邦題皇帝ティートの慈悲
初演1791年9月6日 プラハ国立劇場
原作ピエトロ・メタスタージオ「皇帝ティートの慈悲」
台本カテリーノ・マッツォーラ
演奏時間2時間15分

『皇帝ティートの慈悲(La clemenza di Tito)』は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart/1756年-1791年)が作曲したオペラです。

このオペラは、レオポルト2世の戴冠式の祝典のために書かれました。
内容が「皇帝を賛辞する物語」のため馴染みにくいストーリーではありますが、その美しい音楽から近年評価の高まりつつあるオペラです。

 『皇帝ティートの慈悲』は、モーツァルトの亡くなった年に書かれた最後から2番目のオペラです。
初演は、彼の最後のオペラ『魔笛』のわずか3週間前に開かれました。

ここでは、モーツァルトのオペラ『皇帝ティートの慈悲』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
ティート(テノール)ローマ皇帝
セスト(メゾソプラノ)ティートの友人。ヴィッテリアを愛している
ヴィッテリア(ソプラノ)先帝ヴィッテリオの娘。王妃を狙っている
アンニオ(メゾソプラノ)セストの友人。セルヴィーリアの恋人
セルヴィーリア(ソプラノ)セストの妹。アンニオの恋人
プブリオ(バス)親衛隊長官

『皇帝ティートの慈悲』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
『皇帝ティートの寛大な心』を称えるオペラです。
ヴィッテリア(先帝の娘)は「自分がティートの花嫁候補にならない」ことに復讐心を持ち、セストに宮殿の放火を命じます。

 セストはティートの友人ですが、ヴィッテリアを愛しています。いわゆる「板挟み」の状態です。

セストは宮殿放火の罪で捕まり、ヴィッテリアの関与も明らかになります。
しかし皇帝ティートが寛大な心を示し、二人とも無罪になります。

皆がティートを称え、オペラが終わります。

第1幕:『皇帝ティートの慈悲』のあらすじ

ヴィッテリアが「ティート殺害」を企て、セストに依頼する

ヴィッテリアの部屋
次期皇妃を狙うヴィッテリア(先帝の娘)は「ティート(皇帝)がベレニーチェ(ユダヤ王の娘)と結婚することになった」ことに嫉妬します。

彼女は、自分のことを愛しているセスト(ティートの友人)に「ティートを殺して。あの地位は元々は私のものだったのよ。」と殺害を命じます。

セストは躊躇しますが、「ヴィッテリアへの愛」から殺害を引き受けてしまいます。

「ティート殺害計画」の延期

そこにアンニオ(セストの友人)が現れ「ティートとベレニーチェの結婚の中止」を知らせに現れます。
そして、「ティート殺害計画」は延期になります。

ヴィッテリアは自分に疑いの目を持つセストに対して「私を喜ばせたいなら、疑いの目は捨てなさい。」と歌います。(Deh, se piacer mi vuoi)

"Deh, se piacer mi vuoi"

アンニオはセルヴィーリア(セストの妹)と結婚したい

一方、アンニオはセルヴィーリア(セストの妹)との結婚を望んでいます。

アンニオとセストは友情を誓い、セストは結婚に協力することを約束します。

ティートが「セルヴィーリア(セストの妹)と結婚する」と宣言する

フォーロ・ロマーノ(古代ローマの大広場)
ティート(皇帝)がセストに「セルヴィーリア(セストの妹)と結婚する」と宣言します。
セストとアンニオは絶望しますが、受け入れるしかありません。
アンニオはセルヴィーリアに事情を話し、恋を諦めようとします。

"Del più sublime soglio"


 セルヴィーリアとの結婚を決めたティートが、「王座の唯一の喜びがこれだ。他には苦しみしかない。」と歌います。

ティートが「セルヴィーリアとの結婚」を諦め、「ヴィッテリアと結婚する」ことを決める

しかし、セルヴィーリアがティートに「私をお望みなら結婚しますが、私には秘密があります。」「私はアンニオを愛しているのです。」と語ります。

すると寛大なティートは結婚を諦め、次に「ヴィッテリアと結婚する」ことを決めます。

何も知らないヴィッテリアが「宮殿を燃やして!」と依頼する

しかし、ヴィッテリアは「ティートが自分と結婚しようとしている」ことを知りません。
ヴィッテリアはセストに「ティート殺害はまだ?」「急いで宮殿を燃やしてよ!」と語ります。

セストは愛するヴィッテリアのために仕方なく応じます。

"Parto, ma tu, ben mio"


 セストがヴィッテリアに「あなたを喜ばすために行きます。そして無事に戻ってきます。」と歌います。

セストが宮殿に火を放つ

そのとき、ヴィッテリアに「ヴィッテリアが王妃に選ばれた」ことが知らされます。
ヴィッテリアはセストの行動を止めようとしますが、既にセストは宮殿に向かった後でした。

セストは「自分が王を裏切る」ことに恐れながらも、宮殿に火を放ちます。
ヴィッテリアは苦しむセストに対し「このことを明かしたらいけませんよ。」と口止めをします。

第2幕:『皇帝ティートの慈悲』のあらすじ

セストが逮捕される

宮殿の安息所
セストは犯した罪の重さに苦しんでいます。

アンニオはセストに「ティートは無傷だった」ことを伝え、「ティートの側で罪を償ってくれ」と語ります。
一方、ヴィッテリアはセストに「セスト、逃げて!あなたが捕まったら秘密がばれるわ!」と語ります。

そこに、プブリオ(親衛隊長官)が現れ、セストは逮捕されてしまいます。

"セストを信じたい"ティートは、セストに直接事情を聞くことにする

ティートは「セストの裏切り」にひどくショックを受けています。
プブリオはティートに「死刑の同意」を求める一方、アンニオは助命を嘆願します。

ティートはセストから直接事情を聞くことにします。

セストが事実を明かさず、ティートが死刑を命じる

セストはティートに「私はあなたを裏切りました。」と語りますが、詳細(ヴィッテリアの関与)は明かしません。

"Deh, per questo istante solo"

 セストが「私の苦しみは、あなたを裏切ったことです。私は慈悲に値しません。」と歌います。

怒ったティートは「セストを闘技場に連れていく(死刑)」ように命じます。
そして、王としての苦しみを歌い上げます。(Se all'impero amici dei)

ヴィッテリアが「セストへの愛」に目覚め、救出に向かう

ヴィッテリアは「セストが自分の罪を暴露した」と思っています。
そこにアンニオとセルヴィーリアが「セストの助命の嘆願」に現れます。

ヴィッテリアは「セストが黙ってくれていた」ことを知ると、ようやく彼への愛に目覚めます。
そしてヴィッテリアはセストを助けるために闘技場へ向かいます。

ティートが全員を許し、オペラが終わる

闘技場
セストの処分が下されようとしたときに、ヴィッテリアが登場します。
ヴィッテリアはティートに「私が首謀者です。セストが自分を愛していることを悪用しました。」「あなたが私を無視するから復讐心をもってしまったの。」と告白します。

ティートは「王妃候補が新たな罪人となった」ことに困惑します。
しかし「私が残忍な男になるよう仕向けたようだ。」「慈悲の心は、不実よりも強いのだ。」と寛大な心を示し、ティートは全員を許します。

そして皆が皇帝を称える中で、オペラは終わります。

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