メリー・ウィドウDie lustige Witwe
初演1905年12月30日 アン・デア・ウィーン劇場
原作アンリ・メイヤック『大使館付随員(L'Attache d'ambassade)』
台本ヴィクトル・レオン、レオ・シュタイン
演奏時間約2時間

『メリー・ウィドウ(Die lustige Witwe)』は、フランツ・レハール(Franz Lehár/1870年-1948年)によって作曲されたオペレッタです。
メリー・ウィドウは英語(The Merry Widow)から来ていますが、ドイツ語が原語のオペレッタです。

初演はレハール自身の指揮でおこなわれ、このオペレッタの成功で彼は一躍スターダムにのし上がります。

 『独:ludtig,英:merry』=『陽気な』
『独:Witwe,英:widow』=『未亡人』
という意味です。

また、このオペレッタには興味深い話もあります。
第二次世界大戦の頃、レハールの妻はユダヤ人だったのにもかかわらず、ヒトラー率いるナチスに彼は庇護を受けました。
その理由は「オーストリア生まれのヒトラーが、メリー・ウィドウが好きだったから」と言われています。

ここでは、レハールのオペレッタ『メリー・ウィドウ』のあらすじを紹介したいと思います。

主な登場人物

登場人物詳細
ハンナ・グラヴァリ(ソプラノ)裕福な未亡人
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵(テノール)大使館の一等書記官、ハンナの元恋人
ミルコ・ツェータ男爵(バリトン)ポンテヴェドロ国のパリ駐在公使
ヴァランシエンヌ(ソプラノ)ツェータ男爵の妻
カミーユ・ド・ロジヨン(テノール)フランス人の大使館随行員、ヴァランシエンヌの愛人
カスカーダ子爵(テノール)公使館付随員

『メリー・ウィドウ』の簡単なあらすじ

時間のない方のための簡単な「30秒あらすじ」
ハンナは裕福な未亡人で、莫大な財産を持っています。
彼女の財産は「ポンデヴェドロ国の大部分」を占めており、「彼女を国内の男性と再婚させ、財産を国内に留める」ことは国家の使命です。

ツェータ男爵はダニロ(ハンナの元恋人)に「ハンナと結婚して、財産を守ってくれ!」と頼みます。
しかしダニロは「ハンナを愛している」のにもかかわらず、なかなか素直になれません。

 ハンナもダニロを愛しています。

お互い何度か揉めますが、結局ダニロとハンナは無事結ばれ、ハッピーエンドでオペレッタが終わります。

第1幕:『メリー・ウィドウ』のあらすじ

「ハンナの莫大な財産」を国外に流出させてはならない

パリ:ポンデヴェドロ公使館
ポンデヴェドロ国王の誕生日を祝う祝賀会が開かれています。

カスカーダ子爵(フランス人の公使館付随員)が祝辞を述べますが、ツェータ男爵(ポンデヴェドロ王国ののパリ駐在公使)の心は落ち着きません。
それは「ハンナの結婚問題」を抱えているからでした。

 ハンナは裕福な未亡人です。
もし彼女がパリの男と結婚すると、彼女の莫大な財産はポンデヴェドロから逃げてしまいます。
「ハンナの遺産を祖国に残す」ことがツェータ男爵の使命です。

ヴァランシエンヌ(ツェータ男爵の妻)はカミーユとの不倫関係に困っている

一方、カミーユヴァランシエンヌ(ツェータ男爵の妻)に熱く愛を語っています。
ヴァランシエンヌは「私はまじめな人妻です。」と、少し心を惹かれながらも断ります。
(Ich bin eine anständ'ge)

 カミーユ・・・フランス人の大使館随行員、ヴァランシエンヌの愛人

"Ich bin eine anständ'ge"

ツェータは、ハンナとダニロを結婚させたい

いよいよハンナが到着します。
ハンナは「皆が金目当てにお世辞を言ってくる」ことに嫌気を覚えています。

一方、ツェータは「ハンナとダニロを結婚させたい」と考えており、書記にダニロを呼びにいかせます。

 かつてハンナとダニロは恋人同士でしたが、身分の違いから別れてしまいました。
ダニロは「金目当て」と思われたくないため、ハンナと距離を置いています。

そしてダニロが連れてこられます。
しかし、彼は行きつけの店「マキシム」で酒を飲んだ帰りで、ベロベロの状態です。
彼は「マキシムで女の子とイチャイチャすると、大事な祖国のことも忘れるよ!」と陽気に歌います。

"O Vaterland du machst bei Tag / Da geh' ich zu Maxim"

ハンナとダニロは「両想い」だが、お互いに素直になれない

ついにハンナとダニロが再会します。
二人は内心は惹かれ合っていますが、なかなか素直になれません。

そんな中、ツェータはダニロに「祖国のためにハンナと結婚しろ!」と要求します。

続いて皆が集まってくると、ハンナはダニロをダンスの相手に指名します。
しかし、素直になれないダニロは「1万フランで踊りの権利を譲りましょう!」と周りに語ります。
皆は諦め、二人が喧嘩をしながら踊り、幕が下ります。

第2幕:『メリー・ウィドウ』のあらすじ

ハンナは心を開き始めるが、ダニロは意固地になったまま

翌日の夕方:ハンナ邸の庭

ハンナが「故郷に帰ったつもりで、ヴィリアの歌を歌いましょう。」と来客をもてなしています。(ヴィリアの歌)
そこにダニロが遅れて現れます。

ハンナは「誰と結婚すればいいか教えて。」とダニロに尋ね、歩み寄ろうとします。
しかしダニロは「誰とでも結婚すればいいよ。」と、未だに自分の心に素直になれません。

"ヴィリアの歌"

成り行きで「ハンナとカミーユ」が婚約する

一方、カミーユは懲りずにヴァランシエンヌを口説いています。
ヴァランシエンヌが少しずつカミーユになびいてくるので、彼は彼女をあずま屋に連れ込みます。

そこにツェータが現れ、あずま屋の鍵穴から中を覗きます。
ツェータが「私の妻だ!開けろ!」と騒ぎ立てます。

しかし中から出てきたのは「カミーユとハンナ」でした。

 ニェーグシュ(ツェータの部下、書記官)のとっさの判断で、ヴァランシエンヌを逃がして、ハンナを中に入れました。

ハンナは成り行きで「カミーユが婚約者」だと紹介します。

内心はハンナを愛しているダニロは、ショックを受けます。
そして、憂さ晴らしに「大好きなマキシム」へ飲みに出かけます。

第3幕:『メリー・ウィドウ』のあらすじ

「ハンナの財産の国外流出」は国家の危機

さらに翌日:ハンナ邸

マキシムの踊り子たちが揃い、室内はマキシムそっくりに飾られています。
そこに現れたダニロは大喜びし、皆と共に踊ります。

続いて、「ハンナの財産がなくなれば、それは国家の危機だ。」という電報が届きます。

 ハンナが、例えばカミーユ(フランス人)と結婚すると、財産は国外(フランス)へと流れてしまいます。

ダニロとハンナの距離が縮まる

ダニロは「祖国のためだ」ということを理由に、ハンナに「カミーユと結婚してはいけない!」と告げます。
そこで、昨夜のあずま屋の事実が明らかになります。

 ハンナは身代わりであり、あずま屋には「カミーユとヴァランシエンヌ」がいた。

事実を知ったダニロは大喜びします。
そして、二人の距離は一気に縮まります。(Lippen schweigen)

"Lippen schweigen"

ダニロがハンナに「愛の告白」をする

一方、ツェータは「あずま屋に落ちていたヴァランシエンヌの扇子」から、「カミーユと会っていたのはヴァランシエンヌ」だと気づきます。
ツェータは「離婚して、ハンナに結婚を申し込む!」と宣言します。
するとハンナが「私は再婚したら元夫の財産はすべて失いますよ。」と元夫の遺言を語ります。

その時、ダニロが「君は文無しか!?僕は君を愛している!」と語り、遂にハンナに愛の告白をします。

すべてがハッピーエンドで終わる

ハンナは大喜びし「私の失った財産は、すべて新しい夫のものになるわ!」と遺言の続きを語ります。
ダニロとハンナは結ばれ、ツェータも妻の疑いが晴れて元のさやに戻ります。

そして、すべてがハッピーエンドでオペレッタは終わります。

 ヴァランシエンヌの扇子には「私はまじめな人妻です。」と書いており、それで彼女の疑いが晴れました。

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