項目データ
初演1919年10月10日 ウィーン国立歌劇場
台本フーゴ・フォン・ホフマンスタール
演奏時間3時間15分

リヒャルト・シュトラウス作曲の『影のない女(Die Frau ohne Schatten)』は、メルヘンオペラとも呼ばれ、モーツァルトの『魔笛』を意識したとも言われています。

 他には『魔弾の射手』(ウェーバー)・『さまよえるオランダ人』(ワーグナー)・『ヘンゼルとグレーテル』(フンパーディンク)等もメルヘンオペラに分類されます。

初演は大成功を収めましたが「上演時間が長い」ことや「台本の難しさ」からか、シュトラウスのオペラの中では上演機会は多い方ではありません。
ここでは、R・シュトラウスのオペラ『影のない女』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

皇帝(テノール)
皇后(ソプラノ)
乳母(メゾ・ソプラノ)
染物師バラク(バリトン)
染物師の妻(ソプラノ)
霊界の使者(バリトン)
宮殿の門衛(ソプラノ)
鷹の声(ソプラノ)
など

『影のない女』:簡単なあらすじ


時間のない方のための「簡単なあらすじ」


皇后は霊界の血をひいており、影がありません。

 影がないと、子供が産めません

もし皇后が1年以内に子供をもうけないと、皇帝は呪いにより石にされてしまいます。


皇后は「人間から影をもらう」ために人間界へ行きます。
しかし、影は手に入れられませんでした。


皇后は父カイコバート(霊界の大王)に、人間界で暮らせるよう懇願します。
すると「泉の水を飲めば、影が手に入る」と告げられます。

 飲めば、バラクの妻の影もなくなります。(バラク夫妻は、皇后が人間界で出会っている)
 この時点で既に皇帝は石になりかけています。

皇后は夫妻の愛のために「飲まない」ことを選び、皇帝と共に死ぬことを決意します。
すると突然皇后に影ができ、皇帝も元の姿に戻ります。

ハッピーエンドで物語は終わります。

幕前の出来事:『影のない女』あらすじ

霊界の血を引いた娘は「影がない」

東洋にある島
カイコバート(霊界の大王)は人間との間に、一人の娘をもうけました。

この娘は霊界の血を引くため、影を持っていません
また娘は、自由に動物に変身することもできます。

物語の1年前、皇帝は「カモシカに変身していた娘」を捕らえます。
カモシカは美女に変身し、皇帝は美女を妻(皇后)とします。

1年以内に影ができないと、皇帝は石化してしまう

しかし霊界の女と結婚した男は「1年以内に子どもができないと石になる」という呪いが、カイコバートによってかけられています。

 この世界では「影がないと子供が産めない」ことになっています。そのため、子供を産むためには影が必要です。

物語は、影のないままで「あと3日で1年」が過ぎようとしているところから始まります。

第1幕:『影のない女』あらすじ

あと3日で、皇帝は石になってしまう

皇帝の庭園のテラス
乳母は霊界の使者に「まだ皇后に影はない」と伝えます。
使者は「あと3日で1年経つ」ことを伝え去っていきます。

 乳母は皇后を守るためにいる「霊界の女」です。

やがて皇帝が現れると「皇后への愛」を歌い上げ、3日間の狩りに出かけていきます。

皇后が「影を手に入れる」ために、人間界へ向かう

皇后が一人でいると、が飛んできます。
鷹は「あなたが影を手に入れないと、皇帝が石になる。」と告げます。

初めて事実を知った皇后は驚きます。
そして乳母と共に、人間の社会へ「影を手に入れる」ために降りていきます。

バラクの妻は、子供は欲しくない

染物師バラクの家
バラクの兄弟が喧嘩をしています。
バラクの妻は彼らを追い出したいのですが、バラクは反対しています。

またバラクは子供が欲しいのですが、妻は欲しくありません。

 乳母は、子供が欲しくない妻がいる「バラク家」を相手に選びます。

「女中として働くこと」と引き換えに、妻が「影」を譲ってくれることに

やがてバラクが外出すると、貧しい恰好をした皇后と乳母が現れます。

乳母は魔法を使って、豪華な家や宝石などを妻に見せます。
そして「子供をあきらめれば、私たちがあなたに3日間仕えます。それを条件に影を譲ってほしい」と妻に頼みます。

妻は、影を譲ることを了承します。

乳母は魔法で魚料理と2台のベッドを出して、皇后と去っていきます。

妻には後悔の念が生まれ、鍋の魚の音が「生まれなかった子供の声」に聞こえます。
バラクが返ってくると、妻は「明日から召使が来る」ことを伝え一人で床に就きます。

第2幕:『影のない女』あらすじ

乳母は魔法で「妻の心」を夫から離そうとする

染物師バラクの家
バラクが仕事に出ると、乳母は魔法で「若い男」を出現させ、妻の心をバラクから離そうとします。

 皇后は、「影のために悲しい事をしなければならない」ことを嘆きます。

やがて、バラクが妻のためにご馳走を持って帰ってきます。
しかし、妻は食べません。
バラクは兄弟や乞食にそれを与え、妻以外がバラクを称えます。

皇帝が「皇后が人間界へ行った」ことに気づく

皇帝の鷹狩り小屋
皇帝は鷹に導かれ、鷹狩り小屋へいきます。
しかし、そこにいるはずの皇后がいません。

 皇帝は、皇后から「3日間、乳母と鷹狩り小屋にいる」という手紙を受け取っていました。

そこに皇后と乳母が帰ってきます。
皇帝は「皇后から人間のにおいがする」ことを感じ、彼女らが嘘をついていることに気づきます。

皇帝は皇后を殺そうとしますが、愛しているがゆえにできません。
皇帝は悲しみの中で一人で生きるために、鷹に導かれて岩屋へと向かいます。

皇后が「バラク家の不幸」を嘆く

染物師バラクの家
乳母はバラクを薬で眠らせ、魔法で呼んだ「若い男」で妻を誘惑します。
しかし、あと一歩のところで妻はバラクを起こします。

皇后は「自分のせいで人間を不幸にしてしまう」ことを嘆きます。

鷹狩り小屋の皇后の寝室
眠っている皇后は、「不幸なバラクの夢」と「皇帝が岩屋にいく夢」を見ます。
そして「自分が石になればいいのに」と歌います。

大地が割れ、バラクと妻が飲み込まれていく

染物師バラクの家
ついに3日目(最終日)も終わろうとしています。

妻はバラクに「不貞を働いた」と噓をつき、「子供も産まないから影を売った」と語ります。

驚いたバラクが妻を見ると、確かに影がありません。
乳母は皇后に「影をとる」ように促しますが、皇后は影はいらないと言います。

怒ったバラクは、妻を剣で殺そうとします。
妻は「不貞はしていませんが、私の心の罪のために殺してください。」と語ります。
すると、突然大地が割れ、バラクと妻が飲み込まれていきます。

第3幕:『影のない女』あらすじ

バラク夫妻が天へと昇っていく

地下の世界
分厚い壁を隔てて、バラクと妻が座っています。
妻は裏切りを後悔し、バラクも妻への愛を語ります。

すると天から声が聞こえ、二人は霊界の大王カイコバートの宮殿へと昇っていきます。

皇后が「皇帝の助命」を求めて、父のもとへ向かう

霊界の入口
皇后と乳母の乗った小舟が、カイコバートの宮殿に着きます。
皇后は乳母を残して、カイコバート(父)に「皇帝の助命」を求めるために宮殿に入っていきます。

残された乳母は、人間を呪います。
そこにバラク夫妻が別々にあがってきます。

乳母は二人を引き裂こうとしますが、カイコバートの使者に阻まれます。
そして乳母は霊界から追い出されてしまいます。

皇后が影を手にし、皇帝も助かる

霊界の宮殿
皇后はカイコバート(父)に「バラクの妻から影を奪えなかった」ことを告げ、人間界に住みたいと訴えます。

宮殿の門衛は「この泉の水を飲めば影が手に入り、バラクの妻は影を失う。」と皇后に告げます。
しかし、皇后はそれを飲みません。

 飲めば、皇帝も助かります。

さらには「石になりかけた皇帝」も姿を見せます。
皇后は「一緒に死にましょう」と語り、やはり飲むことを拒絶します。

すると皇后に突然影ができ、皇帝も元の姿に戻ります

バラク夫妻も再会し、ハッピーエンドで終わる

霊界の滝のある美しい風景
バラク夫妻が別々の方向から現れ、感動の再会を果たします。

 バラクの妻も、影を取り戻します。

そこに皇帝と皇后も加わり、ハッピーエンドで幕は下ります。

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