クロード・ドビュッシー(Claude Debussy/1862年-1918年)の『ベルガマスク組曲』(Suite bergamasque)はキャッチーなフレーズで、とても聴きやすい作品です。
またドビュッシーの代表的なピアノ独奏曲でもあります。
この作品は「前奏曲(Prelude)」「メヌエット(Menuet)」「月の光(Clair de Lune) 」「パスピエ(Passepied) 」の4曲から構成されており、バロック舞踏組曲の形式で書かれています。
豊かないろどりと幻想的な美しさが共存しており、この作品のファンの人も多いと思います。
その中でも第3曲の「月の光」は特に有名で、コンサートで演奏されることもしばしばあります。
ここではドビュッシー「ベルガマスク組曲」の解説だけではなく、名盤も最後に紹介したいと思います。
ドビュッシー「ベルガマスク組曲」の演奏
Alain Planes(アラン・プラネス):フランスのピアニスト
[00:00]第1曲:「前奏曲」 (Prélude)[04:16]第2曲:「メヌエット」 (Menuet)
[08:42]第3曲:「月の光」 (Clair de Lune)
[13:14]第4曲:「パスピエ」 (Passepied)
無料楽譜
※「月の光」 (Clair de Lune)は14ページ目
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ドビュッシーの初期作品
「ベルガマスク組曲」は1890年ごろに作曲がはじめられたドビュッシーの初期の作品で、完成には約15年もの年月がかかっています。
この作品の頃のドビュッシー独自の音楽は、まだ完成していませんでした。
そのため、グリーグ・マスネ・フォーレなどの影響が感じられます。
ただ他の音楽家の影響を受けつつも、ドビュッシーらしさが見え始めた作品でもあります。
前衛的ではなく斬新さもあまり感じられませんが、豊かな雰囲気に包まれた芸術的作品です。
フォーレ「月の光」と聴き比べ
「ベルガマスク組曲」のタイトルは、フランスの詩人ヴェルレーヌの「月の光」という詩の中で使われている「ベルガモの踊り子たちは」という言葉が由来とされています。
また、この作品の他にも、ドビュッシーはこの詩にのせて曲も書いています。
ドビュッシーのお気に入りの詩であったことは間違いないでしょう。
ドビュッシーがこのころ影響を受けていた作曲家の一人がフォーレでしたが、実はフォーレは「月の光」という歌曲を書いています。
ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」の前奏曲で、フォーレの「月の光」に少し似た部分がありますので聴き比べてみると面白いかもしれません。
ドビュッシーのお気に入りの詩をタイトルにし、尊敬するフォーレの影響も受けた作品が「ベルガマスク組曲」なのです。
※イタリアのベルガモ地方の舞曲「ベルガマスカ」に影響を受けて、「ベルガマスク組曲」というタイトルにした説もあります。
作品の構成
全4曲で構成されています。
第1曲 「前奏曲」 (Prélude)
ヘ長調、Moderato、4分の4拍子
バロックスタイルの祝祭的な作品で、Préludeではこの形がよく見られます。
前半部分と後半部分のコントラストも聴きどころで、中間部では教会旋法の一種のエオリア旋法が使われています。
現代の音楽は「ドレミファソラシド」と「ラシドレミファソ#ラ」のスケールしかほぼ使われなくなりましたが、バロック以前は教会旋法と呼ばれるスケールも使われており、グレゴリオ聖歌ではそれが用いられています。
エオリア旋法は「ラシドレミファソラ」のスケールで、1500年代前半から使われるようになりました。
第2曲 「メヌエット」 (Menuet)
イ短調、Andantino、4分の3拍子
冒頭の主題は教会旋法の中のドリア旋法(レミファソラシドレ)が使われています。
典型的なメヌエットのスタイルとは異なりオリジナリティ溢れる作りも特徴的です。
第3曲 「月の光」 (Clair de Lune)
変ニ長調、Andante très expressif、8分の9拍子
全4曲の中で最も有名な曲で、ほとんどがピアニッシモで演奏されます。
中間部では教会旋法のミクソリディア旋法(ソラシドレミファソ)が使われています。
第4曲 「パスピエ」 (Passepied)
嬰ヘ短調、Allegretto ma non troppo、4分の4拍子
「パスピエ」とは、舞曲の1種を指し起源はフランス北西部のブルターニュにあります。
一般的にパスピエは4分の3拍子で演奏されますが、この曲は4分の4拍子で作曲されています。
曲全体を通して左手はスタッカートのアルペジオで演奏されます。
ドビュッシーの「パスピエ」は幸せに満ちた音楽ではありますが、バロック時代の同様の作品と比べるとテンポが速いのが特徴的です。
「ベルガマスク組曲」のオススメ名盤
ドビュッシーと同じフランス人のピアニスト、モニク・アースのドビュッシー名盤集です。
フランス近現代の音楽を弾かせれば天下一品のモニク・アースがドビュッシーの美しい世界観を奏でてくれます。
優しくスタンダードながら全く飽きることのない名盤をぜひ堪能してみてください。
録音が古いため音質は決して良いものではありませんが、それでもオススメできるCDです。
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