初演
長い年月をかけてようやく完成した「夜鳴きうぐいす」でしたが、何と依頼先の劇場が倒産してしまいます。
そのため、このオペラはストラヴィンスキーと関係の深いロシア・バレエ団により初演されることとなりました。
倒産先が既にストラヴィンスキーに作曲料は支払っていたため、ディアギレフはタダで演奏することができたそうです。
台本を作りなおしてバレエ化
「夜鳴きうぐいす」はその後台本を作りなおして、バレエ音楽に書き直されます。
音楽は様式を統一するために2,3幕の音楽がまとめられました。
そして1920年に同じくロシア・バレエ団によって「ナイチンゲールの歌」というタイトルで初演されました。
バレエ団主催でしたので、オペラからバレエへ書き直されるのも自然の流れだったのかもしれません。
オペラ「夜鳴きうぐいす」の方は、初演は成功しましたがロシア・バレエ団で再演が多くされることはありませんでした。
あらすじ
第1幕
舞台は夜の海。
漁師が海上で歌う歌が聴こえ、その後夜鳴きうぐいすが現れる。
そこへ中国皇帝の家来がやってくる。
素晴らしい声を出すと評判の「夜鳴きうぐいす」を皇帝の代わりに探しに来たのだ。
家来は夜鳴きうぐいすを見つけ、夜鳴きうぐいすと共に中国皇帝の宮廷へ向かう。
第2幕
舞台は中国皇帝の宮廷へ移る。
夜鳴きうぐいすの歌を聴いた皇帝は感激し涙を流す。
そこへ日本の使者が登場し、本物そっくりに鳴く作り物のうぐいすを献上する。
この作りもののうぐいすを聴いている間に、本物の夜鳴きうぐいすがいなくなってしまう。
皇帝の寝室には本物ではなく偽物のうぐいすが用意されることとなる。
幕の最後に漁師の歌が聴こえる。
第3幕
時は経ち、舞台は月明かりが照らす皇帝の寝室。
皇帝は病に伏せており、枕元には死神がついている。
皇帝は音楽で悪を払おうとするが、作りものうぐいすも宮廷の音楽家たちも役に立たない。
この絶体絶命の危機に夜鳴きうぐいすが登場し、死神を追い払う。
皇帝は褒美を与えようとするが夜鳴きうぐいすはそれを断り、夜にまた歌いに来ると約束し、その場を去る。
皇帝が元気になったことを知らない家臣たちは、皇帝の葬儀の準備をする。
そこに皇帝が現れ、一同が驚きクライマックスを迎える。
最後に漁師の歌が聴こえて物語が終わる。
ストラヴィンスキー「夜鳴きうぐいす」の名盤
「夜鳴きうぐいす」は上演機会が少ないのと同様に、録音も多くありません。こちらのDVDではナタリー・デセイの美しい声を十分に堪能することが出来ます。
DVDですがライブ映像ではなく、別々の音楽と映像を組み合わせたものです。
※日本語字幕はついていません。
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