項目 データ
初演 1843年1月3日 イタリア劇場(パリ)
原作 ステファノ パヴェージ作曲、アンジェロ アネッリ台本のオペラ「マルカントニオ殿下(Ser Marcantonio)」(1808)
台本 ジョヴァンニ・ルッフィーニ、ドニゼッティ
演奏時間 2時間

『ドンパスクワーレ(Don Paspuale)』は、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti/1797年-1848年)が晩年に作曲したオペラ・ブッファの傑作です。
台本はジョヴァンニ・ルッフィーニが急いで書いたものを、ドニゼッティ自身が手を加えて完成したとされています。

 ロッシーニ、ベッリーニとこのドニゼッティの3人は、19世紀前半のイタリアオペラを代表する作曲家としてベルカントオペラの全盛期をリードしました。

ドニゼッティは『愛の妙薬』『連隊の娘』『ドンパスクワーレ』などの喜劇的なオペラを書く一方で、『アンナ・ボレーナ』『ルクレツィア・ボルジア』『ランメルモールのルチア』などの悲劇的なオペラも遺しました。

ここでは、ドニゼッティのオペラ『ドンパスクワーレ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物 詳細
ドン・パスクワーレ(バス) 70歳の頑固な資産家
エルネスト(テノール) パスクワーレの甥
ノリーナ(ソプラノ) エルネストの恋人
マラテスタ(バリトン) パスクワーレを懲らしめる仕掛け人
公証人(バス)

『ドンパスクワーレ』の簡単なあらすじ

DonPaspuale

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」

ドン・パスクワーレは、遺産を持っています。
彼は、甥のエルネストに「遺産を譲るから、縁談を受けてくれ」を勧めています。
しかし、エルネストは「恋人(ノリーナ)がいるから縁談は受けられない」と断ります。

すると怒ったパスクワーレは「甥を追い出して、私が結婚する!」と言い出します。

そこで仕掛け人マラテスタは、「友人エルネストとノリーナを救う」ために計画を練ります。
パスクワーレが策略にはまり、「エルネストとノリーナの結婚が認められた」ところでハッピーエンドで幕が下ります。

第1幕:『ドンパスクワーレ』のあらすじ

マラテスタが「あなたの結婚相手を紹介しましょう。」とパスクワーレに仕掛ける

ドン・パスクワーレの家

ドン・パスクワーレとマラテスタ

ドン・パスクワーレの家を友人マラテスタが訪れてきます。

 ドン・パスクワーレ:70歳の頑固な資産家
マラテスタ:パスクワーレを懲らしめる仕掛け人

ドン・パスクワーレが「私の花嫁は見つかったか?」と尋ねると
マラテスタは「希望通りのが見つかった。」と答え、その美しさを歌いあげます。(Bella siccome un angelo)
そして、その相手はマラテスタの妹だと伝えます。

 結婚相手は、実際はマラテスタの妹ではなくノリーナ(エルネストの恋人)

ドン・パスクワーレは喜び、会うのが待ち遠しくなります。

「Bella siccome un angelo」

パスクワーレが「私は結婚するから、お前は出ていけ!」と甥のエルネストに言う

ドン・パスクワーレとエルネスト

マラテスタが去ると、ドン・パスクワーレの甥エルネストが登場します。
そして以下のような二重唱が歌われます。

パスクワーレ
「私の勧める縁談を了承すれば、遺産はお前にやると言っていたよな。」
エルネスト
「ノリーナを愛しているから、そんなことはできないよ。」
パスクワimouto ーレ
「何!?それなら私自身が結婚して、お前は追い出すぞ。」
エルネスト
「結婚するの(Prender moglie?)!?笑えるなあ。」
パスクワーレ
「結婚は冗談ではないぞ。」
エルネスト
「え!?それじゃあ計画が台無しだ。(Sogno soave e casto)」
「マラテスタにも相談してみてよ。彼は信用できるから。」
パスクワーレ
「実はマラテスタに相談したら、彼の妹を紹介してくれたんだ。」

エルネストはマラテスタに裏切られ、愛する人を失ったことを悲しみます。(Mi fa il destin mendico)

「Prender moglie?/Sogno soave e casto/Mi fa il destin mendico」

 実際はマラテスタは、エルネストとノリーナのために策を実行しています。
その計画をまだ知らないエルネストは、落ち込んでいます。

ノリーナとマラテスタが「パスクワーレをはめる計画」を練る

ノリーナの部屋

ノリーナのアリア

ノリーナは恋愛の本を読みながら、「私は心を誘惑する方法をたくさん知っているわ。」と歌っています。(Quel guardo il cavaliere )

そして「ドン・パスクワーレをはめる。」とマラテスタが言っていたことを思い出しています。(E il dottor non si vede)

そこに
「僕は遺産も愛も失った。だからこのローマを離れる。さようなら。」
という内容の手紙がエルネストから届きます。

ノリーナとマラテスタ

そこにマラテスタが現れます
ノリーナは手紙を見せて、「さっきの計画は中止だわ。」と言います。

しかしマラテスタは計画を詳しく話し、ノリーナをその気にさせます。
以下のような二重唱が歌われます。

マラテスタ
「パスクワーレは甥が言うことをきかないから、こらしめようとしているんだ。」
「それで自分で結婚すると決めたんだって。」
ノリーナ
「それは知っているわ。」
マラテスタ
「おれには修道院にいる妹がいる。その妹を嫁がせると伝えてある。」
「そこでお前が俺の妹のふりをして、純粋な娘を演じてほしいんだ。」
「エルネストは俺の友達だし、これはパスクワーレを最後にギャフンと言わせる計画なんだよ。」
ノリーナ
「そう、わかったわ。あいつに復讐してやろうじゃないの!」

二人が純粋な娘を演じる練習(Pronta son)をし、気分も乗ってきたところで、1幕は下ります。

「E il dottor non si vede/Pronta son」

第2幕:『ドンパスクワーレ』のあらすじ

エルネストが「恋人を失った」と勘違いし絶望している

ドン・パスクワーレの家

エルネストは一人で落ち込んでいます。
そして「愛を失い、この地を去る」ことを歌い、その場を去っていきます。(Povero Ernesto!/Cercherò lontana terra)

「Povero Ernesto!/Cercherò lontana terra」

ノリーナが「マラテスタの妹」になりきり、結婚の準備が進められる

ドン・パスクワーレ、マラテスタ、ノリーナ

ドン・パスクワーレが結婚の準備をしています。
そこにマラテスタがヴェールを被ったノリーナを連れてきます。

ノリーナは純粋な娘を演じ、ドン・パスクワーレはすぐに彼女に夢中になります。

公証人が「遺産の半分は妻のものとなる。」などの結婚契約書を完成させ、残すは署名だけとなります。

"計画を何も知らない"エルネストが乱入してくる

そのとき突然エルネストが、叔父との別れを告げに乱入してきます。
計画を何も知らないエルネストは、叔父の花嫁としてノリーナがいることに驚きます。

マラテスタはエルネストに「これはお前のためにやっている。」とコッソリ話し、結婚の証人の欄に渋々署名させます。
ドン・パスクワーレとノリーナの結婚が成立します。

結婚が成立したとたん、ノリーナの態度が豹変する

するとノリーナの態度が豹変します。
ノリーナはドン・パスクワーレに「老いぼれのデブは、私の命令に従いなさい。」と厳しく当たります。
そして「召使いの給料を倍にする」「家具や衣装を注文する」など、お金をひどく使いこみます。

怒るドン・パスクワーレ、計画を理解したエルネスト

ドン・パスクワーレは怒り狂い、混乱し、悔しさをあらわにします。
エルネストはようやく状況を理解してきます。

皆が騒ぎ立てる中で2幕は下ります。

第3幕:『ドンパスクワーレ』のあらすじ

パスクワーレが「ノリーナの態度と浪費」に頭を抱える

ドン・パスクワーレの家

ドン・パスクワーレとノリーナ

召使いたちはノリーナが注文した商品の対応で慌ただしくしています。
部屋はそれらのドレス、帽子、毛皮などで埋め尽くされています。

ドン・パスクワーレは請求書の束の前に座り、ノリーナの横暴を阻止しようと決意します。

しかし、ノリーナが芝居を見に外出するのをみて
ドン・パスクワーレが「浮気女よ、部屋に戻れ!」と怒鳴ると、
反対に平手打ちを食らってしまいます。

ノリーナが「浮気の密会の手紙」をわざと落とす

ノリーナは「また明日ね」と言い、「わざと一枚の手紙を落として」外出します。

ドン・パスクワーレが「また請求書か」と思って開くと、それは「逢引の約束をした手紙」でした。
ドン・パスクワーレはますます怒り、マラテスタを呼びに行かせます。

エルネストとマラテスタ

エルネストとマラテスタが今後の計画のすり合わせをしています。

パスクワーレが「妻は金遣いが荒いし、浮気もしている。妻を追い出そう!」とマラテスタと話す

ドン・パスクワーレとマラテスタ

エルネストが出て行ったところに、すっかり落ち込んだドン・パスクワーレが入ってきます。
ドン・パスクワーレとマラテスタは以下のような会話をします。

パスクワーレ
「半年分のお金がもう使われたよ。」
「平手打ちもするし。でももっと大変なことが・・・」
「この手紙を見てよ。あいつは浮気もしてるんだ。」
マラテスタ
「それは信じられない・・・」
「逢引の現場をとらえて、二度とそうしないようにさせよう。」
パスクワーレ
「それじゃ甘いよ。もうあの女は嫌だ。」
マラテスタ
「そしたら浮気を突き止めて、彼女を追い出しますか?」
パスクワーレ
「そうだ、そうしよう!」

そして、マラテスタとパスクワーレは逢引の現場へ向かいます。

エルネストとノリーナの愛の二重唱

ドン・パスクワーレの家の隣の庭

エルネストがセレナードを歌っている(Com'è gentil)ところに、ノリーナが入ってきます。
二人は愛の二重唱を歌います。

「Com'è gentil」

パスクワーレが浮気現場に現れる

そこにマラテスタとドン・パスクワーレが忍び寄ってきます。
ドン・パスクワーレが浮気現場をとらえようと入りますが、そこにはエルネストの姿はもうありません。

ノリーナは「新鮮な空気を吸っていただけ。」と言いいますが、
パスクワーレは「今すぐ出ていけ!」と怒ります。

そして皆は以下のような会話をします。

マラテスタの計画通り、パスクワーレが「エルネストとノリーナの結婚」を認める

マラテスタ、ノリーナ、パスクワーレ

マラテスタ
「(パスクワーレに)ここは俺にまかせてくれ。」
「明日ここに新しい花嫁が来るんだ。それはエルネストの花嫁、ノリーナだ。」
ノリーナ(妹のフリのままで)
「そんなのダメよ!それなら出ていった方がまし。」
パスクワーレ
「いいぞ、いいぞ!」
ノリーナ
「でも結婚するってのは本当なの?みせかけじゃないの?」
マラテスタ
「(パスクワーレに)これは本当に結婚させないとマズいな。」
「エルネストはいるか!?」

エルネストも登場

エルネスト
「ここにいますよ。」
マラテスタ
「パスクワーレがお前とノリーナの結婚も認めているぞ。お金もくれるって。」
「(パスクワーレに)時間がないから、認めてくれ。」
パスクワーレ
「その通りだ。急いでノリーナを呼べ。結婚させてやる。」
マラテスタ
「それが呼ぶ必要はないんだよ。ノリーナはここにいるから。」
「本当の妹は修道院にいるのさ。」
パスクワーレ
「裏切り者ーー!」
エルネストノリーナ
「騙してすみませんでした。どうか許してください。」
パスクワーレ
「・・・仕方ない。許してあげよう。」
「幸せになれよ!!」

エルネストとノリーナが結ばれハッピーエンド

エルネストとノリーナが結ばれ、ドン・パスクワーレもそれらを許します。
ハッピーエンドでオペラは終わります。

ドニゼッティ『ドンパスクワーレ』の映像

輸入盤・日本語字幕なし
2006年チューリヒ歌劇場でのライブ録音です。
ベルカントオペラの申し子ファン・ディエゴ・フローレスがエルネスト役を見事に演じています。
またパスクワーレ役のベテラン歌手ルッジェーロ・ライモンディも、演技・歌唱共に楽しませてくれます。
イサベル・レイは、アーノンクールの『フィガロの結婚』のDVDなどでもおなじみの歌手です。

日本語字幕がなくとも観たくなる素晴らしい公演内容です。
ブルーレイ版では高音質・高画質でオペラが楽しめます。

【キャスト等】
エルネスト:ファン・ディエゴ・フローレス
ドン・パスクアーレ:ルッジェーロ・ライモンディ
ノリーナ:イサベル・レイ

チューリヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:ネッロ・サンティ
演出:グリシャ・アサガロフ