春の祭典Le sacre du printemps
作曲1911年-1913年
初演1913年5月29日 シャンゼリゼ劇場(パリ)
演奏時間35分

『春の祭典(Le sacre du printemps)』は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882年-1971年)によって作曲された初期を代表する三部作の一つです。
今では「20世紀の近代音楽の傑作」と評価される作品ですが、初演では大きな騒動が巻き起こった作品としても有名です。
『春の祭典』で聴かれる変拍子や独特なリズム、不協和音は、当時の聴衆にとっては余りに衝撃的だったのかもしれません。

 三部作(『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』)はすべてディアギレフ(ロシアの芸術プロデューサー)の委嘱で作曲されました。

ここではストラヴィンスキー『春の祭典』の解説と名盤を紹介したいと思います。

ストラヴィンスキーの『霊感』が生み出した作品

『春の祭典』の作曲が開始されたのは、ストラヴィンスキーがペテルブルクで『火の鳥』作曲の終盤に差し掛かった頃でした。(1910年)

ストラヴィンスキーは「長老たちが"若い娘が死ぬまで踊る様子"を見守っている幻影」を見たそうです。
彼はここから新たなバレエ音楽の作曲を思いつき、友人のニコライ・レーリヒに協力を求めました。

 レーリヒは画家である一方で、文学や哲学、考古学にも精通していました。
また世界各地を流浪し、神智学の導師としても活動しました。

『春の祭典』の作曲は『ペトルーシュカ』の作曲のために一時中断されますが、『ペトルーシュカ』初演後に再び作曲は続けられます。

大混乱を巻き起こした『初演』

振付師(ヴァーツラフ・ニジンスキー)が音楽に精通していなかったり、主役のダンサーが妊娠するなどのトラブルの中、『春の祭典』はようやく初演を迎えます。
初演の客席には、サン=サーンスやドビュッシー、ラヴェルの姿もありました。

しかし初演で待っていたものは、さらに大きな騒動でした。
変拍子や独特なリズム、不協和音が流れる音楽に、客席は笑いとヤジで溢れかえります。
音楽は既に聞こえなくなるほどの騒ぎだったそうです。

最終的には「賛成派vs反対派」で喧嘩が始まり、ケガ人まで出ました。

 サン=サーンスは曲の序盤で退席したと言われています。
 レーリヒによる"古代の異教時代のルーシ"をモチーフにした衝撃的な舞台デザインも、大きな反響を呼びました。

初演後に評価を一変させ「傑作」となる

歴史的な大スキャンダルを起こした『春の祭典』ですが、初演後は評価が一変します。
1年後に同じ場所で再演された際には、大成功を収め、海外でも評価が高まり演奏機会が増えていきます。

そして現在では「20世紀の近代音楽の傑作」と評価されるまでに至りました。

パリ・オペラ座の定番となっている初演の振付

ちなみに初演の4ヶ月後に、ニジンスキー(振付師)が解雇されてしまったため、しばらくニジンスキーの振付は忘れられた存在となってしまいました。
1920年に新たにレオニード・マシーンが同作品を振付すると、その後も多くの振付が生まれます。

ちなみにニジンスキーによる初演の振付は、過去の資料から復元され、現在ではパリ・オペラ座で使われています。

曲の構成

 「ロシアの異教時代の太古の儀式」が描かれています。
一人の乙女が生け贄として、太陽神イアリロに長老たちによって捧げられます。
乙女は「生け贄の踊り」を舞い、最後に息絶えます。

第1部:大地の礼賛

全8曲で構成されています
第1曲:序奏
第2曲:春のきざし(乙女達の踊り)
第3曲:誘拐
第4曲:春の輪舞
第5曲:敵の部族の遊戯
第6曲:長老の行進
第7曲:長老の大地への口づけ
第8曲:大地の踊り

第2部:生贄の儀式

全6曲で構成されています
第1曲:序奏
第2曲:乙女の神秘的な踊り
第3曲:選ばれし生贄への賛美
第4曲:祖先の召還
第5曲:祖先の儀式
第6曲:生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)

ストラヴィンスキー『春の祭典』の名盤

ラトル&ベルリン・フィル
打楽器出身のラトルは、22歳のときに自らも打楽器奏者として所属した「イングリッッシュ・ナショナル・ユース管」で『春の祭典』を指揮し録音しました。
その後、バーミンガム市響(1987年)やベルリン・フィル(2003,2009)でも『春の祭典』の録音(映像)を残しています。
このCDは、そんな『春の祭典』に精通するラトルが2012年にベルリン・フィルと録音した『春の祭典』です。

衝撃的な音楽の中で、ラトルとベルリン・フィルが奏でる「美しい音楽」が共存しています。

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