作品 | データ |
---|---|
作曲年 | 1830年 |
初演 | 1830年12月5日 パリ音楽院 |
出版 | 1845年 |
献呈 | ロシア皇帝ニコライ1世 |
演奏時間 | 50分 |
幻想交響曲(Symphonie fantastique)はルイ・エクトル・ベルリオーズ(Louis Hector Berlioz,1803年~1869年)が1830年に作曲した作品で、彼にとって初めての交響曲です。
ベートヴェンが亡くなってから3年後のこの作品は、当時としてはとても刺激的な音楽でした。
ここではベルリオーズ「幻想交響曲」の解説と名盤を紹介したいと思います。
ベルリオーズ『幻想交響曲』の演奏
フランス放送フィルハーモニー管弦楽団(Orchestre philharmonique de Radio France)
指揮:チョン・ミョンフン
[15:08]第2楽章:「舞踏会(Un bal)」
[23:09]第3楽章:「野の風景(Scène aux champs)」
[39:53]第4楽章:「断頭台への行進(Marche au supplice)」
[44:27]第5楽章:「魔女の夜宴の夢(Songe d'une nuit du Sabbat)」
医者の息子・ベルリオーズ
ベルリオーズは優秀な医者の息子として生まれました。
そのためベルリオーズの使命はその後を継ぐことであり、彼は専門的な音楽教育を受けないままパリの医科大学へと進みます。
ベルリオーズが秀でて演奏できる楽器はなかったと言われています。
しかし、音楽の情熱が溢れていたベルリオーズは医科大学の後に1826年にパリ音楽院へ進みます。
そして音楽を専門的に勉強し、ローマ大賞と呼ばれる作曲者に送られる優れた賞を受けるまでになります。
これは彼が5回目に応募してようやく得た賞で、彼の努力が実った瞬間でもありました。
医者の跡取りから音楽家へと見事に転身したのがベルリオーズなのです。
ベルリオーズの実体験の作品
幻想交響曲はベルリオーズが実際に体験した失恋を音楽にしたものです。
ベルリオーズは1827年にパリで、イギリスのシェイクスピア劇団による「ハムレット」を観劇しました。
パリ音楽院へ進学した1年後の出来事です。
そのときにオフィーリアを演じたハリエット・スミスソンにベルリオーズは恋をしてしまいます。
ただ当時の人気女優とただの学生では出会う機会もなく、つり合いもとれません。
面識のない片思いで、ベルリオーズは手紙を送るなどして思いを伝えましたが、その思いは成就することはありませんでした。
ただ英語での劇でしたが、ベルリオーズは英語が得意ではなく、台詞は理解できていなかったようです。
失恋した男が見た幻想の世界
幻想交響曲は「失恋した男がアヘンを吸ったときに見た幻想の世界」を表現しています。
失恋した男はベルリオーズ本人であり、恋の相手はスミスソンです。
標題のついた音楽はこれまでもありましたが、物語を交響曲で表現することは当時は革新的なことでした。
これが発展したものが交響詩です。
交響詩は1854年のリストによる「タッソー」が始まりとされています。
ベルリオーズの音楽はその後交響詩としてリスト/リヒャルト・シュトラウス/ドビュッシー/サン・サースらに受け継がれていくのです。
初演の3年後にスミスソンと結婚
失恋を描いた幻想交響曲ですが、恋の物語はこれでは終わりません。
大成功に終わった1830年の1年後、ベルリオーズは婚約者の親の反対により婚約者と別れてしまいます。
そして1832年にベルリオーズはスミスソンと運命的な再会をします。
自分のことを描いている「幻想交響曲」のコンサートを、スミスソン自身が客として聴きに来ていたのです。
そしてベルリオーズの恋は実り1833年にベルリオーズとスミスソンは結婚することになります。
劇団には多額の借金があったそうです。
幸せな生活は2年で終わりを告げる
ベルリオーズとスミスソンは1児をもうけましたが、2人の円満な関係はたった2年しかもちませんでした。
2人は1841年頃から別居生活を送ることになります。
そしてスミスソンが1854年に亡くなると、ベルリオーズは同棲していたマリー・レシオ(歌手)とすぐに結婚しました。
ベルリオーズ「幻想交響曲」の名盤
日本が世界に誇る指揮者・小澤征爾さんと、同じく日本が世界に誇るオーケストラ・サイトウキネンオーケストラによる幻想交響曲です。2010年12月に行われたカーネギーホールのコンサートによるライブ録音です。
演奏はもちろん、録音状態も良好ですので是非聴いてほしい1枚です。
この長野県松本市での演奏も、熱狂の渦に包まれました。
サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:小澤征爾
録音:2010年12月15日(ニューヨーク、カーネギー・ホール)
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