項目データ
初演1840年2月11日 パリ・オペラ・コミック座
台本ジュール・アンリ・ヴェルノワ、ジャン・フランソワ・バイヤール
演奏時間1時間45分

連隊の娘(La fille du régiment)』は、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti/1797年-1848年)によって作曲されたオペラです。
劇中でトニオ(テノール)が歌うアリア「Ah! mes amis, quel jour de fête!」は、ハイC(高いド)が多用されることで知られており、華やかでとても人気のある曲です。

フランス語で上演されることが多いことが多いオペラですが、イタリア語で歌われることもあります。

 ロッシーニ、ベッリーニとこのドニゼッティの3人は、19世紀前半のイタリアオペラを代表する作曲家としてベルカントオペラの全盛期をリードしました。

ドニゼッティは『愛の妙薬』『連隊の娘』『ドン・パスクヮーレ』などの喜劇的なオペラを書く一方で、『アンナ・ボレーナ』『ルクレツィア・ボルジア』『ランメルモールのルチア』などの悲劇的なオペラも遺しました。

ここでは、ドニゼッティのオペラ『連隊の娘』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
マリー(ソプラノ)第21連隊の酒屋で働く娘
トニオ(テノール)チロル人の青年
シュルピス(バス)軍曹
ベルケンフィールド侯爵夫人(メゾソプラノ)実はマリーの母親
オルタンシウス(バス)侯爵夫人の執事

『連隊の娘』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
ナポレオン戦争の真っ只中


【第1幕】
マリーは戦場でフランス軍に拾われ、軍のアイドル的存在です。
彼女は、命を救ってくれたトニオと恋に落ちます。
しかしマリーの身元が「侯爵夫人の姪」だったことが明らかになり、マリーはパリへ連れていかれます。
マリーとトニオは離れ離れとなります。


【第2幕】
マリーは政略結婚をさせられそうになっています。
そこにトニオ率いる軍が現れ、阻止しようとします。

侯爵夫人は苦しむマリーに心を動かされ、トニオとの結婚を承諾します。

 マリーは実は侯爵夫人の独身時代の娘でした。それを建前のために隠していたのです。

そしてハッピーエンドでオペラは終わります。

第1幕:『連隊の娘』のあらすじ

ナポレオン戦争の最中

ナポレオン戦争時代のスイス、チロル地方の農村
大砲の音が遠くから聞こえています。
村人たちはフランス軍敵の攻撃に備え、女性たちはマリア像に祈りを捧げます。

その中には、「旅行中に戦争がはじまった」ため動けずにいたベルケンフィールド侯爵夫人もいました。
恐れる夫人を執事オルタンシウスが慰めています。

しばらくすると「フランス軍が退却した」知らせが入るので、皆は喜びます。

フランス軍のアイドル、マリーの登場

シュルピスとマリー

そこに突然フランス軍の老軍曹シュルピスが現れます。
皆が逃げ、夫人が隠れる中、マリーが軍服姿で「ラ、ラ、ラ、ラ、ラ」と歌いながら入ってきます。
マリーは戦場で軍曹に拾われ育てられ、フランス軍の二十一連隊の皆のアイドルとなっています。

軍曹とマリーが二重唱で二人の思い出を歌います。

一度落ち着くと、
軍曹が「お前が誰かとこっそり会ってると聞いたんだが。」と切り出します。
マリーは「私の命を救ってくれたチロルの若い男(トニオ)と会っている。」と告白します。

トニオ(マリーの命の恩人)が連行されてくる

するとマリーを探していたトニオが兵士に捕えられ連行されてきます。
彼はキャンプ地をうろついていたため、スパイと間違えられたのでした。

マリーはシュルピスに、「この人がその若い男だ」と小声で話し、
軍の皆に「私の命を救ってくれた人を殺すのか。」と言います。

それを聞いた皆はトニオを仲間として迎え入れます。
マリーは祝宴の仕上げに「連隊の歌」を歌います。
やがて点呼の時間になるので、シュルピスと兵士たちはトニオを連れて出て行きます。

マリーとトニオが愛の二重唱を歌う

ひとりになったマリーのもとに、トニオがこっそり逃げ出し戻ってきます。
トニオは「祖国も友人も、あなたのためなら僕は捨てられる。」と語り、二人は愛の二重唱を歌います。(Quoi! vous m'aimez!)

「Quoi! vous m'aimez!」

「マリー=侯爵夫人の姪」だと明らかになる

二重唱が終わると、シュルピスと侯爵夫人、オルタンシウスが現れます。
そしてシュルピスと侯爵夫人の会話の中で、「マリーが侯爵夫人の妹の子供」であることが明らかになります。

 妹(マリーの母)は既に亡くなっている

侯爵夫人は姪が生きていることを喜びますが、マリーの行儀が悪いことに驚きます。
侯爵夫人は「侯爵家にふさわしい礼儀を身につけさせる」ために、マリーをパリに連れていくと決めます

そこに兵士たちが戻ってきます。

兵士の中に混じったトニオが、「僕は彼女の夫になるためだけに入団した」と高らかに歌い、彼女との関係を認めてくれるよう懇願します。(Ah! mes amis, quel jour de fête!)
皆は残念がりますが、愛し合う二人のために承諾します。

「Ah! mes amis, quel jour de fête!」

マリーとトニオの別れ

アリアが終わり、トニオがシュルピスに「僕は兵士になりました。彼女をください。」と頼むと、
シュルピスは「侯爵夫人がマリーをここから連れていくことになった。」と告げます。

トニオとマリーは別れの悲しみを歌い、兵士たちもマリーとの別れを嘆きます。
そしてマリーが泣きながら旅たっていきます。

第2幕:『連隊の娘』のあらすじ

マリーが政略結婚をさせられそうになっている

侯爵夫人邸
侯爵夫人はマリーをクラーケントルプ家(名家)に嫁がせようとしており、彼女をしつけています。
そしてシュルピスは侯爵家の執事として働いています。

侯爵夫人はマリーに歌のレッスンをしますが、マリーとシュルピスはふざけて「連隊の歌」を歌いあげます。

侯爵夫人はあきれて、
「今日は新しい家族(結婚相手)が来るんだから、お願いだから礼儀良くしてね。」
と話し、シュルピスを連れて部屋から出ていきます。

一人になったマリーは
「私の運命は変わってしまった。」
「婚約が私を不幸にする。」
と、絶望とトニオへの愛を歌います。(C'en est donc fait)

トニオたちが乱入してくる

そのとき、太鼓が鳴り響き「トニオを先頭とした二十一連隊」が突入してきます。
トニオとマリー、シュルピスは再会を喜びます。

「C'en est donc fait 」

そこに侯爵夫人も入ってくるので、トニオは「マリーとの結婚の許可」を求めます。(Pour me rapprocher de Marie)

侯爵夫人は「私の姪は婚約しており、まもなく結婚する」と告げます。
そしてシュルピスだけを部屋に残させます。

「Pour me rapprocher de Marie」

マリーは実は「侯爵夫人の娘」だった

侯爵夫人はシュルピスに
「実はマリーは私の子供だ。」
「独身時代の子供なので、恐くて打ち明けられなかった。」
と秘密を語ります。

真実を知ったシュルピスは、侯爵夫人のために結婚に協力することにします。

マリーが政略結婚を了承する

クラーケントルプ家(婚約者の一行)と、公証人が到着します。
クラーケントルプ公爵夫人は、「マリーがまだこの場にいない」という無礼な行為に怒ります。

しばらくするとマリーが現れます。
「侯爵夫人が自分の実の母」だと知ったマリーは、母に従って結婚すると告げます。

政略結婚は中止となり、マリーとトニオが結ばれる

そこにトニオが兵士たちと一緒に入ってきます。

トニオは
「マリーを救いに来た。」と叫び、
「マリーは(侯爵家で育ったのではなく)かつては連隊の娘だった。」と告げます。

マリーは皆に
「彼らは不幸な私を育ててくれました。」
「死にそうな気持ちだけど、結婚に署名します。」
と語り、結婚証書に署名しようとします。

すると娘の不幸に耐えきれなくなった侯爵夫人が、
「署名はしなくていい。トニオを花婿にしなさい。」
と告げます。

シュルピスは祝福し、クラーケントルプ公爵夫人は怒って出ていきます。
皆がフランスと彼らの愛を称える中で幕が下ります。

『連隊の娘』の映像

【2005年2月:ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ劇場(イタリア)】
フローレスがロッシーニを最も得意としていた時期の名録音です。
パヴァロッティやクラウスとは全く異なるトニオを聞かせてくれます。

配役等演奏者
トニオフアン・ディエゴ・フローレス
マリーパトリツィア・チオーフィ
侯爵夫人フランチェスカ・フランチ
ホルテンシウスダリオ・ベニーニ
シュルピスニコラ・ウリヴィエーリ
演奏カルロ・フェリーチェ歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮リッカルド・フリッツァ

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