フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn/1809年~1847年)のヴァイオリン協奏曲は、彼が35歳のときの1844年に作曲されました。
この曲はメンデルスゾーン家と同じアパートで生まれ家族ぐるみの付き合いをしていたドイツ系ユダヤ人のヴァイオリニスであるフェルディナント・ダヴィット(Ferdinand David)のために書かれました。
ダヴィッドは当時超絶技巧で名をはせていたヴァイオリニストで、初演をしたときのソリストであり、そのオーケストラのコンサートマスターでした。
着想から完成までに6年を費やし、ダヴィッドからテクニック的なアドバイスを聴きながら時間をかけて作られた作品です。
メンデルスゾーンの作品の中でも最も人気のある曲の一つでもあり、冒頭の音楽はクラシックファンでなくても聴いててうっとりする美しい音楽ではないでしょうか。
ドイツ・ロマン派音楽を代表する作品で、ベートーヴェンとブラームスのヴァイオリン協奏曲と共に、「三大ヴァイオリン協奏曲」とも呼ばれています。
またチャイコフスキーも加えて「四大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれることもあります。
日本では「メンコン」と省略されて親しまれていますね。
少し昔になりますが、フィギュアスケートの安藤美姫選手が2007年の世界選手権で優勝した時のフリーの曲がこの曲でした。
ここでは、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」の解説と名盤を紹介したいと思います。
演奏時間30分の演奏者の技量が問われる曲
メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」の演奏時間は30分ほどで3楽章から成っています。
メンデルスゾーンはこの3楽章を途中で演奏を中断せずに最後まで演奏し続けるよう指示しました。
ちなみに演奏時間としては「三大ヴァイオリン協奏曲」の中では一番短い作品となっています。
またカデンツァ部分に自由さは与えられず、すべて楽譜に書かれているのも特徴的です。
カデンツァは演奏者が即興で演奏するものであり、カデンツァを指定されることは当時としては珍しいことでした。
また超絶技巧を得意としていたダヴィットのために書かれた作品と言うこともあり、技術的にもとても難しい作品としても知られています。
ヴァイオリニストの腕の見せ所でもあり、ヴァイオリニストにとっては避けては通れない作品です。
またヴァイオリンを勉強する人にとっては、この作品を練習することを許されることは「先生からある程度腕を認められた」証でもあるそうです。
恵まれた環境で暮らしたメンデルスゾーン
音楽家の一生を辿っていくと、不幸な出来事や信じられないエピソードが登場することがしばしばあります。
しかし、メンデルスゾーンはそのようなものとは無縁で恵まれた生活を送りました。
彼の様々な作品に見られる甘くて知的な音楽性はこの生活環境からきているのかもしれません。
ドイツの裕福な銀行家で生まれたメンデルスゾーンは、金銭的に苦労しなかったことはもちろんですが、さらには芸術に溢れた環境の中で過ごしました。
両親のサロンには画家、音楽家、科学者などが訪れ、そこにはあのゲーテもいました。
神童メンデルスゾーン
そんな中でメンデルスゾーンは神童として称えられ、音楽のキャリアを歩んでいきます。
一度見たり聴いたりした曲はすぐに覚えてしまったと言われています。
「夏の夜の夢」序曲の楽譜をなくしてしまったときに、それを記憶ですべて書き起こしたというエピソードも残っています。
ユダヤ系のため苦労も多かった
ただメンデルスゾーンも何の苦労もなかったわけではありませんでした。
クリスチャンではありましたが、ユダヤ人の家系であったため迫害も受けたそうです。
また音楽的評価もユダヤ系であるがゆえに近年まで過小評価されてしまうこともありました。
そのような不条理な仕打ちをうけたメンデルスゾーンですが、彼自身はユダヤ系であることを誇りに思っていたとも言われています。
メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」の名盤
こちらは日本が世界に誇る五嶋みどりさんのヴァイオリン協奏曲です。
演奏家デビュー20周年を迎えた2002年に録音したもので、マリス・ヤンソンス指揮によるベルリン・フィルハーモニーの演奏という豪華な演奏です。
メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」の録音は名作が故に幅広い時代で数多くの名盤がありますので、様々な録音を聴き比べてみるのもとても面白いかと思います。
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