項目データ
作曲年1934-1935年
初演バレエ:1938年12月30日 国立ブルノ劇場(チェコスロヴァキア)
その他の初演第1組曲=1936年、第2組曲=1937年、第3組曲=1946年、ピアノ独奏用組曲=1937年
演奏時間バレエ=2時間半、第1~3組曲=それぞれ25分程度

セルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev/1891年-1953年)の『ロメオとジュリエット』は、彼の傑作のひとつに数えられるバレエ音楽です。
バレエ音楽全曲が演奏される機会は少ないですが、コンサートでは抜粋や組曲を聴く機会があると思います。

作品はもちろんシェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』を基にしたもので、この原作を基に多くのクラシック作品が今日までに生まれています。

 ・ベッリーニ作曲『カプレーティ家とモンテッキ家』(1830年初演)/オペラ
・ベルリオーズ作曲 劇的交響曲『ロメオとジュリエット』(1839年初演)
・グノー作曲『ロメオとジュリエット』(1867年初演)/オペラ
・チャイコフスキー作曲 幻想序曲『ロメオとジュリエット』(1870年初演)
などが代表例として挙げられます。

ここではプロコフィエフ『ロメオとジュリエット』の解説と名盤を紹介したいと思います。

プロコフィエフ『ロメオとジュリエット』の演奏

作品の中でも最も有名な「モンタギュー家とキャピュレット家」です。
第2組曲の1曲目に当たります。

 ちなみにバレエ音楽では、第1幕 第2場 第13曲「騎士たちの踊り」で同様の音楽が流れます。

15年ぶりにロシアに帰ったプロコフィエフ

ロシア革命(1917年)で国内が混乱に陥る中で、プロコフィエフは祖国を離れることを決意します。
そして1918年にロシアを発ち、1932年までアメリカやパリ等で亡命生活を送りました。

そんなプロコフィエフでしたが、1933年、15年ぶりにロシアに帰りモスクワを拠点とします。
『ロメオとジュリエット』の作曲が始まったのは、その翌年のことでした。

初演の契約が破棄されてしまう

プロコフィエフは、当初は作品の題材として『ペレアスとメリザンド』や『トリスタンとイゾルデ』も候補として考えていたそうですが、『ロミオとジュリエット』をバレエ化することになります。

台本は、ラドロフ(シェイクスピアに精通している演出家)・ピオトロフスキー(ギリシャ劇の権威で劇作家)・ラブロフスキー(振付師)の協力を経て完成します。
そして1935年に作曲も完成します。

しかしトラブルが勃発し、初演をするはずだったボリショイ劇場(モスクワ)から契約を破棄されてしまいます。

 当初はレニングラード・バレエ学校創立200年祭のために書かれていましたが、その後ボリショイ劇場と新しく契約したそうです。

「バレエには複雑な音楽」と「ハッピーエンド」

契約破棄の一つの理由は「踊るには音楽が難しすぎる」ということでした。
リハーサルを重ねるにつれて、ダンサーから苦情がくるようになったそうです。

また物語の結末を改変し、「ハッピーエンド」の台本に書き直したことも要因の一つとも言われています。
その理由としては、「死人は踊れないから、主人公を生き残した。」「国からの要望だった。」とも言われています。

 ロメオが、ジュリエットがまだ生きている間に墓場に到着するという結末

物語を変えたことは、ロシア国内の文化人の間でも論争となりました。
指揮者のユーリー・ファイエルは、プロコフィエフに「原作通りにストーリーを戻す」ように提案したと言われています。

チェコスロバキアで初演

契約が白紙となったプロコフィエフは、まずは組曲として作品を世に出すことにします。
それぞれ7曲からなる組曲に書き換え、第1組曲をボリショイ劇場(1936年)で、第2組曲をレニングラード(1937年)で初演しました。

そしてバレエ全曲も無事に1938年末に国立ブルノ劇場(チェコスロヴァキア)で初演されます。

初演の大成功で、地元に凱旋

ブルノ劇場での初演は大成功を収めました。
その成功により、作品は2年後の1940年にレニングラードのキーロフ劇場でロシア国内で初めて演奏されることとなります。

 このときには、物語はハッピーエンドではなく、原作通りの「悲劇」に書き換えられました。

ちなみに世界最高のダンサーによる豪華な国内初演で、ラヴロフスキー(演出振付)・ウィリアムス(美術)・ファイエル(指揮)の3人はスターリン賞を受賞しました。

ただプロコフィエフの思い通りの音楽を再現することはできませんでした。
プロコフィエフの反対にもかかわらず、ラヴロフスキーはスコアを大きく変えたそうです。
また「ダンサーに音が聞こえない」という理由で直前にオーケストラを厚くしたようで、組曲の方がプロコフィエフが本当に表現したかった音楽に近いとも言われています。

プロコフィエフ『ロメオとジュリエット』の名盤

スクロヴァチェフスキ指揮&ケルン放送交響楽団
古典派やロマン派の印象が強い一方で、実はストラヴィンスキーやショスタコーヴィチ、プロコフィエフなどの音楽も得意としていたスクロヴァチェフスキによる録音です。

緩急のある劇的な音楽が流れており、かつよく引きしまった演奏が堪能できます。

【収録情報】
プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』
組曲 第1番 作品64bis
組曲 第2番 作品64ter
組曲 第3番 作品101

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
ケルン放送交響楽団
録音:1994年、1995年

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