目次
項目 | データ |
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初演 | 1875年3月3日 パリ・オペラ・コミック座 |
原作 | プロスペル・メリメの小説『カルメン』 |
台本 | アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ |
演奏時間 | 2時間40分 |
『カルメン(Carmen)』は、ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet/1838年-1875年)によって作曲されたオペラです。
今では世界で最も有名なオペラの一つですが、ビゼーの生前にはヒットせず、彼の死後に人気を高めていきました。
このオペラは音楽の宝石箱のようで、「ハバネラ」「闘牛士の歌」など所々に名曲が散りばめられています。
「序曲」はクラシックファンではなくても、すべての人が耳にしたことがあるであろう音楽でしょう。
ビゼーの代表作としては、この他には『アルルの女』『真珠採り』などが挙げられます。
ここではビゼーのオペラ『カルメン』のあらすじと解説を紹介します。
記事の前半はあらすじの紹介を、後半は作品の成り立ちと解説をしています。
主な登場人物
人物名 | 備考 |
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カルメン(メゾソプラノ) | タバコ工場で働くジプシー |
ドン・ホセ(テノール) | 衛兵の伍長 |
ミカエラ(ソプラノ) | ホセの許婚 |
エスカミーリョ(バリトン) | 闘牛士 |
スニガ(バス) | 衛兵隊長、ホセの上官 |
カルメンの仲間と密輸団
ダンカイロ(バリトン)、レメンタード(テノール)
フラスキータ(ソプラノ)、メルセデス(メゾソプラノ)
『カルメン』の簡単なあらすじ
時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
真面目な兵士ホセは、自由に生きるジプシー、カルメンに恋をします。
そのことでホセの人生は大きく狂い始めました。
二人は結ばれますが、気の代わりが早いカルメンはすぐにホセを捨ててしまいます。
しかし、ホセは未練を断ち切れません。
失恋し嫉妬に狂ったホセが、カルメンを殺してしまったところで幕がおります。
第1幕:『カルメン』のあらすじ
ミカエラがホセを訪れるが、不在のため一度立ち去る
セビリアのタバコ工場前の広場
衛兵の伍長ホセの許嫁(いいなずけ)ミカエラが、ホセを訪ねてきます。
モラレスが「衛兵の交代の時間になるから、ホセはそろそろ来るよ。」と言うと、ミカエラは「また戻ってくるわ。」と返して立ち去ります。
やがて衛兵の交代の時間になると、ホセの登場です。
ホセがカルメンに惹かれる
タバコ工場が休憩の時間となり、女工たちが出てきました。
そこに混じっているのが、オペラの主役カルメンです。
カルメンはホセを挑発し、「私が惚れると危険だよ(ハバネラ)」と歌いあげます。
そしてホセに赤いバラを投げつけて去っていきます。
ホセは花を拾い上げ、カルメンの無礼な振る舞いに怒りながらも、彼女に惹かれ始めていくのでした。
「Habanera」
ホセがミカエラとの結婚を約束する
ミカエラが戻ってきて、「ホセの母からの手紙」をホセに渡します。
ホセは故郷を懐かしみ、「お母さんの言う通り、ミカエラと結婚するよ。」と言います。
ホセが喧嘩の首謀者カルメンを逃がし、「逃亡を助けた罪」で逮捕される
ミカエラが去ると、辺りが騒がしくなります。
女工たちによる喧嘩の始まりです。
上官ズニガの命令で、ホセは首謀者の一人のカルメンを縄で縛ります。
しかしカルメンが「逃がしてよ。私に恋してるんでしょ?」「酒場で会おうよ」と誘惑すると、ホセは誘惑に負け縄を緩めてしまいます。
ホセは既にカルメンに夢中になっているのでした。
カルメンは縄を解きほどき、ホセを押し倒し逃げ去っていきます。
そしてホセは「逃亡を助けた罪」で逮捕されていまいました。
第2幕:『カルメン』のあらすじ
エスカミーリョがカルメンに一目惚れし、去っていく
セビリアの町外れの酒場
カルメンたちが音楽に合わせて踊っています。
一緒に踊っているのはジプシー仲間のフラスキータとメルセデスです。
上官ズニガが現れて、カルメンに「ホセが今日出所した」と告げます。
エスカミーリョの「闘牛士の歌」
闘牛士エスカミーリョも現れます。
そこでエスカミーリョが歌うのが、有名なアリア「闘牛士の歌」です。(Votre toast)
エスカミーリョはカルメンに一目惚れし、去っていきます。
「Votre toast」
密輸団がカルメンを仲間に勧誘する
密輸団のダンカイロ、レメンダードがカルメンたちを密輸団に勧誘します。
フラスキータとメルセデスは密輸団に入りたがりますが、カルメンは「恋人に会う予定があるから行けない。」と言って話に乗りません。
出所したホセが、カルメンへの愛を情熱的に歌い上げる
出所したホセがようやく現れ、カルメンとの再会を喜びます。
しかし幸せな時間は一瞬でした。
「軍を呼ぶラッパの音」が聞こえると、カルメンの誘惑をほったらかして、ホセは帰ろうとします。
自由奔放なカルメンは納得いきません。
カルメンは「勝手にしろ!お前の愛はその程度か。」と怒ります。
ホセは赤い花を取り出して「違う。僕の身はあなたに捧げた。愛している!」と熱い想いを歌います。
これがホセの歌う有名なアリア「花の歌」です。
「la fleur que tu m'avais jetée」(花の歌)
カルメンは「違う、お前は私を愛していない。」「愛しているのなら、一緒に密輸団に入れ」と返します。
軍を裏切ったホセは、仕方なしに密輸団に加わる
ホセが「軍は捨てられない。脱走は出来ない!」「永遠にお別れだ。」とカルメンに叫びます。
そこに現れたのが、上官ズニガです。
ズニガはカルメンに「こんな身分の低い奴と恋愛しているのか?」と言い、ホセに「早く帰隊しろ。」と命令します。
バカにされたホセは、怒りが収まりません。
ホセとズニガは決闘をはじめてしまいます。
そこに密輸団一味が現れ、ズニガを締めあげます。
軍を裏切ったホセは、新しい居場所を探さなければいけません。
ホセは、仕方なしに密輸団に加わります。
第3幕:『カルメン』のあらすじ
心変わりの早いカルメンは、既にホセを愛していない
密輸団の基地
カルメンに「死」の占い
移り気のカルメンは、もうホセを愛していません。
フラスキータとメルセデスがカード占いをしていることろに、カルメンも参加します。
カルメンは何度も占いますが、結果はすべて同じです。
カードは「死」と予言されます。
カルメンはその不吉さを不気味に思うのでした。
ミカエラのアリア
ミカエラがホセを探しに現れます。
そして「私がかつて愛した人は汚れてしまった。カルメンは危険だけど、私は恐れはしない。」とホセを連れ戻す決意を歌います。(Je dis que rien ne m'épouvante)
「Je dis que rien ne m'épouvante」
ホセとエスカミーリョが決闘をする
ホセは一人で見張り番中です。
ホセはあやしい人影を見つけるので、銃を放ちます。
人影の正体は「カルメンを追ってきたエスカミーリョ」でした。
恋のライバルであるホセとエスカミーリョは決闘を始めますが、途中で密輸団が止めに入ります。
エスカミーリョは「君たち全員を闘牛場に招待しよう。愛するカルメンも来てほしい。」と言い残し、去っていきます。
ミカエラが「あなたのお母さんが危篤よ!」と、ホセを連れ戻しに来る
その時、物陰に隠れていたミカエラが見つかります。
ミカエラは、ホセを連れ戻しに来たのでした。
ミカエラはホセに「あなたのお母さんが危篤です。田舎に帰ってきてください。」と告げます。
ホセに冷めたカルメンも「行け!行け!」と言います。
母を大切に思うホセは、帰らないわけにはいきません。
ホセはカルメンに「待ってろよ!」と言い残し、母のもとへ去っていきます。
第4幕:『カルメン』のあらすじ
嫉妬に狂ったホセが、カルメンのストーカーとなる
セビリアの闘牛場前の広場
闘牛場の周りは、多くの人々で大賑わいです。
そこにカルメンを連れて登場したのが、エスカミーリョです。
エスカミーリョはカルメンに「愛している」と語ると、闘牛場に消えていきます。
フラスキータとメルセデスは、カルメンに「ホセが人混みの中に隠れているから気をつけて。」と忠告します。
ホセがカルメンを刺し殺す
カルメンのもとにホセが現れ、復縁を迫ります。
しかし、カルメンは全く相手にしません。
カルメンは「私はエスカミーリョを愛している」と言い、ホセからもらった指輪を投げ捨てます。
ホセは嫉妬に狂い、カルメンを短刀で刺し殺します。
ホセが「愛するカルメン!」と叫ぶ中で、オペラが終わります。
ビゼー『カルメン』の映像
パッパーノ&コヴェント・ガーデン王立歌劇場、アントナッチ、カウフマン2007年、コヴェント・ガーデン王立歌劇場でのライブ映像です。
現代屈指の売れっ子テノール歌手カウフマンが、当たり役のホセを情熱的に演じています。
ダルカンジェロは、日本でエスカミーリョを演じたことでも記憶に新しいです。
カルメン:アンナ・カテリナ・アントナッチ
ドン・ホセ:ヨナス・カウフマン
ミカエラ:ノラ・アンセレム
エスカミーリョ:イルデブランド・ダルカンジェロ
他
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団
指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:フランチェスカ・ザンベロ
カルメンの作品解説
ビゼーの才能を認めたオペラ・コミック座
カルメンが初演される3年前の1872年、ビゼーはオペラ「ジャミレ」をパリのオペラ・コミック座で初演します。
「ジャミレ」は10回公演されただけで終わってしまいましたが、カミーユ・デュ・ロクルはビゼーの才能を認め次の作品を依頼しました。
カミーユ・デュ・ロクルは、オペラ・コミック座の演出家で、「カルメン」の初演の演出をした人物です。
「ジャミレ」は人気は出ませんでしたが、リヒャルト・シュトラウスによって賞賛されました。
またマーラーはウィーン国立歌劇場の総監督時代に、「ジャミレ」をしばしば取り上げています。
難航した主役探し
オペラが完成した後にキャスト選びを始めましたが、主役(カルメン)が決まらずリハーサルは遅れを取ります。
最初にオッフェンバックが推薦した歌手は採用されず、次にビゼーが推薦した歌手は出演を断られてしまいました。
そして、ようやくカミーユ・デュ・ロクル(カルメン初演の演出家)が見つけてきたガリ・マリーに主役が決まります。
マリーは高額なギャラを要求し、金銭交渉は長期に及びました。
カミーユ・デュ・ロクルはヴェルディ「ドン・カルロ」の台本も書いています。
また同じくヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」「運命の力」のフランス語翻訳も手掛けています。
ハッピーエンドだったかも!?
演出家のデュ・ロクルは、リハーサル中に「カルメン」のあらすじをハッピーエンドに書き換えるように要求しました。
オペラ・コミック座の客層を考えてのことでしょう。
しかしカルメン役とエスカミーリョ役が「あらすじを変更したら出演しない」と猛反対し、そのままの台本で進められました。
ハッピーエンドで終わる「カルメン」を受け入れてれば、今とは全く違ったオペラになっていたかもしれません。
ビゼーは「カルメン」がヒットする前に亡くなった
カルメンは1875年の3月3日にパリのオペラ・コミック座で初演されました。
グノーやマスネ、オッフェンバックといった有名作曲家たちも初演を聴きに来ました。
そしてカルメンは初演こそ成功しませんでしたが、作品は次第に認められ始めます。
初演は第一幕のみ盛大な拍手に包まれましたが、終わりに向かうにつれて聴衆の熱は冷めていったと言われています。
しかし初演からわずか3ヶ月後に、ビゼーは36歳で心臓発作のため急死してしまうのです。
死の前日にビゼーはウィーン公演の契約にサインしていたので、まさに突然の出来事でした。
ビゼーが亡くなるまでの3ヶ月間で、「カルメン」は33回上演されました。
偉人たちも「カルメン」を評価
カルメンは批評家たちの間では、決して好評とは言えませんでした。
もちろん肯定的な意見もありましたが、「オーケストラに重きを置いていて、声について分かっていない」「ドラマ性がない」「メロディーが良くない」などと批判もされています。
しかしワーグナーやブラームス、チャイコフスキーなどの音楽史を代表する作曲家たちは、「カルメン」を賞賛しました。
ニーチェも「カルメン」のファンの一人です。
その後カルメンは大ヒットします。
そして大ヒットを見ることができなかったビゼーの記念碑を建てるために、1890年にオペラ・コミック座でコンサートが開催されました。
コンサートでは「カルメン」初演の主役である、ガリ・マリーも凱旋しました。
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