Edgarエドガール
初演1889年4月21日(ミラノ・スカラ座)
原作アルフレッド・ド・ミュッセ『杯と唇』
台本フェルディナンド・フォンターナ
演奏時間3幕版90分、4幕版150分

『エドガール』(Edgar)は、ジャコモ・プッチーニ(Giacomo Puccini/1858年-1924年)が作曲した2作目のオペラです。

初演(1889年)の評価はイマイチで、依頼したリコルディ社は改訂を要望します。
そのため「4幕から3幕に縮小」し改訂されたものが、1892年に上演されました。
しかし、それでもプッチーニは作品に納得いきませんでした。

彼の3~6作目(『マノン・レスコー』『ラ・ボエーム』『トスカ』『蝶々夫人』)がヒットしたのちに、再び改訂版を1905年にコロン劇場で上演します。
それが、これまで決定稿として残っています。

 150分(4幕)のオペラが、改定後は90分(3幕)にまで短縮されました。

長らく3幕版で上演されたこのオペラは「初演4幕版のスコアは第2次世界大戦でなくなった。」と考えられていました。
しかし、プッチーニの孫が大切に保管されていたことがわかります。
専門家によって初演4幕版が再現され、2008年に4幕版エドガールがトリノ王立歌劇場で復活しました。(タイトルロールはホセ・クーラ)

 物語はビゼーの傑作『カルメン』に似ており、恋愛と殺人が絡み合います。因果関係は不明ですが、フォンターナが台本を書き始めたのは『カルメン』初演の6年後のことでした。

ここではプッチーニのオペラ『エドガール』の3幕版のあらすじを紹介したいともいます。

主な登場人物

人物詳細
エドガール(Tn)フィデーリアの幼馴染で恋人
グァルティエーロ(Bs)
フランク(Br)グァルティエーロの息子、ティグラーナに恋している。
フィデーリア(Sp)グァルティエーロの娘、エドガールの幼馴染で恋人。
ティグラーナ(Ms)ムーア人の両親に捨てられ、グァルティエーロに育てられた。エドガールを誘惑している。

『エドガール』簡単なあらすじ

時間のない方のための「簡単なあらすじ」


【第1幕】
エドガールはフィデーリアと仲の良いカップルです。
一方、ティグラーナはエドガールを奪おうとしています。

ある日、ティグラーナは礼拝のミサを邪魔し、村人たちから怒りを買います。

エドガールはティグラーナを庇い、自分の家に火をつけます。
そしてティグラーナと2人で逃亡します。


【第2幕】
既にエドガールはティグラーナに飽きており、フィデーリアを懐かしんでいます。
エドガールはティグラーナと別れるために入隊を志願し、出兵していきます。


【第3幕(その1)】
エドガールの偽の葬儀がおこなわれています。
ティグラーナがわざとらしく悲しんでいます。

そこに修道僧(正体はエドガール)が現れ
「あいつの正体をお見せしましょう。」と語り
「宝石をあげるから、エドガールの悪事を告白しなさい。」
とティグラーナに告げます。

ティグラーナは宝石に目がくらみ、エドガールの悪事を証言します。


【第3幕(その2)】
すると修道僧は衣装を脱ぎ「エドガールは生きているぞ!」と叫びます。
そしてエドガールはフィデーリアと共に去ろうとします。

しかし、怒ったティグラーナはフィデーリアを刺し殺してしまいます。
エドガールがフィデーリアの亡骸の上で泣く中で、オペラが終わります。

第1幕:『エドガール』あらすじ

エドガールが、恋人フィデーリアと仲良さげに会話している

14世紀:フランダース地方コルトレイク近くの村の広場

 コルトレイク:ベルギーの都市

朝になり、農民たちは仕事に出かけます。
しかし、エドガールは居酒屋で朝まで飲み明かし、ウトウトしています。

そこにフィデーリア(エドガールの幼なじみ、恋人)が登場します。(O fior del giorno)
フィデーリアはエドガールと仲睦まじげに世間話をした後に、アーモンドの花をプレゼントし去っていきます。(Già il mandorlo vicino)

「Già il mandorlo vicino」

ティグラーナがエドガールを誘惑する

やがてティグラーナが登場します。

 ティグラーナ:ムーア人の両親に捨てられ、フィデーリアの姉妹として育てられました。エドガールを誘惑しフィデーリアから奪おうとしています。

ティグラーナは
「あんな子鳩(フィデーリアのこと)ちゃんが好きなんて趣味悪いわね!」
「あなたは燃えるような快楽やキスが欲しいはずよ!」
と、エドガールを誘惑します。

エドガールは「悪魔は黙っとけ!」と叫んで、帰っていきます。

フランクはティグラーナに恋している

続いてフランク(フィデーリアの兄)が登場し、
「昨日の夜はどこにいたんだ?待ってたんだぞ!」
とティグラーナに詰め寄ります。

ティグラーナは
「あんたの愛にはうんざりなのよ!」
とあしらいます。

フランクは「この恥ずべき恋を忘れたい…けど彼女を愛している!」と歌い上げます。(Questo amor, vergogna mia)

「Questo amor, vergogna mia」

ティグラーナがミサを邪魔し、農民たちの怒りをかう

一方、教会ではミサが始まり、農民たちが祈りを捧げています。
そこにティグラーナが登場し、農民たちを威嚇し、横柄な態度で歌いだします。

農民たちは怒り、ティグラーナを追い出そうとします。
ティグラーナは後ずさりし、エドガールの家の前まで来ます。

エドガールがティグラーナを擁護する

現れたエドガールは、なんと短剣を持ち
「下がれ!教会に戻らないと刺すぞ!」
と叫び、ティグラーナの味方をします

狂ったエドガールが、家に火をつけティグラーナと逃亡する

さらに冷静さを失ったエドガールは
「呪われた父の家よ!」
家に火をつけ、ティグラーナと二人で逃げようとします。

そこにフランクが引き止めにやってきます。
しかし、グアルティエーロ(フランクの父)の制止もむなしく、エドガールとフランクは決闘となります。

エドガールはフランクを刺し、ティグラーナと村を去っていきます。
農民たちが「呪われるがいい!」と二人に叫ぶ中で、一幕が終わります。

第2幕:『エドガール』あらすじ

エドガールはティグラーナに冷めて、フィデーリアを懐かしんでいる

豪華な屋敷
宴会がひらかれる中、エドガールが現れます。

エドガールは
「もうティグラーナには惹かれないよ。」
「僕を愛してくれた天使の横顔(フィデーリア)がなつかしい!」
と昔の思い出をしのんでいます。(Orgia, chimera dall'occhio vitreo)

「Orgia, chimera dall'occhio vitreo」

ティグラーナの想いは、エドガールには届かない

一方、ティグラーナは
「もう私を愛していないのね。」
「じゃあなんで一緒に逃げたり、家を燃やしたりしたのよ!」
「頼れるのは私だけでしょ!」
とエドガールの心を引き留めようとします。

しかし、エドガールの気持ちは既に冷め切っています

エドガールがティグラーナと別れるために「入隊を希望」する

そこに兵士の一団が通りかかります。
エドガールは「神様が兵士たちを連れてきてくれたんだ!」と喜び、兵士たちを屋敷へ招き入れます。

 エドガールはティグラーナから離れるために、入隊しようとします。

そこでエドガールは、「隊長になっていたフランク(エドガールが1幕で刺した相手)」と偶然再会します。

エドガールはフランクに謝罪し、入隊を申し出ます。
フランクは「恥ずべき恋から、あのとき君の剣が救ってくれたんだよ。」と謝罪を受け入れ、二人はすっかり仲直りします。

ティグラーナが復讐を誓う

入隊を認められたエドガールは、ティグラーナの制止を振り切ります。
そして「祖国に命をかけるものは死ぬことはない!」と意気揚々と兵士たちと去っていきます。

それを見たティグラーナは「あなたは死ぬか、私のものか、どっちかよ!」と復讐を誓います。

第3幕:『エドガール』あらすじ

エドガールの葬儀がひらかれている

コルトレイク近くの要塞

戦死したエドガールの葬儀がおこなわれています。

 実際は、エドガールは戦死していません。

レクイエムが歌われる中、フィデーリアが
「さようなら私の甘い愛!」
「私もそのうち行くから待っててね。」
と嘆き悲しんでいます。(Addio, addio mio dolce amor!)

「Addio, addio mio dolce amor!」

さらにフランクが弔辞を述べます。

そんな中、一人の修道僧が
「確かに勇敢だったけど…」
「家に火をつけたし、フランクを刺してティグラーナと逃げたよね。」
「あいつは邪悪じゃないか?」
「実は殺人もしているんだ。」
と兵士たちに問いかけます。

 修道僧の正体は、エドガール自身です。

フィデーリアだけがエドガールの悪事をかばう

兵士たちは
「エドガールは恥さらしだ!」
「遺体をカラスにあげるぞ!」
と棺桶から遺体を引き出そうとします。

それをフィデーリアが
「若さゆえの過ちを、彼は血と勇敢さで償ったのよ!」
と必死でかばいます。

兵士たちはその優しさに感銘を受け、立ち去っていきます。

ティグラーナが「エドガールの罪」を認め、人々が再び怒る

そこにティグラーナが、見張りをはねのけて登場し
「ああ、悲しいわ!」
「どれほどエドガールを愛したことか。」
と大袈裟に悲しみます。

それを見た修道僧(エドガール)は、
「彼女は自分の悲しみをひけらかすために来ているだけだ。」
「本性を暴いて見せよう。」
とフランクに語ります。

修道僧はティグラーナに真珠のネックレスを見せて、
「エドガールの悪事を告白してくれれば、宝石をあげるよ。」
と誘惑します。

はじめは断っていたティグラーナでしたが、やがて宝石に目がくらみ
「エドガールの悪事は全部本当よ。」
と答え、宝石を手にします。

棺桶は空っぽで、修道僧が正体(エドガール)を現す

兵士たちは「エドガールへの怒り」を再燃させ、棺桶から遺体を取り出そうとします。
しかし、棺桶には甲冑しか入っていません。

すると修道僧が衣装を脱ぎ
「エドガールはここに生きているぞ!」
「疫病神(ティグラーナ)は去るのだ!」
「(兵士たちに)お前たちも呪われろ!借りは返したぞ!」
と叫びます。

ティグラーナがフィデーリアを刺す

そしてエドガールはフィデーリアを抱きしめようとします。

その時ティグラーナが瞬時に現れ、フィデーリアを刺し殺してしまいます。
ティグラーナはすぐに捕らえられ、エドガールがフィデーリアの亡骸の上で泣く中でオペラが終わります。

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