目次
項目 | データ |
---|---|
作曲 | 1869年-1874年 |
初演 | 1876年 |
台本 | リヒャルト・ワーグナー |
演奏時間 | 4時間20分 |
リヒャルト・ワーグナーの『神々の黄昏(Götterdämmerung)』は、『ニーベルングの指環』4部作の4作目(第3日)に当たります。
『ニーベルングの指環』は、
・序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)
・第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)
・第2日 『ジークフリート』(Siegfried)
・第3日 『神々の黄昏』(Götterdämmerung)
の4部からなり、上演に約15時間も要する大作です。
台本は、北欧神話の物語を基としたワーグナーの独自の世界観が描かれています。
すべてを作曲するのに26年もの歳月をかけ、全曲初演は1876年8月13日にようやくおこなわれました。(第1回バイロイト音楽祭)
このバイロイト音楽祭は、『ニーベルングの指環』を上演するためにワーグナー自らが創設した音楽祭です。
ここでは、そんなワーグナー『神々の黄昏』のあらすじを紹介したいと思います。
【4部作すべての概要はこちらから】
登場人物
ジークフリート(テノール):ジークムントとジークリンデの子。
ブリュンヒルデ(ソプラノ):ヴォータンの娘。ジークフリートの妻。
グンター(バリトン):ライン河畔のギービヒ家の当主。
グートルーネ(ソプラノ):グンターの妹。
ハーゲン(バス):アルベリヒが人間の女に生ませた息子。グンターとは異父弟。
アルベリヒ(バス):ニーベルング族の小人。ハーゲンの父。
ワルトラウテ(アルト):ワルキューレの一人。ブリュンヒルデの妹。
3人のノルン:運命の女神、三姉妹。エルダの娘。
3人のラインの乙女
『ジークフリート』と『神々の黄昏』の間の出来事
アルベリヒ:ニーベルング族の小人で、「ラインの黄金」を盗み指輪を作った人物。
これまでの物語を通して、指輪は
アルベリヒ⇒ヴォータン⇒巨人族⇒ジークフリート
の順で渡っています。
ヴォータンはヴァルハル(天上界)に戻ります。
そして世界樹のとねりこを切り倒し砦の周りに積み上げ、神々の終焉の準備を始めます。
一方、アルベリヒは豪族ギーギヒとの間に子供ハーゲンを作り、彼に指輪奪還の使命を託します。
一方で、指輪には"死の呪い"がかけられています。
この呪いは、ラインの川底(元々あった場所)に返すことで解かれます。
『神々の黄昏』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
ハーゲンは、いわゆる「悪者」です。
【序幕】ジークフリートがブリュンヒルデに指輪を渡し、山を下りて世間へと旅たちます。
【第1幕】ハーゲンがジークフリートに「忘れ薬」を飲ませます。記憶をなくしたジークフリートは、ブリュンヒルデから指輪を奪います。
【第2幕】裏切られたと勘違いしたブリュンヒルデは、ハーゲンに「ジークフリートは背中に弱点がある」と教えてしまいます。
【第3幕】ハーゲンがジークフリートを殺します。事情をすべて理解したブリュンヒルデは指輪を奪い返し、"ジークフリートへの愛を歌いながら"炎の中へ身を投げます。
指輪はラインの底に戻り、呪いは解けます。
神々が炎で包まれる中で幕が下ります。
序幕:『神々の黄昏』のあらすじ
ワルキューレの岩の上
3人のノルンが運命の綱を編みながら、「世界のこれまでの出来事や未来」について語っています。
しかしアルベリヒやジークフリートについて語り終えないうちに、綱が切れてしまいます。
ノルンたちは、母エルダのもとへ帰っていきます。
ブリュンヒルデ:ヴォータンの娘。ジークフリートの妻。
ジークムントとジークリンデは、ヴォータンとの人間の間に生まれた双子の兄妹です。
従って、ジークフリートはヴォータンの孫にあたります。
夜が明けるとジークフリートとブリュンヒルデが登場します。
ジークフリートは武勲をたてるため、山を下り世間へと旅立とうとしています。
ジークフリートは、ブリュンヒルデに「指輪」を贈ります。
それに対し、彼女は自らの愛馬グラーネを贈ります。
お互いの愛を確かめ合うと、ジークフリートは馬に乗って旅たっていきます。
第1幕:『神々の黄昏』のあらすじ
第1場:ハーゲンの陰謀
ラインの河畔、ギービヒ家の館
グートルーネ:グンターの妹。
ハーゲン:アルベリヒが人間の女に生ませた息子。グンターとは異父弟(義兄弟)。
グンターとグートルーネ、ハーゲンの3人は、「ギービヒ家の結婚」について話し合っています。
ハーゲンは、結婚相手として「グンターにはブリュンヒルデを」「グートルーネにはジークフリート」を勧めます。
ハーゲンは「策略は、あの酒(忘れ薬)を手に入れた私にまかせておきなさい。」と告げます。
第2場:ハーゲンがジークフリートに"忘れ薬"を飲ませる
ジークフリートが小舟に乗って、ラインを上ってきます。
ハーゲンはジークフリートを館に招待し、忘れ薬を飲ませます。
"ブリュンヒルデを忘れた"ジークフリートは、グートルーネに惹かれプロポーズをします。
グンターは「ブリュンヒルデを連れて来てくれれば、妹を妻にしてあげよう。」と告げます。
ジークフリートはそれを承諾し、グンターと共にブリュンヒルデのいる岩山へ向かいます。
第3場
ブリュンヒルデのいる岩山
「呪われた指輪をラインの娘たちに返してほしい。」
ブリュンヒルデは指輪を手に取って幸せを感じています。
そこにヴァルハル(天上界)から妹のワルトラウテが現れます。
ワルトラウテは「呪われた指輪をラインの娘たちに返してほしい。」という父ヴォータンの望みを伝えます。
ブリュンヒルデは「指輪はジークフリートの愛の形見で、例えヴァルハルが崩れ落ちても返せない。」と言い、断ります。
ワルトラウテは恨み言葉を残して去っていきます。
記憶をなくしたジークフリートが、指輪を奪う
そこに記憶をなくしたジークフリートが現れます。
彼は「隠れ頭巾」をかぶって、グンターの姿に変装しています。
ジークフリートは「おれ(グンター)の妻になれ!」と言い、さらには「指輪」を奪い取ります。
ジークフリートはノートゥングの剣を抜き、グンターとの信義を誓います。
第2幕:『神々の黄昏』のあらすじ
第1場:ハーゲンの夢
ギービヒ家の館の前
眠っているハーゲンは、夢を見ています。
夢の中で父アルベリヒが「指輪を奪い返せ」とハーゲンに攻め立てます。
第2場、第3場:ジークフリートが戻り、結婚式の準備が始まる
夜が明ける
グンターにブリュンヒルデを預けて、ジークフリートが先に帰ってきます。
ハーゲンは、家臣に「結婚式の準備」を始めさせます。
第4場
ブリュンヒルデの"怒り"と"苦しみ"
遅れてグンターがブリュンヒルデを連れて帰ってきます。
2組の結婚式がひらかれることになります。
"グンター"と"ブリュンヒルデ"
のカップル
ブリュンヒルデは「ジークフリートとグートルーネが一緒にいる」ことに驚きます。
そして"ジークフリートが記憶をなくしている"ことを知らないブリュンヒルデは、激高します。
さらには「ジークフリートが指輪をはめている」ことに気づきます。
ブリュンヒルデはグンターに「指輪」について問いただします。
グンターは「何も知らない」と答えます。
記憶をなくしているジークフリートも潔白を主張します。
3人が「ジークフリートの死」を誓う
混乱し苦しむブリュンヒルデに、ハーゲンが近づき「私がお前の復讐を手伝おう。」と語ります。
そして、ハーゲンはブリュンヒルデから「ジークフリートの背中に弱点がある」ことを聞き出します。
名誉を奪われたグンターも加わり、ハーゲン・ブリュンヒルデ・グンターの3人は「ジークフリートの死」を誓います。
ハーゲンは「指輪を奪い取らなければならない!」と叫びます。
第3幕:『神々の黄昏』のあらすじ
第1場:ジークフリートが「呪われた指輪を返す」ことを断る
ラインのほとり
ラインの乙女たちが「ラインの黄金(指輪)」が戻ってくることを願っています。
そこに指輪を持ったジークフリートが現れます。
乙女たちは「その指輪は呪われています。」「指輪の呪いは、ラインの流れだけが償ってくれます。」と告げ、指輪を返すよう願います。
しかし"恐れを知らない"ジークフリートは、それを断ります。
第2場:"記憶を取り戻した"ジークフリートが殺される
ジークフリートのもとにハーゲンたちが現れ、宴会がはじまります。
"忘れ薬の解毒剤"を飲まされたジークフリートは、次第に記憶を取り戻していきます。
ジークフリートが"蘇った記憶"を語りだし、ブリュンヒルデについて語りだしたところで、ハーゲンが彼の急所の背中を槍で刺します。
ジークフリートは、"ブリュンヒルデを思い出しながら"息絶えます。
ジークフリートの葬送行進曲
ここで「ジークフリートの葬送行進曲」(間奏)が流れます。
第3場
ハーゲンがグンターを殺す
ギービヒ家の館
グートルーネは「ジークフリートが帰ってこない」ことを不安に思い、「ジークフリートに会いたい!」と独白しています。
そこにハーゲンたちが「ジークフリートの死体」を運んで戻ってきます。
グートルーネは"殺人犯"であるハーゲンを恨みます。
続いて、ハーゲンはグンターに「指輪」を要求します。
グンターが断ると、ハーゲンはグンターも殺してしまいます。
そしてハーゲンが"ジークフリートの死体"から指輪を取り上げようとすると、死んだはずの彼の腕が脅すように持ち上がります。
皆は驚き、立ち尽くします。
ブリュンヒルデが指輪を持って、炎の中に飛び込む
そこに"これまでの経緯を理解した"ブリュンヒルデが戻ってきます。
彼女は「自分こそがジークフリートの妻だ」と名乗り、「彼と永遠を誓いました。」と語ります。
グートルーネは「ハーゲンの策略にはまり騙された」ことに気づきます。
ブリュンヒルデは家臣たちに、ラインの岸に薪の山を積み上げさせます。(Starke Scheite)
そして、ジークフリートの死体から指輪を抜くと、「この指輪をラインの娘たちに差し上げます。」と語ります。
さらに薪に火を放つと、ブリュンヒルデは愛馬グラーネに乗って"ジークフリートへの愛を歌いながら"炎の中に飛び込みます。
「Starke Scheite」
指輪の呪いが解かれ、神々が炎に包まれる
炎はギービヒ家の館に燃え移り、さらにヴァルハル城にも燃え移ります。
ハーゲンは、指輪を追って水中に飛び込み溺れ死にます。
指輪はラインの乙女たちのもとへと戻り、ようやく呪いが解けます。
神々が完全に炎で包まれ、幕は下ります。
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