シャルル・カミーユ・サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns/1835年~1921年)の「交響曲第3番 (オルガン付き)」は、1886年に初演された作品です。
第3番とありますが未完成のものを含めると、彼が5番目に書いた交響曲です。

サン=サーンスと言えば、「動物の謝肉祭」やチェロの旋律が美しい「白鳥」を思い出す方が多いとは思いますが、この「交響曲第3番 (オルガン付き)」もとても美しい作品です。

ここではサン=サーンス「交響曲第3番 (オルガン付き)」の解説や名盤を紹介したいと思います。

神童サン=サーンス

音楽の世界において「神童」と言えば、多くの人がモーツァルトを思い浮かべると思います。
音楽の世界において神童は珍しいことではありませんが、サン=サーンスもその中の一人でありました。

作曲を始めたのは何と3歳の頃で、10歳の頃には既にピアニストとして活動しています。
その時既にレパートリーとしてベートーヴェンのピアノソナタ32曲を暗譜していたそうです。

Saintsaens

また数学や語学などのいわゆる勉学についてもとても秀でており、多くの大人たちを驚かせたそうです。
大人になってからも詩・天文学・数学・絵画などの造詣が深く、彼自身の作詞作曲による声楽作品もあります。

ちなみにかなりの長寿で86歳まで生きました。
自らの芸術の他にもフランス音楽の振興に努めるなど社会的に大きく貢献し、サン=サーンスの葬儀は国葬で執り行われました。

最高のオルガニスト・サン=サーンス

この「交響曲第3番 (オルガン付き)」はオルガニストとしても才能を発揮していたサン=サーンスの魅力がたっぷりに詰まっています。
サン=サーンスはパリのマドレーヌ教会でオルガニストをしており、そのオルガンの演奏を聴いたリストからは最高の賛辞が送られたそうです。

そしてこの「交響曲第3番 (オルガン付き)」は、その尊敬するリストに捧げた曲でもあります。
初演直後に友人でもあったリストが亡くなり、サン=サーンスはこの曲をリストに捧げたのです。
この交響曲にはリストの主題変容の理論が用いられており、リストへの曲としても相応しい曲だと言えるかもしれません。

またパイプオルガンが交響曲に使われるだけでも当時としては珍しいことでしたが、音楽の構成自体も変わっています。
全部で2楽章しかなく、それぞれが1部と2部に分かれている珍しい構成になっています。
彼自身がすべてを注ぎ込んだと語った交響曲で、そのせいかこれ以降に彼が交響曲を書き上げることはありませんでした。

初演は成功

「交響曲第3番 (オルガン付き)」はロイヤルフィルハーモニー協会の依頼により作曲され、ロンドンフィルハーモニーの演奏で初演されました。
そして初演の成功に続き母国フランスのパリでのコンサートではさらなる大成功を収めたと言われています。
大熱狂は留まることを知らず、その後サン=サーンスは「フランスのベートーヴェン」とまで言われました。

曲の構成

第1楽章(前半)Adagio - Allegro moderato ハ短調

穏やかな音楽ではじまり、しばらくすると第1主題を弦楽器が演奏し、それが木管楽器へと移ります。
金管楽器が加わり壮大な音楽へと変わったのちに静かになり、最後にオルガンが登場します。

第1楽章(後半)Poco adagio 変ニ長調

とても美しい音楽が印象的です。
オルガンの和音にのせて弦楽器がメロディを奏で、それが管楽器へと移っていきます。
最後は消えて無くなるような音楽で第1楽章は終わります。

第2楽章(前半)Allegro moderato ハ短調 — Presto ハ長調

前半はスケルツォ楽章にあたり、はじめにスケールの大きい情熱的な音楽が奏でられます。
テンポがあがり木管とピアノが活躍した後に静けさが現れ、フィナーレと続いていきます。

第2楽章(後半)Maestoso — Allegro ハ長調

大音量のオルガンの和音で第2楽章の後半は始まります。
変化に富んだ展開が演奏され、最後はオルガンとオーケストラによる力強い演奏で壮大な音楽の中で幕が下ります。

サン=サーンス「交響曲第3番 (オルガン付き)」の名盤

NHK交響楽団との数多くの共演で日本でもお馴染みの名指揮者シャルル・デュトワが振ったサン=サーンスです。
「動物の謝肉祭」もこのCDに収録されています。

録音状態がいいことでも評価されているCDですので、音質にこだわって聴きたい方も必聴の名盤です。

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