項目データ
初演1865年6月10日 バイエルン宮廷歌劇場(ミュンヘン)
原作ゴットフリート・フォン・シュトラスブルクの同名の叙事詩
台本リヒャルト・ワーグナー
演奏時間4時間

『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』は、リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner/1813年-1883年)によって作曲された楽劇です。

台本はワーグナー自身が書き上げたもので、台本の執筆を始めたのは1855年だったと言われています。
また、このオペラ(楽劇)が作られた頃、ワーグナーは不倫の真っ最中で、これが作品に影響したとも言われています。

『トリスタンとイゾルデ』は完成から初演までに6年もの年月がかかりました。
何回かのとん挫を経て、ワーグナーのパトロンであるルートヴィッヒ2世の宮廷劇場でようやく初演されました。

ここではワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

トリスタン(テノール):マルケ王の甥、騎士
イゾルデ(ソプラノ):アイルランドの姫

マルケ王(バス):コルンヴァールの王。
クルヴェナール(バリトン):トリスタンの従者
メロート(テノール):マルケ王の部下
ブランゲーネ(メゾソプラノ):イゾルデの侍女

牧人(テノール)/舵手(バリトン)/若い水夫 (テノール)

『トリスタンとイゾルデ』の簡単なあらすじ

イゾルデ(アイルランドの姫)は、マルケ王に嫁ぐために航海している。
トリスタンは護送役としてその舵を切っている。

愛に苦しむトリスタンとイゾルデは死の薬を飲むが、それは「愛の薬」だった。
二人は激しく愛し合う。
そしてマルケ王の留守中に逢引をしているところを、二人は見つかる。(マルケ王の部下メロートの策略)

トリスタンとメロートは剣を交え、トリスタンは重傷を負い居城に帰る。
そこでイゾルデを待つが、彼女が来ると間もなくトリスタンは息絶える。

イゾルデも息絶え、マルケ王は二人の冥福を祈る。

オペラ(楽劇)が始まる前の出来事

幕が開く前に、既にいくつかの事情が絡み合っている。

 トリスタンは、かつてイゾルデの婚約者を戦いで殺害していた。
イゾルデはその事実を知りながら、トリスタンが戦いで負った傷を治してしまった。
そして、いつの間にかトリスタンに恋をしてしまっている。

イゾルデはトリスタンに「愛」と「憎悪」の二つの感情を持っている。
一方、トリスタンもイゾルデを愛してしまっている。

 オペラ(楽劇)は船の中から始まる。
イゾルデはマルケ王に嫁ぐために航海している。
その護送役をトリスタンが務めている。
※トリスタンはマルケ王の甥で、王に仕える騎士

イゾルデは「愛していないマルケ王」に嫁ぐくらいなら、「トリスタンを殺して、自分も死のう」と考えている。

第1幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

すれ違うトリスタンとイゾルデ

イゾルデを乗せた船は、順調にコルンヴァール(マルケ王の国)に近づいている。
イゾルデは「嵐が起きて船が沈めばいいのに。」と嘆き、侍女のブランゲーネがそれを心配する。

一方トリスタンはイゾルデを避けている。
イゾルデはブランゲーネに「トリスタンを私のところに挨拶に来させなさい。」と頼む。
しかしトリスタンは「船の舵で忙しい。」と言い、それを断る。

イゾルデが侍女に秘密を打ち明ける

イゾルデはブランゲーネに「私は、自分の婚約者を殺したトリスタンの傷を治した。」と秘密を打ち明ける。
そして、「それなのにあいつは恩も忘れて、私をマルケ王に差し出そうとしている。」と嘆く。

ブランゲーネは
「マルケ王と結婚できることは良いことです。」
「トリスタンもあなたに忠実に仕えてくれますよ。」
と慰める。

「死の薬」

イゾルデは「愛のない結婚は苦しみだ」と嘆き、ブランゲーネに薬箱を持ってこさせる。
箱にはいくつもの薬が入っているが、イゾルデが必要としたのは「死の薬」だった。

イゾルデは「死の薬」で「自分も死んで、トリスタンも殺す」ことを決意する。
そしてトリスタンを呼びに行かせる。

「愛の薬」を飲み合う

イゾルデのもとに、トリスタンが現れる。
トリスタンとイゾルデはお互いの愛情を隠し、皮肉を言い合う。

イゾルデはブランゲーネから「薬の入った杯」を受け取る。
そしてトリスタンに「償いの杯を交わそう」と言い、杯を渡す。

トリスタンは「死の薬」と気付きながらも飲む。
それをイゾルデが取り上げ、残りの半分を飲む。
二人は「愛の苦しみ」から逃れるために、薬を飲んだのだ。

しかしブランゲーネが渡したのは「死の薬」ではなく「愛の薬」だった。

愛の二重唱、船の到着

二人の愛は燃え上がり、愛の二重唱を歌いあげる。
やがて、船はコルンヴァールに到着する。

イゾルデがブランゲーネに「なぜ死ななかったのか?」と問うと、
ブランゲーネは「愛の薬を渡した。」と白状する。

それを聞いたいイゾルデが失神しトリスタンの胸に倒れ掛かったところで、1幕が終わる。

第2幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

コルンヴァール、マルケ王の城

トリスタンとイゾルデの不倫

マルケ王は部下メロートの勧めで、猟に出掛けている。

イゾルデはトリスタンとの逢引を待ちわびている。
その様子を見たブランゲーネは「愛の薬」を渡したことを悔いている。

 メロートは王に外出させ、イゾルデとトリスタンの不貞を暴こうとしている。

やがてイゾルデのもとにトリスタンが現れる。
二人は珠玉の「愛の二重唱」を歌いあげる。(O sink hernieder, Nacht der Liebe)

「O sink hernieder, Nacht der Liebe」(おお 降りてきてくれ、愛の夜よ)

ブランゲーネが「もうすぐ夜が明ける」と警告するが、二人は構わず愛を歌い続ける。

マルケ王が不倫現場に現れる、トリスタンが城を去る

そこにメロートに連れられて、マルケ王が現れる。
マルケ王は怒りよりも、「大切な二人に裏切られた」ことへの悲しみを強く訴える。

トリスタンは「もはやこの地にはいられない」と感じ、日の射さない夜の国へ行くことを決意する。
そしてイゾルデも連れていくことにする。

その時メロートが「裏切られた王のために」と剣をトリスタンに向ける。
トリスタンは抵抗せずに重傷を負い、クルヴェナール(トリスタンの従者)の腕に倒れる。
マルケ王が止めに入ったところで、2幕が終わる。

第3幕:『トリスタンとイゾルデ』のあらすじ

トリスタンの城

瀕死のトリスタン

トリスタンはクルヴェナール(トリスタンの従者)によって故郷に連れられ、自身の城で瀕死の状態になっている。

クルヴェナールは「トリスタンの傷を治せるのはイゾルデの薬だけだ。」と気付いている。
クルヴェナールはイゾルデを呼びに行かせる。

イゾルデの到着、トリスタンの死

トリスタンが錯乱しながらイゾルデの愛を叫んでいると、船が近づいたことを知らせる牧笛の音が聴こえる。

トリスタンはイゾルデの到着に喜び、包帯を引きちぎる。
しかしイゾルデが駆けつけると、間もなくトリスタンは息絶えてしまう。

イゾルデは意識を失い、トリスタンの上に倒れ掛かる。

マルケ王の到着、イゾルデの死

港にはもう1隻の船が到着する。
それはマルケ王たちの船だった。

クルヴェナールはトリスタンの死に絶望し、侵入するメロートたちを倒し、自身も重傷を負う。

しかし、マルケ王はトリスタンを攻撃しにきたのではなかった。
ブランゲーネから「愛の薬」の秘密を打ち明けられたマルケ王は、トリスタンとイゾルデを許すために来たのだ。
しかし既にトリスタンもクルヴェナールもメロートも死んでしまった。

最後にイゾルデも「愛の死(Liebestod)」を歌い静かに息を引き取る。(Mild und leise wie er lächelt)
マルケ王が冥福を祈る中で、全幕が下りる。

「愛の死(Liebestod)」(Mild und leise wie er lächelt)

ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』の映像

こちらは2009年のバイロイト音楽祭の『トリスタンとイゾルデ』が映像化されたものです。
バイロイト音楽祭の常連である名指揮者ペーター・シュナイダーの解釈に大きな賛辞が送られました。
歌手陣も好調でとても美しい音楽が堪能できます。

※「サブ画面で指揮者アングルが全編で見られる」という珍しいオプションが付いています。

キャスト等
トリスタン:ロバート・ディーン・スミス
イゾルデ:イレーネ・テオリン
ブランゲーネ:ミシェル・ブリート
クルヴェナル:ユッカ・ラシライネン
マルケ王:ロベルト・ホル
メロート:ラルフ・ルーカス

指揮:ペーター・シュナイダー
演奏:バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
演出:クリストフ・マルターラー

ペーター・シュナイダー(Peter Schneider, 1939年3月26日 - )
オーストリアの指揮者で、ワーグナーとリヒャルト・シュトラウスで特に評価が高い。
ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、バイロイト音楽祭など世界の一流歌劇場で活躍している。

バイロイト音楽祭(Bayreuther Festspiele)
ドイツのバイロイト祝祭劇場で毎年7月から8月にかけて開催される、ワーグナーのオペラ・楽劇を演目とする音楽祭
ワーグナー自らが『ニーベルングの指環』を上演するために創設した。
世界中からワグネリアン(ワーグナーのファン)が集まる一大イベントである。

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