項目データ
作曲シルヴェスター・リーヴァイ
作詞ミヒャエル・クンツェ
脚本ミヒャエル・クンツェ
原作モーツァルトの生涯
初演1999年アン・デア・ウィーン劇場

モーツァルト!(Mozart!)』は、その名の通り誰もが知るオーストリアの作曲家モーツァルトを描いたミュージカル作品です。
作品は、傑作ミュージカル『エリザベート』でお馴染みのコンビ(作曲シルヴェスター・リーヴァイ 作詞脚本ミヒャエル・クンツェ)により作られました。

「ミュージカル=英語」のイメージが強いですが、『モーツァルト!』はウィーンで初演されたドイツ語がオリジナルのミュージカルです。
初演されたアン・デア・ウィーン劇場は、モーツァルトのオペラ『魔笛』の台本を書いたエマヌエル・シカネーダーが建てたものです。

 ※ただし当時の建物の部分は、現在ではほとんど残っておりません。
 『エリザベート』もアン・デア・ウィーン劇場で初演されました。

現在ではアン・デア・ウィーン劇場は、主にミュージカル劇場として素晴らしい演目を多く上演しています。

ここでは『モーツァルト!』のあらすじを、曲と対応して解説していきます。

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『モーツァルト!』の簡単なあらすじ

時間がない方のための簡単なあらすじ

【第1幕】

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少年モーツァルトは"奇跡の神童"ともてはやされていました。

その9年後、モーツァルトは故郷ザルツブルクで大司教に雇われ、窮屈な音楽生活を送っています。
そこに、かつて皆に称賛されたモーツァルトの姿はありません。

モーツァルトは故郷を離れ、母と共にマンハイム・パリへと旅することを決意します。
しかし大司教が裏で手を回し、モーツァルトは仕事が見つかりません。
資金は尽き、母も亡くします。
モーツァルトは失意の中でザルツブルクに戻ります。

【第2幕】

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再起をかけて、モーツァルトはウィーンへ旅立ちます。
そこでモーツァルトは音楽家としてヒット作品を生みだし、大成功します。

そしてコンスタンツェと結婚もします。
しかし次第に夫婦仲は悪くなり、父は喧嘩別れのままで死別してしまいます。
モーツァルトは精神的にも肉体的にも病んでいきます。

最後にモーツァルトは謎の男からの依頼により「レクイエム」を書きますが、病に侵された身体にその力は残っていません。
孤独の中、「僕こそ音楽だ!」と訴え、モーツァルトの短い生涯は終わります。

『モーツァルト!』曲の視聴

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第1幕:『モーツァルト!』の詳しいあらすじ

モーツァルトが眠る墓場から、彼の少年時代にタイムスリップする

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1.Prolog

舞台はモーツァルト(ヴォルフガング)の墓場から始まり、彼の少年期にタイムスリップする。

神童モーツァルトがピアノを披露する

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2.Was für ein Kind!

1768年 ウィーン
レオポルトが見守る中、少年(12歳頃)モーツァルト(ヴォルフガング)は貴族たちの前でピアノを弾いています。
続いて目隠しをしてピアノを弾くと、さらにはヴァイオリンも披露します。
皆は"奇跡の神童だ!"と、モーツァルトの才能を称えます。

その一方でヴァルトシュテッテン男爵夫人は父レオポルトに、
「彼はまだ子供で、とても壊れやすい。用心してくださいね。」
と助言します。

Menschen vergessen!

モーツァルトの演奏が終わり舞台が静まります。

するとヴァルトシュテッテン男爵夫人モーツァルトに「人は思い出を忘れる。最後には目に見えないものが残る。」と時代の流れを歌います。

彼女が歌い終わると、時代は9年後に一気に移ります。

故郷ザルツブルクで起こる青年期モーツァルトの悩み

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3.Die Wunder sind vorüber

9年後 ザルツブルク
モーツァルトは既に青年へと成長し、故郷ザルツブルクで音楽活動をしています。

モーツァルトは故郷の暮らしに飽きており、かつての海外への演奏旅行に憧れを持っています。
そしてモーツァルトは禁止されているサイコロゲームの賭けに熱中しています。
そこに神童と呼ばれたモーツァルトの姿はなく、父レオポルトは息子を心配します。

 舞台では、青年期のモーツァルトのそばには、神童であった少年期のモーツァルト(アマデ)が常にそばにいます。
大人のモーツァルトは彼の人間らしい部分が描かれ、少年モーツァルトは彼の音楽的才能の象徴として描かれています。

ここではモーツァルトはコロレド大司教(ザルツブルク大司教)に雇われて生計を立てています。
モーツァルトは奴隷のように束縛された音楽生活に不満をつのらせています。

4.Ich bin, ich bin Musik

一人になったモーツァルトは、"奇跡は再び起こる。僕こそ音楽だ(Ich bin musik.)"と歌い上げます。

怒ったモーツァルトは、雇い主である大司教と決別する

5.Wo bleibt Mozart?

大司教の独裁的な態度に、ついにモーツァルトの不満が爆発します。

モーツァルトは感情をあらわにし、大司教から反感を買いクビを宣告されます。
父レオポルトは謝罪するようすすめますが、怒ったモーツァルトは大司教との決別を決意します。

6.Niemand liebt Dich so wie ich

モーツァルトは
「もっと大きな都市で、僕は偉大な交響曲や協奏曲、そしてオペラを書き上げるんだ!」
と父に訴えます。

父は息子を心配しますが、ザルツブルクを離れることができません。
代わりに母がモーツァルトに付いていくこととなります。

モーツァルトは旅に出るが、仕事が回ってこない

7.Ah, das Fräulein Mozart

ナンネール(モーツァルトの姉)が「モーツァルトはきっとうまくやっているわ。」と故郷ザルツブルクから希望を膨らませて歌います。
そこに「モーツァルトには、大司教の手回しで仕事が来ない」という悲しい知らせが入ります。

8.Eine ehrliche Familie

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マンハイム

舞台はザルツブルクから、マンハイムへと変わります。

ウェーバー一家が貧乏生活を抜け出そうと企んでいます。
そこに「マンハイムにモーツァルトがやって来た」と知らせが入ってきます。

ウェーバー夫妻はモーツァルトから金を巻き上げることを計画します。
そして夫妻の娘で歌手のアロイズィアを利用し、モーツァルトに近づいていきます。

9.Schließ Dein Herz in Eisen ein

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舞台は再びザルツブルク

父レオポルトは、疑うことを知らないモーツァルトを旅に出したことを後悔し、心配しています。
そして父はウェーバー一家に金を吸い取られていることに気づき、「マンハイムからパリへ行け」と手紙を出します。

また母が病に侵されていることがわかります。
しかし金がないため、十分な治療をさせてあげることができません。

旅先で母が病で亡くなる

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11.Niemand Applaudiert

音楽活動が不調のモーツァルトに、さらなる悲劇が訪れます。
病の母が、亡くなってしまうのです。

12.Was für ein grausames Leben

モーツァルトは絶望し「なんて残酷な人生なんだ!世界はなんて奇妙なんだ!」と嘆きます。

失意の中、モーツァルトは一時的に故郷に戻る

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14.Ein bissel fürs Hirn und ein bissel fürs Herz

ザルツブルク
モーツァルトは失望の中、ザルツブルクに戻ります。(13.In Salzburg ist Winter)

故郷でモーツァルトは、劇作家シカネーダーと出会います。
シカネーダーは「私は劇場を満席にしたいんだ。」と語ります。
二人は意気投合します。

 エマーヌエル・シカネーダー(1751年-1812年)
オーストリアの俳優・劇場支配人・台本作家。
モーツァルトのオペラ『魔笛』の台本を書き、自身もパパゲーノ役を演じた。
アン・デア・ウィーン劇場を設立した人物。

16.Gold von Sternen

ヴァルトシュテッテン男爵夫人がモーツァルトを訪れ、
「明日私はウィーンに戻るんだけど、一緒に来ない?」
「ウィーンの宮廷で演奏したり、オペラを作ったりしたくはないの?」
と、音楽の都ウィーンへ行くことをすすめます。

そして夫人はお伽噺に例えて
「夜、星空から金が降り注ぐ。」
「あなたならそれを見つけられるわ。」
と歌います。(Gold von Sternen)

父が心配し引き留めるのを振り払い(17.Niemand liebt Dich so wie ich)、モーツァルトはウィーンへと旅たちます。

18.Wien wird mich um ihn beneiden

モーツァルトがザルツブルクを離れてからも、大司教は彼の監視を続けています。

大司教は
「モーツァルトは私の手の中にある。」
「ウィーンは私を羨む。」
と歌います。

ウィーンで暮らすモーツァルトが、ウェーバー家(コンスタンツェ)と再会する

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20.Ich bin extraordinär

舞台はウィーンに変わる
モーツァルトは夜のプラーター公園を訪れています。
モーツァルトは「僕を監視するな!僕は普通の人とは違うんだ。」と陽気に叫びます。

ここでモーツァルトは、マンハイムで出会ったウェーバー一家に再会します。
娘の歌手アロイズィアは既に結婚し、夫は他界しています。

モーツァルトはウェーバー家に招待され、今度は3女のコンスタンツェと恋に落ちていくこととなります。

 コンスタンツェ(1762年-1842年)
モーツァルトの妻。
1777年、モーツァルトとコンスタンツェはマンハイムで初めて出会います。
しかし、その時はモーツァルトは姉アロイズィアに夢中でした。

その後1781年、モーツァルトがウィーンに引っ越すと、彼とウェーバー家は再会します
アロイズィアは既に結婚しており、 モーツァルトは一家の部屋を借りて下宿することとなります。

そしてモーツァルトはコンスタンツェと結婚を条件に、ウェーバー夫人から交際を許されます。

コンスタンツェはモーツァルトに愛を語り、彼もそれに答えます。(21.Weil du so bist, wie du bist)
そして二人は美しい愛の二重唱を歌います。(22.Wir zwei zusammen)

モーツァルトと大司教の完全決別

23.Ich bleibe in Wien!

自由を求めるモーツァルトに、大司教からザルツブルクに帰るよう命令が出ます。
「ウィーンで飢え死にさせるぞ」と脅されますが、モーツァルトはウィーンに残ることを決めます。

彼らは完全に決別します。

モーツァルトは「お前は終わった。」と捨て台詞を吐かれますが、
「僕は今始まった。僕は自由だ!」と高らかに叫びます。

24.Wie wird man seinen Schatten los?

一方、モーツァルトは
「どうすれば自分の運命を拒めるのか」
「もし自分の陰から逃げられるのなら…」
「どうすれば自由になれるのか」
と不安な心情も吐露します。

第2幕:『モーツァルト!』の詳しいあらすじ

ウィーンで、モーツァルトが音楽家としての評価を手にし始める

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26.Hier in Wien!

1781年
ウィーンでモーツァルトが評判となりはじめ、皆がモーツァルトについて議論を交わしています。

皆は
「モーツァルトは天才だ、有名になるよ!」
と称える一方で
「もてはやされても、いずれダメになる」
「ここはウィーンだから!」
と高らかに歌います。

27.Du hast ihn an der Angel

ウェーバー夫人は、娘コンスタンツェを餌に再びモーツァルトを利用しようと企んでいます。
しかしコンスタンツェは「もうあなたには従わない。」と、それを拒みます。

モーツァルトとコンスタンツェが結婚する

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28.Dich kennen heisst dich lieben

モーツァルトがコンスタンツェへの愛を歌っているところに、彼女が現れます。

モーツァルトが
「僕が君を守る」
「昼も夜も 君のためにそばにいる」
と語ると、コンスタンツェもそれに答えます。

29.Ha! Ein Liebesnest!

モーツァルトとコンスタンツェのもとに、ウェーバー夫人らが現れます。

ウェーバー夫人は「娘が辱めにあった。」と非難します。
そして「警察を呼ばれたくなかったら、二人は結婚しろ。」と契約書を出し脅します。

モーツァルトはそれにサインします。
無理やり結婚させられた二人ですが、二人はお互いの愛が真実であることを確かめ合います。(30.Dich kennen heisst dich lieben (Reprise) )

ウィーンで派手な生活をするモーツァルトと、ザルツブルクで貧しい暮らしをする彼の家族

32.Der Prinz ist fort

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ザルツブルク
ナンネール(モーツァルトの姉)は、恋人と結婚を望んでいますが、父がそれを許しません。
それは恋人相手が貧しく、自分たちも貧しいためでした。

ナンネールと父は、不幸な人生を嘆きます。

 モーツァルト一家は、モーツァルトにお金を費やしたために資金が尽きてしまいました。

33.Freunde

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ウィーン
モーツァルトは姉の結婚を心配しています。
しかし、悪い友人たちに捕まり、稼いだお金を夜遊びでドンドン使ってしまいます。

34.Irgendwo wird immer getanzt

コンスタンツェは、モーツァルトの帰りが毎晩遅いことを嘆いています。
そして、これまでの彼女の人生で溜まってきた不満が溢れ始めます。

36.Wie kann es möglich sein?

ザルツブルク
大司教はモーツァルトの音楽的才能にあらためて驚愕し、父レオポルトを呼びます。
そして父に"モーツァルトを許してあげるから、彼をザルツブルクに連れ戻せ"と命じます。

モーツァルトと父の想いがすれ違う

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37.Stolz (Leopold in Wien)

ウィーン
父レオポルトはウィーンに到着します。
息子は「フィガロの結婚」などで大ヒットを飛ばし、音楽的名声を手にしていることを聞かされます。

しかし父はモーツァルトが無駄遣いしていることに不満を漏らし、息子の奢りを危惧します。
二人は再会しますが、意見はすれ違い、親子の距離は少しずつ離れていきます。

父はモーツァルトを残し、ザルツブルクへ帰っていきます。

父レオポルトの死

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38.Warum kannst du mich nicht lieben?

一人になったモーツァルトは
「なんで、お父さんは今の僕を愛してくれないの?」
と愛する父とのすれ違いを嘆きます。

名声を手にする一方で、モーツァルトの生活は荒れていきます。
モーツァルトの資金も底をつきてきます。
さらにウェーバー夫人が金をせびりに来て、モーツァルトの心は病んでいきます。(41.Bettelbriefe)

追い打ちをかけるように、モーツァルトに悲しい知らせが入ります。
それは、父レオポルトの死です。(42.Papa ist tot)
モーツァルトは悲しみ、父に懺悔と祈りを捧げます。(43.Schliess dein Herz in Eisen ein (Reprise) )

44.Der Requiem-Auftrag

父の死後、モーツァルトのもとに謎の男が現れます。
彼はモーツァルトにレクイエムを依頼します。

一方、劇作家シカネーダーがオペラ『魔笛』の台本を持って、モーツァルトを訪れてきます。
モーツァルトが作曲をはじめる中、妻コンスタンツェとの距離は遠くなっていきます。(45.Irgendwo wird immer getanzt (Reprise) )

オペラ『魔笛』が完成すると、オペラは大成功をおさめます。(46.Zauberflöte)

47.Der einfache Weg

オペラが成功すると大司教が現れ、再びモーツァルトを自分の手の中に置こうとします。
モーツァルトは、それを拒絶します。

モーツァルトの死

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48.Mozart, Mozart!

モーツァルトは病で死期が迫ってきています。

人々が彼を囲み、
「神がモーツァルトをこの地に与えてくれた。」
と歌います。

49.Mozarts Tod

モーツァルトは病に倒れ、立ち上がることができません。
少年モーツァルト(アマデ)がレクイエムを作曲しており、モーツァルトはこれが自分のためのレクイエムだと悟ります。

モーツァルトは最後の命を振り絞り
「僕こそ音楽だ!」
と歌い、その生涯を終えます。

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