目次
項目 | データ |
---|---|
初演 | 1893年2月1日 トリノ王立劇場 |
原作 | アベ・プレヴォー『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』 |
台本 | マルコ・プラーガ、ドメーニコ・オリーヴァ、ジュリオ・リコルディ、ルイージ・イッリカ |
演奏時間 | 2時間 |
『マノン・レスコー(Manon Lescaut)』は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini/1858年-1924年)が35歳の頃に作曲したオペラです。
この他に同じ原作で作られたオペラには、プッチーニの作品の10年ほど前に作られたマスネの『マノン』(1884)が挙げられます。
原作は18世紀(1731)の古い小説ですが、19世紀後半でも良く知られていた小説だったそうです。
このオペラは彼にとって三作目で、プッチーニはこの作品で脚光を浴び始めます。
そして、この後に彼は『ラ・ボエーム』『トスカ』『蝶々夫人』と次々と傑作を生み出していきます。
またこの作品の台本を担当した一人に、ルイージ・イッリカがいました。
彼はこの後、プッチーニの傑作オペラの台本を次々と書いていきます。
ここでは、プッチーニのオペラ『マノン・レスコー』のあらすじを紹介したいと思います。
主な登場人物
登場人物 | 詳細 |
---|---|
マノン・レスコー(ソプラノ) | |
マノン・レスコーの兄(バリトン) | |
騎士デ・グリュー(テノール) | マノンに一目惚れする |
ジェロンテ(バス) | 金持ち、マノンを狙っている |
エドモント(テノール) | 学生 |
『マノン・レスコー』の簡単なあらすじ
時間のない方のための「簡単なあらすじ」
18世紀末のフランス
【第1幕】
デ・グリューはマノンに一目惚れします。
しかし、マノンが「明日、修道院に行かなければならない。」と語ります。
デ・グリューはマノンを家族から奪い、パリへと愛の逃避行をします。
【第2幕】
二人は引き裂かれ、マノンはジェロンテ(金持ち)の愛人となります。
しかし二人が再会すると、二人の愛は再び盛り上がります。
怒ったジェロンテは警察を呼び、マノンは逮捕されアメリカへ送還されます。
【第3幕】
デ・グリューがアメリカ行の船に忍び込み、マノンと一緒にアメリカに向かいます。
植民地(アメリカのルイジアナ)を逃げ出した二人でしたが、行く当てのない二人は荒野を彷徨います。
マノンが息絶えデ・グリューも倒れ、悲しみの中でオペラが終わります。
第1幕:『マノン・レスコー』のあらすじ
エドモンドとデ・グリュー
人々が広場で飲んだり騒いだりしています。
そこに騎士デ・グリューが登場します。
学生エドモンドがデ・グリューを仲間に誘いますが、デ・グリューはそれを断ります。
皆が「なぜ?失恋でもしたのか?」と尋ねると、
デ・グリューは「ここには僕の心を奪う美人はいない。」と答えます。
女性たちはそれに怒り、エドモンドたちは「ブラボー!」と騒ぎます。
騎士デ・グリューが、マノンに一目惚れをする
マノンの登場
馬車から軍曹レスコー、その妹マノン、金持ちのジェロンテが降りてきます。
デ・グリューはマノンの美しさにすぐに惹かれ、彼女に名前を尋ねます。
そして、「彼女が明日の夜明けに修道院に旅たつ」ことを聞き出します。
マノンは修道院に行くことを悲しみ、それに対しデ・グリューは「修道院にいってはならない。」と語ります。
その時、宿の予約を済ませた兄がマノンを呼ぶので、彼らは今晩再開することを約束して別れます。
デ・グリューは彼女の美しさを朗々と歌い上げます。(Donna non vidi mai)
エドモンドたちは、デ・グリューが恋に落ちたことを冷やかします。
「Donna non vidi mai」
ジェロンテとレスコー(兄)
ジェロンテもマノンを狙っており、兄レスコーに「3人で夕食はどうか?」と誘います。
続いてジェロンテは宿のあるじに馬車を用意させ、マノンを誘惑することを計画します。
しかし、それをエドモンドに盗み聞きされます。
エドモンドはデ・グリューに「あの老いぼれがマノンを誘拐するらしいぞ。」と伝えます。
そして、デ・グリューを助けることを約束します。
デ・グリューがマノンを連れて、パリへ逃げる
学生たち(エドモンドの仲間)は、ゲームに夢中になっている兄レスコーに酒をたくさん飲ませます。
マノンが約束通り待ち合わせに現れると、デ・グリューが「一緒に馬車に乗って逃げよう」と語ります。
マノンは拒み続けるが、デ・グリューの熱意に負けて決心を固めます。
そしてデ・グリューはジェロンテの用意した馬車でパリへ去っていきます。
そこにジェロンテが登場するが、マノンの姿は既にありません。
ジェロンテと兄レスコーは二人の後を追うことにし、計画が成功したエドモンドたちは高らかに笑います。
第2幕:『マノン・レスコー』のあらすじ
デ・グリューと引き離されたマノンは、ジェロンテの愛人になる
パリ、ジェロンテの豪華な屋敷
駆け落ちをしたデ・グリューとマノンだったが、すぐに引き離されてしまっています。
そしてマノンはジェロンテの愛人として裕福な生活を送っています。
マノンは「別れの挨拶もなしにデ・グリューを捨ててしまった」ことを後悔しています。
そしてデ・グリューと粗末な家で交わした愛を思い出しています。(In quelle trine morbide)
レスコーはマノンに「デ・グリューは裕福になってお前を取り戻すために、賭け事で金を手に入れようとしている。」と伝えます。
「In quelle trine morbide」
今の生活に嫌気を感じているマノンの前に音楽家が現れ、マドリガルを歌います。
ダンスのレッスンもおこなわれ、ジェロンテも登場し、皆でマノンの美しさを称えます。
皆は退場します。
マノンのもとにデ・グリューが現れ、再び愛が燃え上がる
マノンとデ・グリュー
マノンが一人になったところに、デ・グリューが現れます。
彼は自分を捨てた彼女を激しく非難します。
しかしマノンがデ・グリューへの愛を訴え続けると、デ・グリューもマノンへの愛情を抑えきれなくなります。
二人の愛は再び混じり合います。
愛人ジェロンテが警察を呼び、マノンは捕えられる
ジェロンテの嫉妬
そこにジェロンテが突然現れます。
ジェロンテは嫉妬し、「私にはやらなければならないことがある。」と言い退場します。
入れ違いで兄レスコーが現れ
「ジェロンテがお前を訴えた。」
「警察が来るからすぐに逃げろ!」
とマノンに知らせます。
しかし、マノンは逃げる前に自分の宝石をかき集めます。
その間に周りを警察に取り囲まれてしまいます。
デ・グリューは剣を抜いてジェロンテに襲い掛かろうとするが、兄レスコーが止めに入ります。
マノンは捕えられ、引きずられていきます。
第3幕:『マノン・レスコー』のあらすじ
マノンがアメリカへ送られる
港の広場
マノンは収監され、アメリカに送られることが決まりました。
デ・グリューと兄レスコーは、マノンを助けるために港を訪れます。
レスコーは護衛を買収しており「友人と騒ぎを起こしている間に、マノンを奪還する計画」を立てています。
デ・グリューは見張りの隙を見てマノンと対面し、「あなたは助かる。」と彼女を励まします。
しかし、突然遠くから銃声が聞こえます。
レスコーが「作戦は失敗だ!襲撃は失敗だ!」と駆け下りてきます。
デ・グリューもマノンと同じ船に乗り込む
アメリカへ
囚人たちが点呼をとられ、次々と進んでいきます。
そして、マノンもその中にいます。
デ・グリューは艦長に「水夫でも何でもいいから、僕を雇ってください!」と懇願します。
艦長は心を動かされ、デ・グリューを雇うことにします。
デ・グリューもマノンと共に、アメリカに向かうことになります。
第4幕:『マノン・レスコー』のあらすじ
マノンとデ・グリューが荒野をさまよっている
ニューオーリンズの乾いた荒野
不祥事を起こしたマノンとデ・グリューは植民地を逃げ出し、疲れ果てて荒野をさまよっています。
マノンの疲労は限界に達し、倒れ込みます。
デ・グリューは喉の渇きに苦しむマノンのために、水を探しに行きます。
一人になったマノンは
「私は見捨てられ、この砂漠で死ぬのね。」
「でも死にたくない。愛しい人、助けて!」
と叫びます。(Sola, perduta, abbandonata)
「Sola, perduta, abbandonata」
マノンが息絶え、デ・グリューも倒れ込む
デ・グリューが急いで戻ってきて、マノンは彼の腕の中に倒れ込みます。
デ・グリューは「地平線上には何もない。(水がない)」と絶望して語ります。
マノンとデ・グリューは愛を確かめ合い、キスをします。
マノンは「私の愛は死ぬことはない。」と最後に告げ、息絶えます。
デ・グリューは悲しみで意識を失い、マノンの上に倒れ込みます。
悲しみの中でオペラは終わります。
プッチーニ『マノン・レスコー』の映像
輸入盤・日本語字幕なし
2014年、コヴェント・ガーデン王立歌劇場でのライブ映像です。
ジョナサン・ケントの演出は、舞台を現代のアメリカに置き換えています。
カウフマンの情熱的な演技・歌唱が、見事にデ・グリュー役とマッチしています。
若手ソプラノ、クリスティーネ・オポライスはマノン役を得意としており、バイエルン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場でもマノン役を近年歌っています。2018年には、ローマ歌劇場の来日公演で同じくマノンを演じる予定です。
【キャスト等】
マノン・レスコー:クリスティーネ・オポライス(ソプラノ)
デ・グリュー:ヨナス・カウフマン(テノール)
レスコー:クリストファー・マルトマン(バリトン)
ジェロンテ:マウリツィオ・ムラーロ(バス)
エドモント:ベンジャミン・ヒューレット(テノール)
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:ジョナサン・ケント
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