目次
項目 | データ |
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作曲年 | 1804-1805年 |
献呈 | フランツ・ブルンスヴィック伯爵 |
演奏時間 | 20分強 |
ベートーヴェンのピアノソナタ第23番 ヘ短調 作品57は、ベートーヴェンが作曲した32曲のピアノ・ソナタのなかでも最も有名な作品の一つです。
「第8番(悲愴)」「第14番(月光)」と共に、ベートーヴェンの三大ピアノソナタと呼ばれることもあります。
また「熱情」という通称でも知られており、ベートーヴェン中期の最高傑作のひとつに数えられます。
「熱情」という通称はベートーヴェンによるものではなく、ハンブルクの出版社が出版の際に名付けたものです。
中期の作品としては、他には「交響曲第3番(英雄)」「ヴァイオリンソナタ第9番(クロイツェル)」「ピアノソナタ第21番(ヴァルトシュタイン)」などが挙げられます。
ここではベートーヴェン「ピアノソナタ第23番」の解説と名盤の紹介をしたいと思います。
ベートーヴェン「ピアノソナタ第23番」の演奏
[00:22]第1楽章:Allegro assai[10:50]第2楽章:Andante con moto
[18:19]第3楽章:Allegro ma non troppo - Presto
ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim, 1942年-)
アルゼンチン出身の、ユダヤ人ピアニスト・指揮者(現在の国籍はイスラエル)
神童として名をはせ10代の頃からピアニストとして活躍すると、20代半ばからは指揮者としても活躍する。
パリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、ベルリン・シュターツカペレの音楽監督なども歴任。
オペラ部門、室内楽部門、管弦楽曲部門、ソリスト部門、ベスト・クラシック部門などでグラミー賞を受賞。
無料楽譜
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ベートーヴェンのピアノソナタ第23番(熱情)の解説
ピアニストであったベートーヴェンとピアノ技術の革新
ベートーヴェンは作曲家としてだけではなく、ピアニストとしても有名でした。
そのためベートーヴェンは多くのピアノ曲を作曲しています。
ベートーヴェンの生きていた時代は、丁度ピアノの技術が進歩した時代でした。
ピアノと言う楽器自体が発展したのと同時に、ベートーヴェンのピアノ曲も発展していきました。
「熱情」が作曲された頃の1803年に、ヴァルトシュタイン伯爵からエラール製の新しいピアノが送られてきました。
そのピアノにより、今までのピアノより音域が広く幅広い音量で演奏することが可能になりました。
「熱情」はその広がったピアノの可能性を十分に活用し、ドラマティックで情熱的な音楽に描かれています。
第一楽章の強烈な和音連打も、当時のピアノ技術の最先端の奏法の一つです。
曲の構成は3楽章からなるソナタで、ベートーヴェンらしい激しい感情が表現されており、古典派とロマン派の中間的な性格を持った作品になっています。
「熱情」はベートーヴェンのピアノソナタの中でも最も激しい曲だと評する人もいます。
一般的な方がイメージするベートーヴェンは、まさに「熱情」のような音楽に近いかもしれません。
ベートーヴェンこだわりのピアノソナタ
「熱情」の作曲は1804年に始まり、オペラ「フィデリオ」と同時期に作曲されました。
この頃ベートーヴェンの耳は既に悪化しており、時期としてはハイリゲンシュタットの遺書が書かれた2年後にあたります。
またこの頃「交響曲第5番(運命)」の作曲もしており、5番で使われる「運命の動機」は「熱情」の第1楽章でも用いられています。
この曲は自筆譜が残されており、自筆譜にはシミが付いています。
これは持ち歩いていた自筆譜を雨で濡らしてしまったためだそうです。
ベートーヴェンは「熱情」の楽譜を改訂を加えるためによく持ち歩いていたと言われています。
そして実際に自筆譜には、多くの書き直しの後が見られます。
ベートーヴェンがこだわりぬいて作曲したのが「熱情」なのです。
ベートーヴェンは「熱情」を作曲した後、4年間もピアノ・ソナタを書いていません。
「熱情」でピアノソナタの頂点に達したと感じたのかもしれませんね。
ブルンスヴィック伯爵に献呈された
「熱情」はベートーヴェンと関係の深いフランツ・ブルンスヴィック(Franz Brunsvik, 1777年- 1849年)伯爵に献呈されました。
ハンガリーの伯爵であったブルンスヴィックは、チェリストでもありました。
伯爵は頻繁にウィーンを訪れており、1799年にベートーヴェンと知り合います。
その後伯爵とベートーヴェンは「親友」とも呼べるような間柄になり、家族ぐるみでの付き合いが始まります。
ベートーヴェンは「熱情」の他に、ピアノ小品の「幻想曲」(作品77)も伯爵に献呈しました。
ベートーヴェンの生涯で最も重要な女性の一人で、ベートーヴェンは彼女を「唯一の恋人」と呼びました。
二人は互いに惹かれ合いましたが、「身分の違い」から結ばれることはありませんでした。
ヨゼフィーネは別の男性と2度結婚しています。
曲の構成
全部で25分程度の演奏時間で、3楽章で構成されています。
第1楽章:Allegro assai 12/8拍子 ヘ短調
第1主題が奏でられ、その後すぐに交響曲第5番「運命」で使われる「運命の動機」が低音域でゆったりとが現れます。
この「運命の動機」は展開部の最後やコーダでも聴くことが出来ます。
第1楽章の最後は、第2主題に続いて第1主題が回想された中で静かに終わります。
第2楽章:Andante con moto 2/4拍子 変ニ長調
穏やかで美しい音楽で第2楽章は始まります。
そしてシンコペーションが印象的なリズムから、16分音符、そして32分音符と、基調となる音符が順に細かくなっていきます。
減7和音が弱奏と強奏で2度鳴り、音楽は途切れることなく第3楽章へと入ります。
第3楽章:Allegro ma non troppo-Presto 2/4拍子 ヘ短調
第2楽章を引き継ぎ、開始から減7和音が強く鳴り、やがて第1主題が現れます。
展開部、再現部を経て、最後は第1主題がとても速いテンポで演奏され、まさしく「熱情」の中で幕を閉じます。
ベートーヴェンのピアノソナタ第23番(熱情)の名盤
ルービンシュタインの名演でベートーヴェンの三大ピアノソナタを堪能してはいかがでしょうか。
定番の1枚としても知られており、クラシックの初心者の方にもオススメの1枚です。
温かくてスケール感の大きな音楽にきっと魅了されることだと思います。
アルトゥール・ルービンシュタイン(Arthur Rubinstein, 1887年1月28日 – 1982年12月20日)
ポーランド出身で、20世紀を代表するピアニストとして知られている。
母国ポーランドの作曲家ショパンをはじめ、シューマン、ベートーヴェン、ブラームスやブラジル音楽など、多くのレパートリーを誇った。
1899年:ポツダムでデビュー
1990年:ヨアヒムの指揮でベルリン・デビュー
1937年:ナチスの迫害を逃れて米国に移住
1946年:アメリカに帰化
その他の録音
ベートーヴェン「ピアノソナタ第23番(熱情)」のその他の録音も紹介したいと思います。
ルドルフ・ゼルキン
ボヘミア・ヘプ出身の20世紀を代表するピアニスト、ルドルフ・ゼルキンによるベートーヴェンの「ピアノソナタ第23番(熱情)」です。
彼はドイツ音楽を得意としており、その中でもベートーヴェンの演奏は特に評価を得ていました。
このジャケットのCDでは、「月光」「熱情」「悲愴」は1962年に、「テレーゼ」は1973年に録音されています。
マウリツィオ・ポリーニ
マウリツィオ・ポリーニは(Maurizio Pollini/1942年-)イタリア、ミラノ出身の現代を代表する名ピアニストです。
超絶技巧の持ち主で、演出困難と言われる曲も難なく操ることでも知られています。
「悲愴」は2003年、「月光」は1991年、「熱情」は2002年に録音されています。
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