項目データ
初演1840年12月2日 パリ・オペラ座
原作パキュラール・ダルノー「コメンジュ伯爵」
台本アンフォルス・ロワイエ、ギュスターヴ・ヴァエーズ
演奏時間2時間30分

『ラ・ファヴォリータ(La Favorita)』は、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti/1797年-1848年)によって作曲されたオペラです。
ドニゼッティの後期のオペラ作品で初演はフランス語で上演されましたが、イタリア語でも上演されます。

 ファヴォリータはイタリア語版のタイトルで、フランス語のタイトルは「La favorite(ファヴォリートゥ)」です。
 ファヴォリータとは、「国王の愛人」のことで、英語でいう「favorite(フェイヴァリット)=お気に入りの」です。
江戸時代の将軍の側室や、大奥を想像するとわかりやすいと思います。

当時ドニゼッティはパリ・オペラ座のために別のオペラを作曲していました。
しかし当時のオペラ座の支配人が「私の愛人(メゾソプラノ)に良い役が与えられていない!」と難色を示します。
そのためドニゼッティは自身の未完のオペラ『ニシダの天使』の大部分を転用して、急遽『ラ・ファヴォリータ』を完成させました。

ここではドニゼッティのオペラ『ラ・ファヴォリータ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
アルフォンソ11世(バリトン)国王
レオノーラ(メゾソプラノ)国王の愛人。フェルナンドと恋に落ちる
フェルナンド(テノール)元修道士で、軍人。レオノーラと恋に落ちる
バルダッサーレ(バス)修道院長。フェルナンドと王妃の父

イネス(Sp)、ドン・ガスパロ(T)など

『ファヴォリータ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための「簡単なあらすじ」

 主な舞台は、中世末期のスペインの「宮廷と修道院」です。
この時代は国王だけでなく教会にも大きな権力がありました。
【第1.2幕】
レオノーラは「国王の愛人」であるのにもかかわらず、フェルナンド(修道士)を愛してしまいます。
フェルナンドは愛するレオノーラのために修道院を飛び出します。

フェルナンドは「レオノーラが身分の高い人」だと勘違いしており、彼は軍人として出世を誓います。


【第3幕】
一方、レオノーラは「自分が国王の愛人」だという事を、後ろめたさからフェルナンドに告げることができません。
フェルナンドはその事実を「二人の結婚が決まった後」に知り、激怒します。
そして、フェルナンドは修道院へと帰っていきます。


【第4幕】
修道院に瀕死のレオノーラが現れます。
二人が愛を再び確かめ合い、レオノーラが息絶えたところでオペラが終わります。

第1幕:『ファヴォリータ』のあらすじ

フェルナンドが恋をし、修道院から出ていく

修道院
フェルナンド(修道士)は父親バルダッサーレ(修道院長)に「祭壇で祈る女性に恋をしてしまった。彼女こそが神でした。」と告白します。(Una vergine, un angel di Dio)

バルダッサーレは「息子を修道院の跡継ぎにしたい」と考えていましたが、フェルナンドは恋の虜になっています。
バルダッサーレは「神がお前に呪いをかけないといいけどな!」となじり、フェルナンドは修道院から出ていきます。

 この時代の修道院長はとても権力のある立場で、その跡継ぎはとても魅力的なものです。

"Una vergine, un angel di Dio"

レオノーラはフェルナンドに「自分の素性」を明かすことができない

レオーネ島の岸辺
フェルナンドが目隠しをされたまま、あいびきをするために島に辿り着きます。
フェルナンドはイネス(レオノーラの侍女)に「レオノーラの素性」を尋ねますが、本当のことを教えてもらえません。

やがてレオノーラが現れると、二人は喜び抱き合います。
しかし二人が相思相愛なのにもかかわらず、レオノーラは「フェルナンドのプロポーズ」を受け入れません。

 レオノーラは「王の愛人」ということ後ろめたく思い、身分を明かすことができません。

レオノーラが「レオノーラは身分の高い女性」だと勘違いする

レオノーラは手紙を渡し、「この愛は二人を破滅させるのよ。」とフェルナンドに別れを告げます。

その時、国王アルフォンソ11世の来訪の知らせが入ります。
レオノーラが急いで立ち去るので、フェルナンドは「レオノーラは身分の高い女性」だと勘違いします。

フェルナンドは「軍に入隊し出世して、レオノーラと結婚する」ことを誓います。

第2幕:『ファヴォリータ』のあらすじ

フェルナンドが軍人として活躍している

宮殿を見渡す回廊
国王が登場し「フェルナンドの活躍で、スペイン軍がイスラム軍に勝利した」と彼を賞賛します。
続いてドン・ガスパロ(王の部下)が国王に「バルダッサーレ(王妃の父)が王妃を蔑ろにしていることに怒って、こちらに来ている。」と告げます。
レオノーラの虜になっている国王は機嫌を損ねて、ドン・ガスパロを去らせます。

 バルダッサーレ(修道院長)は「王妃の父」であると同時に「フェルナンドの父」でもあります。

国王は「お前のためなら王冠も民も手放そう!お前は永遠に私のものだ。」とレオノーラへの愛を歌い上げます。(Vien, Leonora, a piedi tuoi)

一方、レオノーラも「フェルナンドの活躍」を知ります。
レオノーラは「父の政略で騙されて、王の愛人となってしまった」ことを嘆きます。

レオノーラは国王に「宮廷から引き下がらせてください。」と頼みますが、国王はそれを断ります。

"Vien, Leonora, a piedi tuoi"

「レオノーラの浮気」が明るみになる

ドン・ガスパロが国王の前に「フェルナンドがレオノーラに宛てた手紙」を持って現れます。
国王は「レオノーラの浮気」を怒り、その相手を聞き出そうとしますが、レオノーラは答えません。

そこにバルダッサーレが現れ「国王が王妃と離婚し、レオノーラと結婚しようとしていること」を責め立てます。
国王が傲慢な態度を貫くので、バルダッサーレは「レオノーラの追放」を唱え「国王を破門」にします。

そして、皆の混乱の中で第2幕が下ります。

第3幕:『ファヴォリータ』のあらすじ

フェルナンドが勝利の褒美として「レオノーラ」を要求する

宮殿の一室
勝利に貢献したフェルナンドが、出世して帰国します。
国王がフェルナンドに褒美を尋ねると、フェルナンドは「レオノーラと結婚したい。」と答えます。

国王は複雑な心境の中でそれに応じ、結婚式が開かれることになります。

レオノーラは「突然愛する人と結婚できることになった」ことを喜びます。
しかし彼女は「フェルナンドの妻になれるのは嬉しいけど…私の境遇を知ったら拒絶されるかも」と、複雑な心情を歌い上げます。(O mio Fernando)

そこでレオノーラはイネス(侍女)を通して「自分が王の愛人であることを伝えよう」としますが、ドン・ガスパロ(王の部下)の妨害で伝えることができません。

"O mio Fernando"

「レオノーラの素性」が明らかになり、フェルナンドが激怒する

結婚式のために大勢の人々が集まってきます。
フェルナンドはレオノーラと共に、礼拝堂へ入っていきます。
皆は「あいつは王から侯爵の称号だけでなく、王の愛人までもらうのか!?」と嫉妬し嫌悪感を抱きます。

しばらくすると、フェルナンドは「皆が結婚を祝福してくれない」ことに気づき戸惑います。
するとバルダッサーレにより「レオノーラは国王の愛人」だということが伝えられます。

フェルナンドは怒り苦しみ、バルダッサーレに連れられて宮廷を去っていきます。

第4幕:『ファヴォリータ』のあらすじ

フェルナンドは修道院に戻っている

修道院
王妃が死に、修道院は悲しみに包まれています。

 バルダッサーレ(修道院長)は「王妃の父」であると同時に「フェルナンドの父」でもあります。

一方修道院に戻ったフェルナンドは、レオノーラを憎んでいながらも、未だに彼女を愛しています。
彼は「あの純粋な天使は決して戻ってこない。神様、あの人をどうか忘れさせてください。」と彼女への想いを歌います。(Spirto gentil)

"Spirto gentil"

二人が愛を再確認するが、レオノーラは息絶えてしまう

フェルナンドが礼拝堂へ向かうと、そこで修道女の格好をしたやつれたレオノーラと出会います。
レオノーラはこれまでの真相を語り、二人の溝はようやく埋まります。

二人は愛を再び確かめ合いますが、幸せな時間は長くは続きませんでした。
レオノーラはその場で息絶えてしまい、悲しみの中でオペラは終わります。

その他の曲目一覧(目次)

その他の作品・あらすじ・歌詞対訳などは下記リンクをクリックしてください。

クラシック作品(目次)

オペラ作品(目次)

ミュージカル作品(目次)

歌詞対訳(目次)

ピアノ無料楽譜(目次)