泥棒かささぎLa gazza ladra
初演1817年5月31日(ミラノ・スカラ座)
原作T.B.ドービニー、ルイ・シャルル・ケーニエ作の悲劇「La Pie voleuse」
台本ジョヴァンニ・ゲラルティーニ
演奏時間3時間30分

『泥棒かささぎ(La gazza ladra)』は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini/1792年-1868年)によって作曲されたオペラです。
当時まだ歴史の浅かったミラノ・スカラ座の依頼で作曲したもので、ブッファでもセリアでもない「セミセリア」に分類されています。
初演は大成功を収めたそうです。

 物語は、実際にパリで起きた事件が題材です。
カササギ(鳥)がスプーンを盗み、ヒロインが冤罪を被ります。
事件では冤罪を晴らす前にヒロインが処刑されてしまいますが、オペラはハッピーエンドで終わります。

オペラ全幕が上演されることは稀ですが、「序曲」はテレビなどで耳にしたことがある方もいると思います。
ここではロッシーニのオペラ『泥棒かささぎ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

ヴィングラディート家関係
ジャンネット(テノール)ニネッタの恋人
ルチーア(メゾソプラノ)ジャンネットの母
ファブリツィオ(バス)ジャンネットの父
登場人物詳細
ニネッタ(ソプラノ)ヴィングラディート家の女中、ジャンネットの恋人
フェルナンド(バス)ニネッタの父、逃亡兵
ピッポ(メゾソプラノ)ヴィングラディート家の召使いの青年

【その他の登場人物】
代官、イザッコ(行商人)、アントニオ、ジョルジョ、エルネスト、裁判官

『泥棒かささぎ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

第1幕

ヴィングラディート家は「息子のジャンネットが兵役から戻ってくるお祝い」の準備をしています。
女中のニネッタ(ジャンネットの恋人)も、彼の帰りを心待ちにしています。

そんな中、一家の銀のスプーンが紛失します。
カササギ(鳥)の犯行でしたが、ニネッタが疑われてしまいます。
ニネッタは逮捕され、処刑が宣告されます。

第2幕

処刑になりそうなニネッタでしたが、最後に疑いが解け、「カササギの犯行」が明らかになります。
二人は愛を語り合い、ハッピーエンドでオペラは終わります。

第1幕:『泥棒かささぎ』のあらすじ

舞台はイタリアのとある田舎

一家が「息子ジャンネットが兵役から戻る」のを待ちわびる

ヴィングラディート家が「息子のジャンネットが兵役から戻ってくるお祝い」の準備をしています。
ルチーア(ジャンネットの母)が女中ニネッタに厳しく当たることに対し、ファブリツィオ(ジャンネットの父)は優しく接するよう諭します。

 ニネッタは、ヴィングラディート家の女中であると同時に一家の子息ジャンネットの恋人でもあります。
ニネッタの父は出征中です。

そこにニネッタ(女中)が登場し(Di piacer mi balza il cor)、恋人ジャンネットの帰りを待ちわびます。
ルチーアに「次に食器をなくしたら許さないよ」と忠告を受け、ルチーアとニネッタはジャンネットを迎えに行きます。

「Di piacer mi balza il cor」

ジャンネットの帰還

ジャンネットが兵役から戻り(Vieni fra queste braccia)、パーティーが始まります。

「Vieni fra queste braccia」

パーティーが終わり、ニネッタが部屋に戻ると逃亡中のフェルナンド(ニネッタの父)が突然現れます。

 フェルナンドは、娘に会いたいがあまりに出征中に帰還を申請します。
しかし受け入れられず、傷害事件を起こしてしまいます。
それが原因で死刑が宣告されていまい、友人に助けを求めるためにここまで逃亡してきたのでした。

ニネッタが逃亡中の父を逃がす

そこにタイミング悪く代官が現れます。
そして運悪く代官とフェルナンドが鉢合わせになります。

 代官はニネッタを気に入っており、たまたま口説きにやってきました。

代官は指名手配書とフェルナンドを照らし合わせようとしますが、眼が悪く字が読めません。
そこでニネッタが代読し、うまく誤魔化し事態を切り抜けます。

フェルナンドは彼の銀の食器をニネッタに渡し、「これを換金して、栗の木の下に隠してくれ」と頼み去っていきます。
その間に、カササギが一家の銀のスプーンを盗んでいきます

ニネッタが冤罪で逮捕され、死刑となる

ニネッタがイザッコ(行商人)に「父から預かった銀の食器」を売ります。
それをピッポ(一家の召使)には、小物を売ったとごまかします。

そこにルチーアとファブリツィオ(ジャンネットの両親)が現れ、銀のスプーンが無くなったと騒ぎます。
両親がニネッタを疑います。
居合わせた代官が「ニネッタが逃亡犯の娘」だと気づくと、「父の逃亡資金のために盗んだ」と疑われ、疑惑はさらに深まります。

 実際は、一家の銀のスプーンを盗んだのはカササギです。

ニネッタは父の食器を売ったお金を持っていたため、立場はさらに悪くなります。
しかし父を守るために、ニネッタは真実を話すことができません。

 父の食器と一家のスプーンには、イニシャルが記載されていました。
フェルナンドとファブリツィオのイニシャルがたまたま同じ(F.V)という偶然が重なり、事態はさらに悪化します。

ニネッタは連行され、死刑となります。

 家庭内での窃盗事件は「死刑」という厳しいものでした。

第2幕:『泥棒かささぎ』のあらすじ

第1場

牢獄
面会者1:ジャンネット(恋人)
恋人の無実を信じるジャンネットが、ニネッタの面会に訪れ慰めます。
面会者2:代官
続いて代官が現れます。
ニネッタに恋する代官は「私を愛するのであれば、助けてあげよう。」と語りますが、ニネッタはそれを拒絶します。
面会者3:ピッポ(召使)
最後にピッポが面会に訪れます。
ニネッタはピッポに換金した金を渡し、栗の木の下に届けるよう頼みます。

第2場

ヴィングラディート家

ルチーアは「ニネッタが盗みをするはずがない」と考えるようになります。
そこにフェルナンドが現れ、一部始終を話します。

フェルナンドは娘を救うために、真実を話すことを決意します。(Accusata di furto)

「Accusata di furto」

父フェルナンドも逮捕されてしまう

法廷

死刑が宣告されたニネッタのもとに、父フェルナンドが現れます。
フェルナンドは娘の無罪を主張しますが、取り合ってもらえません。

最悪なことにフェルナンドも脱走罪で逮捕されてしまいます。

カササギの犯行だとわかり、二人が釈放される

ピッポが栗の木の下に向かい、そこに頼まれたお金を届けます。
するとカササギが、その金をくわえて飛んでいきます。

ピッポがカササギを追っていくと、そこには一家の銀のスプーンがありました。
ニネッタが処刑台に向かう中、ギリギリのタイミングでピッポが間に合います。

ピッポが事情を話し、ニネッタは釈放されます。
そして父フェルナンドも友人エルネストの尽力で釈放されます。

二人は釈放され、ニネッタが恋人ジャンネットの胸の中で喜び、ハッピーエンドでオペラは終わります。

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