ウィリアム・テルGuillaume Tell
初演1829年8月3日(パリ・オペラ座)
原作フリードリヒ・フォン・シラーの戯曲『ヴィルヘルム・テル』
台本エティアンヌ・ド・ジュイとイポリット・ビス
演奏時間4時間弱

ウィリアム・テル(Guillaume Tell)』は、ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini/1792年-1868年)によって作曲されたオペラです。
ロッシーニはこのオペラを最後に30年以上の隠居生活に入りました。
フランス語で初演されたオペラですが、現在はフランス語以外にイタリア語でも多く上演されています。

 原作を書いたシラーは、ベートーヴェン『第九』の原詩でもよく知られています。

ここではロッシーニのオペラ『ウィリアム・テル』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
ギヨーム・テル(バリトン)ウィリアム・テルのこと。弓の名手
エドヴィージュ(メゾソプラノ)テルの妻
ジェミ(ソプラノ)テルの息子
マティルド(ソプラノ)ハプスブルク家の王女、アルノルドの恋人
アルノルド・メルクタール(テノール)マティルドの恋人
メルクタール(バス)アルノルドの父、長老
ヴァルテル・フルスト(バス)スイスの愛国者
ジェスレル(バス)スイス州とウーリ州の圧政官
ロドルフ(テノール)ジェスレルの部下、警備隊長
リュオディ(テノール)漁師
ルートルド(バス)羊飼い
狩人(バリトン)

『ウィリアム・テル』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
スイスは、オーストリアの圧政下にあります。
スイス各州は同盟を結び、自由を取り戻すために戦うことを決意します。

弓の名手テル(スイス側)は一度は敵に捕まりますが、最後に宿敵ジェスレルを打ち抜きます。
最後にスイス連合はオーストリアの圧政から脱し、自由を再び手にします。

サイドストーリー
アルノルドは敵国オーストリアの王女、マティルドと恋仲にあります。
敵国関係の中で、二人は国と愛の間で苦悩します。

第1幕:『ウィリアム・テル』のあらすじ

テルが「スイスが圧政下にあること」を嘆く

スイス・ウーリ州:ウィリアム・テルの家
農民や漁師が明るく働く中で、テルは「スイスの自由が失われた」ことを嘆いています。

 スイスはオーストリア(ハプスブルク家)によって支配されています。

一方、長老メルクタールの司式による3組の結婚式の準備が進められています。
メルクールは息子アルノルドに「お前も早く結婚しろ。」と催促します。

アルノルドは敵国の王女に恋している

そんな中、アルノルドはマティルド(ハプスブルク家の王女)と恋仲にあります。
アルノルドは敵国の王女を愛してしまった不遇と、彼女への愛を歌います。

 ある日、アルノルドは雪崩に巻き込まれた女性を助けました。
それが偶然にもマティルドで、二人はそのまま恋に落ちました。

そこに敵国オーストリアが来たことを知らせる角笛がなります。

 角笛はジェスレル(圧政官、敵のボス)だけではなく、マティルド(ハプスブルク家の王女、アルノルドの恋人)が来たことも意味します。

テルはアルノルドに「敵国と戦う」ことを訴え、アルノルドは愛と祖国との狭間で苦悩します。

メルクタールが敵に捕らえられる

結婚式の準備が整い、皆が祝い踊ります。
そこに羊飼いルートルドが助けを求めて逃げ込んできます。

 敵の兵士が、ルートルドの娘に暴行をします。
怒ったルートルドは、娘を守るために兵士を殺してしまったのでした。

川の流れが急な中、テルは舟を出してルートルドを向こう岸まで運び、彼を助けます。

ロドルフ(敵の警備隊長)が追ってきますが、ルートルドを捕えられないばかりか、共犯者(テル)も特定できません。
ロドルフは腹いせに、メルクタールを捕えます

第2幕:『ウィリアム・テル』のあらすじ

皆で「オーストリアの圧政に立ち向かう」ことを決意する

ルツェルン湖畔(4つの州にまたがっている)のリュートリの丘
人々が夜の訪れを歌います。

マティルド(ハプスブルク家の王女)が登場し、恋人への想いを歌います。(Sombre forêt)
そこに恋人アルノルドが現れ、二人は愛を確かめ合います。

「Sombre forêt」

人の気配を感じたマティルドは退場し、代わってテルとヴァルテル(スイスの愛国者)が登場します。
アルノルドは「父メルクタールが殺された知らせ」を受けると、愛を諦めて、復讐を誓います。

やがて各州(ウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデン)の愛国者たちも集結し、同盟が結ばれます。
皆は「共に敵国オーストリアと戦うこと」を誓います。

第3幕:『ウィリアム・テル』のあらすじ

アルノルドが恋人マティルドに別れを告げる

荒廃した礼拝堂
アルノルドは恋人マティルドに「父が殺された」ことを告げます。
アルノルドは彼女に永遠の別れを告げて去っていきます。

 このシーンは省略されることもあります。

テルが「羊飼いを助けた犯人」だと気づかれる

「オーストリアのスイス支配100周年記念祭」の準備がおこなわれています。
そこにはジェスレル(敵のボス)の帽子が掲げられています。

テルが息子ジェミを連れて現れます。
ジェスレルは皆に帽子に敬礼するよう命じますが、テルはそれを嘲笑します。

そのことがきっかけで「テルがルートルド(羊飼い)を助けた」ことが明るみになります。

テルが捕えられ、連行される

ジェスレルはテルに「息子の頭にリンゴを乗せ、それを打ち落としたら許してやる」と言います。
テルは狙いを定め(Sois immobile)、見事にリンゴを射抜きます。
しかし、もう1本の矢を足元に落としてしまいます。

「Sois immobile」

テルが「失敗したら、もう1本の矢でジェスレルを射るつもりだった」と語ると、ジェスレルは激高します。
テルは捕えられ、投獄のために連行されていきます。

息子ジェミは、マティルドの計らいで彼女の保護下となります。

 マティルドはハプスブルク家の王女なので、ジェスレルは彼女を粗末にはできません。

第4幕:『ウィリアム・テル』のあらすじ

同盟国が一丸となり「テルの救出」を誓う

アルノルドが亡き父を偲び、復讐を誓っています。(Asile héréditaire)
そこにスイス連合の人々が集結し、「テルの救出」を叫びます。
「Asile héréditaire」

アルノルドは「武器の隠し場所」を教え、皆で「テルの救出と復讐」を唱えます。

 アルノルドは戦いに備えて、亡き父と一緒に武器を集めていました。

母の元にジェミ(テルの息子)が戻る

テルの家
エドヴィージュ(テルの妻)が「夫と息子を失ったこと」を嘆いています。
そこにマティルドが息子ジェミを連れて現れ、エドヴィージュは息子の帰りを喜びます。

続いてルートルド(羊飼い)が現れ、彼らに「ジェスレルと一緒に船に乗ったテルは、鎖をほどかれ、舟の舵をとらされている。」と語ります。

「自由なスイス」を取り戻し、オペラが終わる

テルが要塞に連れていかれる途中
嵐の中、テルの乗った舟は岸に乗り上げます。
そこでテルは妻と息子と再会します。
ジェミは父テルに「薪がなかったので、家に火をつけて狼煙を上げた。」と語ります。

テルは息子から弓矢を受け取ると、ジェスレルを見事射止めます
そして狼煙で決起したスイス同盟軍が、ジェスレルの城を落とし戻ってきます。

嵐が静まり、皆が「再び訪れた自由」を歌いオペラが終わります。

ロッシーニ『ウィリアム・テル』の映像

2013年:ペーザロ音楽祭(ロッシーニ劇場)
日本語字幕ナシ

歴史上最高のロッシーニ歌いの一人い挙げられるフアン・ディエゴ・フローレスのアルノルドは必聴です。
ベテランのアライモも見事にテルを演じ、充実した歌唱を聴かせてくれます。

【キャスト等】
ニコラ・アライモ(ギョーム・テル)
ファン・ディエゴ・フローレス(アルノルド・メルクタール)
マリナ・レベカ(マティルド)
アマンダ・フォーサイス(ジェミ)

ボローニャ・テアトロ・コムナーレ管弦楽団、合唱団
指揮:ミケーレ・マリオッティ

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