目次
項目 | データ |
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初演 | 1924年 |
原作 | ルドルフ・ティエスノフリーデク『狐のビストロウシュカ』 |
台本 | ヤナーチェク |
言語 | チェコ語 |
演奏時間 | 1時間40分 |
レオシュ・ヤナーチェク(1854年-1928年)のオペラ『利口な女狐の物語(Příhody lišky Bystroušky)』は、1924年に初演されました。
英語では「The Cunning Little Vixen」と表記されています。
彼にとって7作目のオペラ(全部で9作)で、彼を代表するオペラ作品です。
動物がたくさん登場する"おとぎ話"風の物語である一方で、自然と人間界を対比した奥深い作品となっています。
原作を基に、台本はヤナーチェク自身が書きました。
ヤナーチェクは、この作品を含む晩年の4つのオペラ(『カーチャ・カバノヴァー』『利口な女狐の物語』『マクロプロス事件』『死者の家から』)のすべての台本を、自身で書き上げています。
この音楽は、ヤナーチェクの人生観が描かれていると言われています。
そして、葬儀では実際に演奏がなされました。
ここでは、そんなヤナーチェク『利口な女狐の物語』のあらすじを紹介したいと思います。
登場人物
【人間】
森番(バリトン)
森番の妻(コントラルト)
ペピーク(ソプラノ):森番の息子
フランティーク(ソプラノ):ペピークの友達
校長(テノール)
牧師(バス)
ハラシュタ(バス):行商人
パーセク(テノール):居酒屋の主人
パーセクの妻(ソプラノ)
【動物】
ビストロウシュカ(ソプラノ):女狐
ズラトフシュビテーク(ソプラノ):雄狐
ラパーク(メゾソプラノ):森番の飼い犬
雄鶏、雌鶏(ソプラノ)
カエル(子供のソプラノ)
穴熊(バス)
きつつき、蚊、、ふくろう、かけす
第1幕:ヤナーチェク『利口な女狐の物語』のあらすじ
第1場:森番が女狐を捕まえる
暗い乾燥した渓谷
森番が登場し"疲れた"と言い、一休み(居眠り)します。
そこに生き物たちが(こおろぎ、バッタ、蚊、カエル)が現れ、最後に子供の女狐ビストロウシュカが登場します。
ビストロウシュカがカエルを捕まえようとすると、カエルは逃げて森番の鼻の上に落ちます。
目を覚ました森番は、ビストロウシュカを見つけて捕まえます。
ビストロウシュカは母狐を呼びますが、助けは来ません。
森番は「子供たちが喜ぶ」と言い、ビストロウシュカを家に連れて帰ります。
第2場
午後、森番の小屋
子供に噛みついた女狐は、森番に紐で縛られる
捕まったビストロウシュカ(女狐)が、寂しそうに泣いています。
犬のラパークはそれを慰め、「恋の季節になると心が痛む」とビストロウシュカに言い寄ります。
しかし、ビストロウシュカはラパークを相手にしません。
続いて、森番の息子ペピークと、その友達フランティークが登場します。
彼らがビストロウシュカを棒で突いてくるので、ビストロウシュカは怒ってペピークの足に噛みつきます。
森番の妻が、家から飛び出してきて「狐を追い出しましょう!臭いし、ケガもさせるし。」と騒ぎます。
それを聞いて森番は、ビストロウシュカを紐で縛ります。
夜も更け、ビストロウシュカは泣きながら眠りにつきます。
女狐が脱走
ラパーク(犬)はビストロウシュカ(女狐)に「僕のように逃げないのが一番だ。」と語ります。
鶏たちは紐に縛られたビストロウシュカを馬鹿にし、「お前は卵も産めないし、手伝いもできない。何の役にも立たない。」とののしります。
ビストロウシュカは「お前たちは利用されているだけだ。」と怒り、雄鶏を捕まえて雛鳥たちを殺してしまいます。
そこに鶏たちの悲鳴を聞いた森番の妻が現れ、続いて森番も登場します。
ビストロウシュカは"脱走を決意"します。
そして紐をちぎり、森番を押し倒し、森へと逃げ去っていきます。
第2幕:ヤナーチェク『利口な女狐の物語』のあらすじ
第1場:女狐が穴熊の"広い家"を奪い取る
森の中、穴熊の住む洞穴
人間から逃げてきたビストロウシュカ(女狐)は、穴熊の穴を覗いて話しかけます。
穴熊は「じろじろ見るな」と嫌がります。
ビストロウシュカは森の動物たちに「穴熊のおじさんがゴロゴロしてるよ。広い家なのに一人で。」と呼びかけます。
穴熊は「出ていかないと訴えるぞ!」と怒り、ビストロウシュカを殴ります。
それに対しビストロウシュカと動物たちは、一斉に穴熊を攻め立てます。
穴熊は怒りながら、穴から逃げていきます。
ビストロウシュカは、穴熊の"広い家"を手にすることに成功します。
第2場:森番が女狐の話をされると、機嫌が悪くなる
パーセクの居酒屋
テーブルを囲んで、校長と森番がトランプをしています。
そこに"穴熊そっくりの顔"の牧師も加わります。
彼らは"恋の話(テリンカという女性)"で盛り上がり、お互いを冷やかし合います。
やがて校長が店を去り、牧師も家路につきます。
森番はもう1杯飲もうとします。
しかし店主のパーセクが「私たちに女狐の話もしてくださいよ。」と言うと、森番は気分を悪くし「ほっといとくれ」と店を出ます。
第3場:森番が女狐を銃で撃つが、取り逃がす
夜の小道
校長が酔っぱらいながら、千鳥足で夜道を歩いています。
そこにビストロウシュカ(女狐)が現れ、ヒマワリの花を揺らします。
校長はそれをテリンカ(恋した女性)と勘違いし、愛を告白し抱きつきます。
一方神父もテリンカを思い出しながら、タバコを吸っています。
そのとき森番が現れ、ビストロウシュカに向かって銃を放ちます。
銃弾は外れます。
森番は取り逃がしたことを嘆きます。
第4場:女狐が結婚をする
ビストロウシュカの住む洞穴
ビストロウシュカの住む洞穴の前を、オス狐ズラトフシュビテークが通りかかります。
ビストロウシュカは、
「この家は私のもので、私は自立しています。」
「私は猟師小屋で人間の教育を受け、盗みを覚えました。」
と語ります。
二匹はお互いに惹かれ合います。
ズラトフシュビテークはプレゼント(ウサギ)を持参し再び登場し、プロポーズをします。
やがて二匹は結婚をし、それを森の仲間たちが祝福します。
第3幕:ヤナーチェク『利口な女狐の物語』のあらすじ
第1場
森のはずれ
森番が罠を仕掛けるが、女狐に見破られる
行商人ハラシュタが森番に「テリンカと結婚することになった」と報告します。
続いて森番はハラシュタから「ビストロウシュカ(女狐)が殺したウサギが落ちていた」という情報を得ます。
森番は「ビストロウシュカは、ウサギをとりに戻ってくる」と予想し、そこに罠を仕掛けます。
そこにビストロウシュカが、夫と子供たちを連れて現れます。
しかし彼らは、罠が仕掛けられていることに気づきます。
ハラシュタ(行商人)が狐を銃で撃ち殺す
続いてハラシュタ(行商人)が現れます。
ハラシュタは、「狐をマフにして、テリンカにプレゼントしよう。」と考えます。
ビストロウシュカは逃げ回ります。
その間に、子ギツネたちは"ハラシュタの売り物の鶏"を食べ荒らします。
怒ったハラシュタが銃を放つと、ビストロウシュカに命中します。
ビストロウシュカは息絶えます。
第2場:テリンカが狐のマフをしている
パーセクの居酒屋の庭、テリンカの結婚の日
森番がパーセクの妻に、「女狐を追いかけていったけど、穴は空っぽだった。」と語ります。
するとパーセクの妻は「そういえば、テリンカが狐のマフをしてたわ。」と話します。
森番は、
「年をとって足が痛いよ。」
「人間は色々求めないのが一番なのかもなあ。」
と言葉を残し、店から去っていきます。
第3場:数年後、森番が狐の夢を見る
数年後、暗い乾燥した渓谷(第1幕第1場と同じ)
森番が、昔を思い出しながら居眠りをしています。
そして夢を見たまま起き上がると、ビストロウシュカそっくりの子ギツネが現れます。
捕まえようとすると、それは狐ではなくカエルでした。
森番は"第1幕第1場のカエル"だと思い、「今までどうしてたんだ!?」と語り掛けます。
するとカエルは、「それは僕のお爺ちゃんだよ。何度もその話を聞かされたよ。」と返します。
銃が"忘れられたかのように"森番の体から地上に落ちたところで、オペラは終わります。
ヤナーチェク『利口な女狐の物語』の映像
2008年サイトウ・キネン・フェスティバルでのライブ映像です。
長野県松本市で演奏された極上の音楽が蘇ります。
女狐ビストロウシカ:イザベル・ベイラクダリアン
森番:クィン・ケルシー
森番の妻/ふくろう:ジュディス・クリスティン
校長/蚊:デニス・ピーターソン
神父/あなぐま:ケヴィン・ランガン
行商人ハラシタ:デール・トラヴィス
雄狐:ローレン・カーナウ
宿屋の主人:松原友
宿屋の女房:増田弥生
犬ラパーク:マリー・レノーマン
雄鶏:黒木真弓
きつつき:牧野真由美
合唱:SKF松本児童合唱団・東京オペラシンガーズ
オーケストラ:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:小澤征爾
演出:ロラン・ペリー
女狐:エレナ・ツァラゴワ
森番:ユッカ・ラジライネン
指揮:デニス・ラッセル・デイヴィス
演出:アンドレ・エンゲル
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